楽しんごさん

 2011年に“ラブ注入”で大ブレイクした楽しんごさん。あれから10年以上がたち、現在は整体師とお笑い芸人を両立しながら活動中。過去には傷害事件で世間を騒がせ、吉本から独立のきっかけとなった闇営業問題もあった。売れっ子だったあのころを振り返りつつ、さまざまな問題をどのように受け止めているのかを追跡取材。

 “ドドスコスコスコ、ラブ注入!”のギャグと乙女キャラでブレイクし、かつてお茶の間の人気を集めた楽しんごさん(43)。2011年には新語・流行語大賞のトップテン入りも果たし、一時はテレビでその顔を見ない日はなかったほど。ここ数年は表舞台から姿を消し、どうしているかと思いきや─。

最近は整体の仕事が忙しくて、全然休みがないくらい。ここでは僕が直接施術をするので、いつも3か月先まで予約でビッシリ。今年はもう年末まで埋まっちゃってまーす!

 取材で訪れたのは、楽しんごさんのプライベートサロン『極上ほぐしんご』。場所は郊外にある住宅街の一角。

 サロンは4LDKの一軒家で、駐車場も4台分ある広々としたつくり。顧客には芸能人やスポーツ選手など著名人も多く名を連ねているという。自称“時給日本一整体師”を謳っているが、実際のところ施術料はいかほどに?

「1人5万5000円で、出張だと1回50万円。1人あたり基本90分ではあるけれど、カウンセリングによっては追加料金を頂かずに3時間やった方もいらっしゃいます。僕はお客様のコリが100%取れないうちは帰さないので。時間に縛られてまだコリが残っているのに終えるのは僕も施術家として嫌なんです」

 施術希望者は楽しんごさんのSNSにメッセージを送り、直接予約を取るシステム。場所は非公開なので、この日も近隣まで足を運ぶと、楽しんごさん自ら出迎えに来てくれた。

父の「正社員になれ」で石油会社に就職

 高校時代に整骨院でアルバイトをし、整体師の修業を始めている。

「受付で保険の申請など事務作業から始めて、3年後に初めておばあちゃんの身体を触らせてもらうことができました。師匠はバリバリの体育会系で、ちょっとでもダメだとビンタされるようなこともありましたね。まさに昭和な感じ(笑)。でもすごくいい方で、一からいろいろ教えてくれたし、僕が整体師になれたのは師匠のおかげ。本当に感謝しています」

 高校卒業後、独立。横浜にあった脱毛サロンの一角を間借りし、自身の店を開いた。

 睡眠時間を削って働き続け、半年間で300万円の売り上げを達成した。店の経営がようやく軌道に乗り始めるも、父の言葉でいったん整体の仕事を離れ、石油会社に就職している。

“整体もいいけれど、正社員になって毎月25日にきちんと給料をもらえる喜びを味わえ”と父に言われて。働いていたのは地元・横浜の根岸にある会社で、石油工場で油の検査をして、不純物が混じっていたらドラム缶を撤去する、という仕事をしていました」

「整体は僕の天職。将来病気にならない身体づくりをサポートしたいと思ってます」と語った楽しんごさん

 石油会社に3年間勤めた後、再び整体の道に戻りアパートの一室で自身の店を開業。このころ、店の宣伝にと『笑っていいとも!』に一般人として出演したところ、そのキャラクターが注目を集め、“面白素人”として数々の番組に出演を重ねている。

「でも実のところお笑いには興味がなくて、ただ目立ちたかっただけ。お笑い以前に俳優になりたくて、一度文学座のオーディションを受けているんです。なぜ文学座だったかというと、女優の小川真由美さんに憧れていたから。書類審査で落ちましたけど(笑)」

 文学座がダメならと、俳優事務所に所属。Vシネマに端役で出演するが、「与えられるのは北朝鮮に拉致された宇宙人とか福建省からの不法入国者みたいな役ばかり」で一向に芽が出る気配はない。ならば芸人を目指そうと、お笑い番組のオーディションに挑戦する。

