オンラインストア『Johnny’s アクスタ Fest』より

「ジャニーズアクスタfest再販は景品表示法違反です。数量限定と聞いて貴重な土日を使って購入できた人達のことをなんだと思ってるんですか?」

ファン待望のグッズ販売で物議

 ジャニーズ事務所のオンラインストア『Johnny’s アクスタ Fest』が9月10日にオープンした。所属タレントである木村拓哉(49)、TOKIOといった大御所から、King & Prince、SixTONES、Snow Man、なにわ男子ら若手スターを含む豪華メンバーのアクリルスタンド(以下、アクスタ)が『数量限定販売』されたが、瞬く間に完売。

 その後、高額転売が相次いだことから同事務所は再販を発表したが、それが景品表示法に抵触するのではないかとファンの間で物議を醸している。

 ことの発端は今月3日、ジャニーズ事務所から前述の一部デビュー組ファンクラブ会員に向け、オンラインストア『Johnny’s アクスタ Fest』のオープンをメールで報告。

 同日、ジャニーズショップの公式Twitterアカウントでも

「全新作アクスタがラインアップ! 9/10(土)より特設サイトにて数量限定で販売いたします(中略)『Johnny’s アクスタ Fest』の会員登録が必要です。詳細は後日ご案内いたします」

 と告知したことから始まった。

「アクスタとは、アクリル板にタレントやアニメキャラクターなどの画像が印刷されたものです。近年流行の“推し活”の定番アイテムで、部屋に飾ったり、持ち運ぶことで『推しと一緒に行動しているような気分になれる』とファンには必須のアイテムです。

 豪華メンバーのアクスタがいっせいにラインアップされたことで、多くのファンが期待を寄せました」(カルチャー誌編集者)

 一方で、ファンは販売時のオンラインストアへのアクセス集中によるサーバーダウンや、転売ヤーによる買い占めなどを懸念していた。

 案の定、不安は的中。販売直前まで、アクセスの仕方により事前に会員登録出来たファンと出来なかったファンが混在する中、販売開始からすぐにアクセス過多によりサーバーに繋がらない状況に発展。

 全く画面を開けなかったり、運よく会員登録まではたどり着けても購入画面に進めないなど、推しメンバーのアクスタをゲット出来なかった人々が続出した。

 購入へのアクセスが出来ない状況は発売から2日も続いたため、「48時間も粘ったのに結局買えなかった……」「2日もアクセスし続けた時間と労力返して」といった疲労困憊の声があがり、“悪スタ戦争”とまで呼ばれる事態に。

 Twitterでは「予定数終了」がトレンド入りし、

《座席数の決まっているライブチケットの予定枚数終了は分かるけど、予定数終了って何?》

《アクスタにファンが殺到するの分かってるのにどうやって予定数決めたの? 何で受注生産にしなかったの?》

 とさらなる批判が運営に向けられた。

 そして、オークションやフリマアプリでは、定価1個1200円のアクスタが1万円台など高額で転売され、それらを購入してしまうファンも後を絶えなかった。ファンの間では「転売で買ったら転売ヤーの思うつぼ」と注意喚起し合ったり、悪質転売を通報する運動も起こった。

 そうしたファンの努力が実ったのか、ジャニーズ事務所は13日、ファンクラブ会員に対し、

《多くの方がご購入いただけなかったことを受けまして、ファンクラブ会員限定の再販売を行うこととなりました。再販売につきましては、完全受注生産とさせていただきますため、商品のお届けが2023年春以降となります》

 と通達した。一連の流れに対し、アイドル誌を多く手掛けるフリーライターはこう話す。

「これを受けてTwitter上では、推しのアクスタが定価で確実に手に入れられることに歓喜するファンの声で溢れると同時に、《転売ヤーざまぁ》もトレンド入りしました。ただ、“アクセスしたくて2日丸々戦ったのは何だったの……”と嘆く声も多く出ました。

 また、“数量限定販売”と謳っていた商品を“再販売”することが、景品表示法の、商品の取引条件について実際よりも有利であると見せかける“有利誤認表示”にあたるのではといった指摘も出てファンは混乱しています」

弁護士の見解

 景品表示法に詳しいベリーベスト法律事務所杉山大介弁護士は以下のように解説する。

ーー景品表示法違反とはどのようなものか?

「景品表示法(以下、景表法)の基本として、違反になる不当表示とは、景表法5条より『著しく優良であると示す表示』や『著しく有利であると一般消費者に誤認させる表示』、もう少し簡単な言葉で言うと『一般消費者から見て、本当のところを知っていれば買わなかったよね』と言える表示です」

ーー他に似たような例は過去にあったか?

「2019年、消費者庁は、加熱式タバコ『アイコス』の広告に虚偽があったとして景表法違反によりフィリップモリスジャパンに措置命令を出しています。

 割引が期間限定であるように表示していましたが、期間が過ぎた後も同様の期間限定キャンペーンを継続していた事例です。一般論として言えば、キャンペーン延長は、有利誤認になりやすいものです

ーー今回の販売方法は景品表示法にあたるのか?

「会員登録をさせて、購買行動も煽っているのは確かです。一方で、再販売は最短で入手する手段にはなっていないため、全く同等の条件が延長、繰り返されたというわけでもないように思えます。

 さらに、再販売で防げるのは、高額転売による入手などであって、むしろ消費者の不利益回避に向けた行動とも言えます。

 一応は、瞬間的に購買欲を煽ってしまった事実もあるので、問題にする可能性もあると思いますが、ただその場合でも、“今後は期間限定みたいな煽り方をしないように”と指導するなど、特に大きな不利益にはならない形にとどまると思います

 今回の“悪スタ戦争”を契機に、人気メンバーを多く抱える事務所として、グッズやチケット販売に際しては、十分な転売対策を施す方が良いのかもしれない。ファンが定価で欲しいものを入手出来る日はくるのだろうか。

お話しを伺ったのは……杉山大介●弁護士。ベルギー育ち。刑事事件を中心に扱う法律事務所を経て、ベリーベスト法律事務所に入所。学生時代には200単位近くを取得するなど知的関心が広く、当事者や問題状況にあわせた、アラカルトなサービスを提供している。趣味はZUMBA、太極拳、ミュージカルなどのステージ観賞。
杉山弁護士のプロフィール:https://www.vbest.jp/member/detail/526/
ベリーベスト法律事務所:https://www.vbest.jp/

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