太朗さん

「“節約=我慢”からストレスをためる人も多いですが、僕の節約は“ストレスフリー”です」とは、会社員ユーチューバーの太朗さん。幼少期に銀行マンだった祖父からお金についての教えを受け、独身時代からエクセルで家計簿をつけて貯金をしていた。会社では経理一筋10年、お金の管理は得意分野だ。

経理マンの節約術

「今の時代、収入を上げるよりも、節約をするほうが簡単なんです。経理畑の性かもしれませんが、貯金の数字が増えていくのを見るのは快感です」(太朗さん、以下同)

 専業主婦の妻と小学生の娘、家族3人で1か月10万円の生活費で暮らしている。

「節約はしますが、無理はしません。ほとんど家で食事をするため、食器などは多少高くても本当に気に入ったものを選び、お金を使うのと削るのにメリハリをつけています。最近では北欧の器がお気に入りですね」

「少ないお金で豊かに暮らす」が太朗さんのモットー。住宅ローンを完済し、現在の貯金は3700万円以上に。毎年、450万円の貯蓄を継続している。

 月10万円生活のきっかけになったのは、結婚後購入した5500万円のマイホームだった。預金で頭金2200万円を用意したものの、残りの3300万円は、35年ローンを利用することに。

「住宅ローンには利息や手数料がかかりますが、僕の場合、利息だけで1000万円以上となる計算。これは節約して繰り上げ返済しないともったいない!と思いました」

 住宅ローン減税の期間(10年間)の完済を目標に設定。そのころの月収は約30万円。住居費以外の生活費予算は10万円以内と決めた。

 太朗さんは生活費を大きく「固定費」と「贅沢費」の2つに分けている。

「贅沢費はお小遣いや趣味など、暮らしを豊かにするための支出。固定費は切りつめていても、このお金があることで心に余裕ができますよ」

 27歳から住宅ローンを差し引いた月の生活費を8万4500円にしてやりくりした。

「食材などは僕が週末にまとめて購入し、お金を使う機会を減らすことを心がけました。支払いは基本、楽天のクレジットカードにして楽天ポイントを貯めています。節約で貯めた分とボーナスを繰り上げ返済に回し、8年間で住宅ローンを完済しました」

月の生活費10万円

「今は家計簿アプリを活用しています。小さな節約が功を奏して支出が減ったことが数字でわかるので、達成感が味わえてオススメです。月末に見直すことで自分の“買い物のクセ”もわかってきます」

 現在、会社員としての毎月の平均手取り額は39万円になったが、月の生活費は以前と同じだ。

「完済で住居費がなくなり、固定費は4万9800円、贅沢費は以前より増えて4万円で合計8万9800円に。前より手取りから貯蓄に回せるお金が増えました」

 食費は以前と変えていない。ふるさと納税の返礼品には普段は買わない厳選食材を選び、食費を少し抑えて“プチ贅沢”を楽しんでいる。

「支出額の大きい固定費は、一度見直すと大幅に節約できる部分。どうしたら安くなるか、定期的に調べています」

 オール電化の電気代は太陽光発電の利用で実質0円、スマートフォンの通信料は大手キャリアから格安スマホに乗り換え、なおかつキャンペーン期間中で0円だ。お金がかかるのは、インターネット代5300円と、水道代3000円だけとなっている。

「月1回、『マネー会議』をして貯蓄額や支出について夫婦で共有しています。家族がいる場合、節約の意識を共有することが大切。妻の美容代は最近、『行ってみたい美容院がある』という本人の希望で金額を上げました。身の丈に合った生活をしつつも、お互いの好きなことは制限しないようにしています」