知人男性を殴って傷害事件に

「僕の前に受けていた人がすごい勢いでダメ出しをされていて、怖くて頭が真っ白になっちゃって。しょうがないからぴょんぴょん跳びはねていたらウケちゃって、審査員が椅子から転げ落ちるくらい大笑いしていましたね(笑)」

 ピン芸人としてデビューし、『エンタの神様』や『あらびき団』といった人気お笑い番組に次々と出演し、瞬く間に知名度を上げていく。

「自分でもそんなにブレイクするとは思っていませんでした。吉本興業は1人のマネージャーが100人の芸人を抱えていて、僕も最初はその1人だったけど、半年後には専属マネージャーがつくようになりました。仕事がどんどん舞い込んで、お金もどんどん入ってきた。でも台本を読む暇もないくらい忙しくて、ちょっとおかしくなっていましたね」

 1日の睡眠時間は3、4時間。テレビにCM出演のオファーも続き、バラエティー番組の年収ランキング企画で1位に輝いたこともある。一躍時の人となったものの、「でも頭の片隅ではきっとこんなこと長くは続かないだろうと思っていました」と言う。それが現実となったのが、2013年に発覚した傷害事件。知人男性を殴り、ケガを負わせたとして書類送検されている。

みんなあっという間に離れていきました。まさに手のひら返しという感じ。彼は元付き人と報道されたけど、本当は歌舞伎町で知り合った男性で、当時親しくしていた人。彼氏だったら時にはケンカもするじゃないですか。真実はどうあれ、何かあると一気に淘汰されるのが芸能界。でもあのころは僕も歌舞伎町で遊び歩くなど素行が悪かったし、天狗になっていたと思う。それで恨まれたり妬まれたりしていたこともあったかもしれない」

 仕事は激減し、3年前には所属していた吉本興業との契約を解消。闇営業が発覚しての解雇と報じられた。

今の野望は「芸能界の返り咲き」

取材には本人お気に入りのパロディーTシャツを着用した楽しんごさん。久々に見せてくれた“ラブ注入”

「仕事のオファーがあっても吉本を通すとOKが出るまでものすごく時間がかかってしまう。“直近の営業の仕事だからお願い!”と直接頼まれるようなことは確かにありました。それを闇営業と言われたらそうなのかな。マスコミが家や実家にも押しかけて、いろいろなことを書かれました。ただそんなときも整体のお客さんは離れなかった。きっと芸能一本に専念していたらつらかったと思うけど、僕には整体があったから……」

 現在は整体師として多忙な日々を送る傍ら、渋谷りゅうきとコンビ「おいなり」を結成し、お笑い芸人としての活動も続けている。今の野望は「芸能界の返り咲き」で、まずはレギュラー獲得を狙う。

「ラジオでもなんでもいいからレギュラーが欲しい。芸能界で痛い思いをしてきたから、今度は新しいスタンスで頑張りたい。今まではキャラをつくって“楽しんごで〜す!”なんて言っていたけれど、今度は素のままの自分でいくつもり。これまで黙っていたことでたくさん誤解も生んできたから、もう何も隠さずに何でも喋っていこうと思っているんです」

 もちろん整体はこれからも続けていく。目指すは整体師と芸人の二足のわらじだ。

僕はやっぱり人に喜んでもらいたい。お笑いも整体の仕事もそう。東日本大震災や熊本地震のとき現地に駆けつけ被災者のマッサージをしたのもその思いから。僕の施術で滞っていた血流が良くなって、たくさんの人が楽になる姿を見て、整体は僕の天職だ、死ぬまで続けようと改めて思って。でもサロンに来たくても予約が取れない、ちょっとお高いという方もいるかもしれない。そういう人のためにYouTubeで動画を配信しています。動画を見てしんごちゃんにマッサージされている気分になって、癒されてもらえたらなって思っています!」

取材・文/小野寺悦子

 
取材には本人お気に入りのパロディーTシャツを着用した楽しんごさん。久々に見せてくれた“ラブ注入”

 

 

「整体は僕の天職。将来病気にならない身体づくりをサポートしたいと思ってます」と語った楽しんごさん
取材には本人お気に入りのパロディーTシャツを着用した楽しんごさん

 

取材には本人お気に入りのパロディーTシャツを着用した楽しんご