藤浪晋太郎(公式インスタグラムより)、大谷翔平

 メジャーリーグ『ロサンゼルス・エンゼルス』の大谷翔平選手(以下、敬称略)が、前人未到の偉業を成し遂げようとしている。すでにクリアしている規定打席数に加えて、投手としての規定投球回数まで残り9イニング(9月28日時点)に迫ったのだ。

「2021年シーズンで規定打席に達したのは全30球団で132人で、1チーム平均で4人。規定投球回数に至ってはわずか39人しかいません。この数字だけでも、いかにメジャーで規定クリアするのが難しく、ましてや“W規定”となれば……。

 大谷選手は唯一無二のアンビリーバブルな選手。個人的にはMVPを争うヤンキースのアーロン・ジャッジ以上だと思いますね!」

 メジャーオタクを自称するスポーツ紙・野球担当記者が興奮を隠さないように、野球の話題を独占するかのような大谷の活躍ぶり。その一方で、大谷と並んで“球界の至宝”と称された、ライバルの気になる動向も飛び込んできた。

『スポーツ報知』Web版が9月28日に、阪神タイガースの藤浪晋太郎選手(以下、敬称略)が、今シーズン後にポスティングシステムを利用してメジャーリーグ挑戦する可能性を伝えたのだ。

 記事によると、かねてよりメジャー挑戦を直訴していた藤浪の意向を汲んで、球団がポスティング会談の席を設けるという。移籍話が順調にまとまれば、来シーズンのメジャー観戦の楽しみが一つ増えるのだがーー。

藤浪からホームランを打った大谷

 2012年、春の『センバツ』高校野球大会で“高校ビッグ3”と称された両雄はそれぞれ、大阪桐蔭高校(大阪)、花巻東高校(岩手)のエースとして1回戦で対戦。大谷は藤浪からホームランを放つも、チームは敗戦。大阪桐蔭は勢いのままに優勝を決め、さらに夏の甲子園大会をも制覇し、春夏連覇の偉業を成し遂げたのだった。

 卒業後はプロ野球選手となって、“専業投手”として期待通りに勝ち星を重ねる藤浪に対して、投手と打者の兼業で旋風を巻き起こす大谷。2年目の2014年シーズンに投手として11勝、打者として10本のホームランを打つなど、片鱗を見せ始めていた大谷だったが、依然として“二刀流”への懐疑的な声も多かった。

 片や、ルーキーイヤーから2年連続の二桁勝利をあげて、誰もが認める若き虎のエースへと成長した藤浪。その人気ぶりからシーズンオフにはテレビ露出も増え、2014年末に放送された、テレビ朝日系のスポーツバラエティー番組『中居正広のプロ野球魂』からもお呼びがかかる。

 プロ野球ファンにとっては年末の風物詩として楽しまれた同番組。この年は、当時現役だった『読売ジャイアンツ』の阿部慎之助、『福岡ソフトバンクホークス』の松田宣浩、そして『東北楽天ゴールデンイーグルス』の則本昂大ら、スター選手とともにゲスト出演した若干二十歳の藤浪。

大谷は「投手よりも野手の方が上」

 それぞれのポジションから選手を1名ずつ、ドラフト会議のように選出して“ドリームチーム”を結成するという企画において、阿部チーム、松田チームの双方が“目玉”である大谷を「抑え投手」として指名。ところが、対する則本と藤浪の合同チームは、大谷を投手ではなく「野手」として指名。

「藤浪のゴリ押しで(決まった)」と指名に至った内情を明かす則本に、「そうですね」と満足そうな藤浪。中居正広に「友達だから(指名したんでしょ)」と茶化されつつ、「野手として。野手としてバッティング、肩、走塁含めて」と、あくまでも野手としての能力を評価した上での使命であると力説。

 そして興味深そうに論評を聞いていた中居が、「(大谷選手の)評価は投手よりも野手の方が上?」と聞くと、藤浪は「そうですね」と言い切るのだった。

 前出の野球担当記者も、中居の番組を「ええ、覚えていますよ(笑)」と振り返る。

「藤浪投手は当初、大谷選手を“野手からマウンドへ”の“二刀流”構想を練っていたものの、企画のルール上叶わずに野手を優先したんでしたね。投手・大谷を認める一方で、実際にグラウンドで対峙した投手にしかわからない、打者・大谷の凄みを知っているからこその野手優先だったのでしょう。

 何度か対談もしている両者ですが、ピッチャー談義こそすれども、藤浪投手が明確に“大谷は打者”と私見を述べたのは最初で最後だったと記憶しています。バラエティー番組の雰囲気に絆されて出た、ライバルによる貴重な大谷評でしたね」

インスタでファンの質問に答える阪神タイガース・藤浪晋太郎(公式インスタグラムより)

メジャーのスカウトが視察に来ている

 放送翌年に迎えた2015年シーズンに、キャリアハイとなる14勝をあげた藤浪。しかし、その後は極度の不振に陥り、一時期は1億7000万円まで上がった年俸も2022年シーズンは5000万円を下回っている(金額はいずれも推定)。

 大谷が海外で偉業に挑む傍らで、数字(3勝5敗、9月28日時点)だけをとれば完全復活とは言い難くも、クオリティースタート(6回以上、自責点3以内)の確立も高まるなど、藤浪がかつての輝きを取り戻しつつあるのも確かだ。

「現にシーズンの登板日には、メジャーのスカウト陣も視察に来ていますからね。ポスティングが実現すれば複数球団からの入札が見込まれますし、フィジカルチェックを問題なくクリアできれば契約、来季はメジャーのマウンドに立っているかも。

 中居さんの番組では、自分自身を“投手枠”で指名しませんでしたが、大谷選手を打者としたのも、決して“投手ではライバルに負けていない”という藤浪選手の自信とプライドの表れだったと思います。復活を信じたいですね」(同・記者)

 今度は夢の舞台、メジャーリーグで大谷と藤浪の対戦を見たいものだ。

 
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