 月の生活費とは別に、「年間の生活費」を設定して家計に余裕をもたせているのも特徴。税金、衣服、教育費、家電などで、合計65.5万円。

 また、旅行費などの家族団欒のための「年間の贅沢費」の予算は計50万円。1年間の支出はすべて合計すると、約223万円になる。

「アマゾンプライムや楽天マガジンの支払いもこちらから。ただ、ポイント払いにすることで出費は0円です」

 無駄はコストカットしつつも、大事なところに使うお金は惜しまないのが太朗さんの節約の極意だ。

「贅沢をすれば人間ですから、それに慣れてしまいます。僕は収入が上がっても、あえて生活水準を少し下げることで、たまの贅沢は心から楽しめるようになりました」

貯まる節約術11選

 太朗さんが実践中の、月の生活費を10万円に抑えるテク。「小さな節約も積み重ねていけば、確実に貯蓄はアップします」と、話す。

(1)週の食費は予算7000円週末にまとめ買い

 食材は週末に1週間分をまとめて買う。購入するのは料理しやすい定番商品で、鶏むね肉、豚バラ肉、卵、野菜など。加えて、その日の特売品を購入する。

 買ってきた食材を見て、献立を考えているので、1回の金額を7000円以内に抑えられている。1か月の食費は2万円台。まとめ買いと、スーパーに行く回数を減らすことで、不要なものを買ってしまう「ついで買い」を防ぐ効果もある。

買い出しは太朗さんが担当(太朗さん提供)

経理マンの買い出しルール

●欲しいものはリスト化!

 買い物に行くときは、家の在庫をチェックし、買い物のメモを作成する。買いすぎや、買い忘れを防ぐことができて効率的。

●スーパーは2つに絞る!

 何軒も回ると、労力や時間が取られ、いらない商品に無駄遣いしやすい。生鮮食品を買う店と、調味料を買う業務用スーパーの2か所に絞っている。

●食材は1つ100円ルール!

 野菜は1パック100円、肉と魚は100gあたり100円の商品を選ぶと、金額を把握しやすく、7000円予算でも品数を多く購入できる。

●「感謝デー」「ポイントデー」を調べてから買い物する

 外出前に割引やポイント増量の情報をチェックしておき、お得な買い物ができるように、賢く利用する。

(2)日用品のストックは1つまでに制限

 台所用洗剤などの日用品は、値段が安くても、まとめ買いはしない。家に置くストックは1つまで。なぜなら、買い置きが多いと、無意識に使いすぎてしまうからだ。例えば、台所用洗剤のポンプを押すときに、1回で十分なので2~3回プッシュしないようにする。

 反対に、ストックが1つしかなければ、大事に使おうと考える。家族で使いすぎを防止すれば、自然と節約になっていく。

(3)お弁当と水筒で平日はノーマネーデー

 平日は、妻が作ったお弁当と水筒を会社に持参。そうすれば日中、お金を使わなくてすむ。この習慣化で、無駄遣いが減り、節約効果も高まる。

 実行できた日は、カレンダーに印をつけて、節約へのモチベーションをアップさせる方法がおすすめ。「カフェなどで小金を使う“プチ贅沢”は、回数を重ねると大きな浪費になります。週に1回でもノーマネーデーをつくってみては」

妻の手作り弁当。小腹がすいたときに備え、デスクにはガムやのどあめを常備(太朗さん提供)

(4)太陽光発電で電気代は実質0円!

 電気代を抑える方法として、「太陽光発電」を利用している。設置費用などに百数十万円かかるが、自治体によっては補助金が出るところもある。

 発電した電気は自宅で使用し、余った電気は電力会社に買い取ってもらう「売電」を利用している。太朗家は売電によって電気代が実質0円。売電価格は以前より下がっているが、電気代節約にひと役買っている。

屋根に取り付けられた太陽光発電のソーラーパネル(太朗さん提供)

(5)格安スマホにして実質0円に!

 格安スマホへの乗り換えで太朗さんが選んだのは「楽天モバイル」。今年10月末までは、1か月のデータ使用量が1GB未満なら、後日、料金分のポイント還元を受けられて、実質0円になる。11月以降も3GBまでなら税込み1078円。家族3人分でも3234円ですむ。

 回線は大手キャリアのものを利用するため、通信速度もセキュリティーも問題なく使える。

(6)維持費のいらないカーシェアを利用

 車にはガソリン代や車検代、税金などの維持費が年間で数十万円かかる。太朗さんは普段、車が必要ないため、持たずにカーシェアを利用している。15分単位での利用が可能。

 利用料は車種にもよるが、ガソリン代や保険料も含めて15分で220~390円程度だ。車を持たない生活で、年間、数十万円分の節約ができる。「憧れの車を借りるのも楽しいですよ」

(7)水道代を節約できるシャワーヘッドを愛用

 浴室を節水型のシャワーヘッドに交換するだけで、水道代が月に約550円節約できる。また、トイレも工夫次第で節水に。例えば、水流が強いタイプのトイレなら家族全員が「大」のレバーを使わずに、いつも「小」のレバーを使って水量を減らすことが可能だ。

 食器を洗うときは手で洗うよりも、食器洗い機を使ったほうが使用する水が少ない。

節水効果だけでなく、きめ細かで心地よい水流も魅力(太朗さん提供)

(8)家電は一斉に買い替え。安い時期を狙って

 洗濯機や冷蔵庫などの大型家電は、購入後10年ほどたつと、機能が低下したり不具合が生じることが多い。このとき、いくつかの家電をまとめて買い替え、ポイントを一気に貯めるようにしている。

 購入する時期は、家電量販店なら商品を入れ替えるタイミングや決算期にすれば、より安く購入可能。例えば、ビックカメラなら値段が下がる週末の土曜日、日曜日や年末の12月の購入が狙い目。

(9)欲しい服はまずフリマアプリをチェック!

 服を買うときは新品にこだわらず、フリマアプリの「メルカリ」や、リユースショップの「セカンドストリート」などをチェック。未使用に近いもの、状態の良いものも多く、新品よりも安く購入できる。

 その一方で、着なくなった服はメルカリに出品して換金し、新しい服の購入資金に。仕事に着ていく服は、ユニクロなどのファストファッションを活用し、家族3人の衣服代を年間20万円に抑えている。

(10)「ポイントサイト」でアマプラ代はゼロ!

 ポイントサイトとは、アンケートに答えたり、そのサイト経由でショッピングサイトを利用することで、ポイントが貯まるサイト。そのひとつが「モッピー」だ。

 例えば、モッピーを経由して楽天市場で買い物をすると、楽天ポイントに加えて「モッピーポイント」も貯まる。これはアマゾンギフト券に交換が可能で、アマゾンプライムの年会費4900円に充てることで0円で利用できている。

(11)ポイントも貯まる!「ふるさと納税」

 ふるさと納税は、自分が応援したい自治体を選んで寄付を行うことで、寄付額から2000円を引いた金額が、所得税や住民税から控除されるしくみ。自治体からの返礼品も楽しみのひとつだ。

 納税を行うときに、「楽天ふるさと納税」のサイトから楽天カードを使って納税し、楽天ポイントも貯めている。返礼品には和牛やカニなど、普段買わないような高級食材を選べば、家族の満足度もアップし、その月の食費を1万円台にまで減らすことも可能に。

塩、こしょうだけの味つけで、おいしく作れたローストビーフ(太朗さん提供)

経理マンの節約ポリシー

◆毎月の支出は家計簿アプリで把握

 毎月の収支を把握するときに利用しているのが、家計簿アプリの「マネーフォワード」。クレジットカードや電子マネーで購入した商品を自動的に分類し、集計してくれる。

 支出額が多い項目があると、「前月よりも出費が多い」というアラートが届き、使いすぎの防止もできる。また、銀行や証券会社の口座と連携し、資産残高の推移もわかりやすい。

家計簿アプリで把握(太朗さん提供)

◆家族との思い出づくりはお金をケチらない!

 太朗家は家族旅行を欠かさない。旅行の予算は毎年40万円。家族3人、1〜2泊で1回20万円という贅沢な旅行を楽しむ。年に2回行くと合計40万円に。

 減らせる部分は思い切ってコストカットして、貯まったお金を惜しみなく旅行に使い、家族の思い出をつくる。お金を“抑える”ところと、“使う”ところの線引きを明確にしている。

◆貯蓄型保険より投資信託!

 貯蓄型保険は保険会社を通すため、手数料が上乗せされて利益が少ないと考えている。手数料の安い投資信託のほうが有利に運用できる。

 そのため掛け金が全額所得控除で、利益が非課税になるiDeCoや、利益が非課税のNISA、つみたてNISA、ジュニアNISAの口座から、インデックス型投資信託などで運用している。

教えてくれたのは……太朗さん●10年以上経理の仕事に携わる会社員。簿記、FP、税務会計の資格を持つ。35年の住宅ローンを8年で完済。YouTubeチャンネル「太朗のおもてなし。」で多彩な節約術を提案。著書に『幸せにお金を貯める100のリスト』(KADOKAWA)がある。

(取材・文/松澤ゆかり)