THEALFEE(左から桜井賢、坂崎幸之助、高見沢俊彦)撮影/廣瀬靖士

 10月5日にダブルAサイドシングル『星空のCeremony/Circle of Seasons』をリリースするTHE ALFEE。前回の取材は2月に発表したアルバム『天地創造』で。

 こんなにも早く、ふたたびインタビューできると思わなかったと伝えると、

高見沢俊彦(以下、高見沢)「コロナ禍になってからリリースするタイミングが早まっていますね。生き急いでいるんですかね(笑)」

坂崎幸之助(以下、坂崎)「先が短いんでって(笑)」

コロナ禍が創作意欲を刺激

 記者の緊張を和らげてくれるような冗談からスタート。“トラベリング・バンド”と自認していた3人は、デビュー以降、休むことなくライブツアーを続けてきた。だからこそ、コロナ禍でこの2年ほどステージに立つことができなかったことが楽曲を制作する高見沢の創作意欲を刺激した。

高見沢「(コロナ禍に入って)“新曲が希望である”と言い続けてきましたから。その新曲を出すことが、先々のライブにつながるという意味で」

 そう語る高見沢だが、現在、『オール讀物』にて、小説第3弾となる『特撮家族』(筆名:高見澤俊彦)を連載中。

高見沢「いま、ちょうど締め切りなんですよ。やばい! 本当に大変です(苦笑)」

坂崎「早く帰ったほうがいいんじゃない(笑)」

高見沢「いやいや早く帰っても、全然出てこないからね」

 今回のダブルAサイドシングルのリリースが発表されたとき“タイトル未定”という文字が並んでいた。

高見沢「サウンドや歌詞はできあがっていましたが、タイトルがなかなか決まらなかったんです。それと、当初、発表しようと考えていた曲『星空のCeremony』は、まったく違うものでした。“なにかが違う”“やっぱり違うんだよな”という思いがありまして、7月末の夏のイベント後に変えたんです」

 タイトルの“星空”を目にした多くの人が、時代を超えて愛され続ける名曲『星空のディスタンス』を思い浮かべるはずだ。

狙いどおりのタイトル

坂崎「狙いどおりです」

高見沢歌詞のあたまに“カシオペア”をもってきましたからね。どうだ! 王手! みたいな感じです(笑)。みなさんが思っていらっしゃるとおりですよ。最終的にこの曲に決めた理由は、サウンド的な問題でした。最近のシングルでは『星空のディスタンス』のような、ロック調のちょっと激しめの楽曲を出していなかった。うちには、桜井という天才ボーカリストがいまして。彼の声の“艶のあるちょうどいいところを聴いてもらえる作品にしました。桜井の何が天才か聞いてくださいよ」

坂崎「どうして天才なんですか?(笑)」

高見沢「コロナ禍の2年間、家で酒をひたすら飲み続け、テレビを見て笑っているだけで何もしていないのに、いきなりのライブで以前と変わらない声が出ちゃうんです」

桜井賢(以下、桜井)「(苦笑)」

高見沢「ほとんどの人が、ボイストレーニングなんかをしているのに、そういうことなしで『星空のディスタンス』を歌えちゃう。その“天才マサボンのパパ”のいいところを集めて作った曲です(笑)」

桜井「ひどいでしょ(笑)。でもね、確かに家でボイトレなどしませんね」

坂崎「高校生のころからそう。鼻歌も歌わない。1パーセントの才能と、99パーセントの酒でできていますから(笑)」

桜井「はははは」

 お互いの才能を認め合っているからこその掛け合い。改めて桜井の艶のある声にほれぼれする新曲『星空のCeremony』だが、初めて聴いたときのことを聞くと、

桜井「カシオペアから始まる歌詞で、最初は何で今さらこれなのって思いました(笑)。でも、コロナ禍になって“ディスタンス”という言葉をよく聞くようになりましたよね。そのディスタンス(『星空のディスタンス』)のアンサーソング的ないい作品ができあがったと思います。“たかみー”節がいろいろなところにちりばめられていて、耳なじみがいい。これを秋のツアーで再現しないといけないですからね。結構、大変ですよ。リーダーがやるって言ってますので……」

高見沢「桜井が歌わなかったら、誰が歌うんだよ!(笑)。でも、ライブで披露したら盛り上がると思います」

前作に続き『記憶捜査3~新宿東署事件ファイル~』の主題歌に

THEALFEE(左から桜井賢、坂崎幸之助、高見沢俊彦)撮影/廣瀬靖士

 もうひとつの『Circle of Seasons』は、テレビ東京系・金曜8時のドラマ『記憶捜査3~新宿東署事件ファイル~』の主題歌。

高見沢「前作の『記憶捜査2』に続いて主題歌を担当させていただきます。前向きな歌詞で、アコースティックギターと3人のコーラスだけのフォークロック調の曲。この“フォークロック調”というのもシングルで出すのは初めてです。アルバム収録曲にもないかもしれない」

坂崎「頭から最後まで3人で歌っている曲は、意外とない。僕らは、一瞬もサボれないんですけどね(笑)」

 そっと背中を押してくれるような応援ソングのアコースティックギターの音色にTHE ALFEEらしさが光る。

坂崎「たぶん、今、こういうギターの音を出す人は日本、海外でもあまりいないのかな」

高見沢「専門的なことを言うと、チューニングが違う。Dチューニングで」

坂崎「レコーディング前に高見沢から相談されて。難しいかもね、なんて話していたことが結構できました。高見沢も久々にアコギを弾いているんですよ」

高見沢「40年ぶりに(レコーディングで)弾きましたよ」

坂崎「高見沢にフォローしてもらえたので、こっちはオープンチューニングでとか。ギターが好きな人には、特に響く1曲じゃないかな」

高見沢「ほかにはないサウンドなので、新鮮に聴いていただけると思いますね」

坂崎「イントロのギターの音で楽曲の世界ができあがる。ギターの音で曲のイメージが湧くというような経験をこれまでさせていただいてきたので、同じような経験を提供してあげたいという気持ちはあります」

吉田拓郎さんらしい決断に納得

吉田拓郎(2003年)

 坂崎が強い影響を受けてきた先輩のひとりで、THE ALFEEにとって下積み時代の恩人である吉田拓郎が年内での芸能活動引退を発表した。また、高見沢が『Forever with you~永遠の愛の歌~』('20年)を芸能生活60周年の記念作品として作曲・編曲を手がけ、THE ALFEEとしてレコーディングにも参加した加山雄三も年内でコンサート活動を引退する。

高見沢「こればっかりは、本人じゃないとわからないことですから。お疲れさまでしたとしか言えないですよ。永遠というのは無理ですから。やっぱり、ある程度のところにきたら、引き際ということを意識するようになるのかなとは思います。ですから、ご本人の決断というのは支持したいです」

坂崎「僕は、拓郎さんが最後のテレビ出演とおっしゃった『LOVE LOVE あいしてる 最終回・吉田拓郎卒業SP』でご一緒させていただきました。最後ということでしたが、ぜんぜんしみったれた感じではなくて、明るくて。これまで拓郎さんの近いところにいた僕らとしたら、あの方の性格とか生き方を見てきたので納得しますよね。もちろん、ファンとしては、ライブを見たいですよ。でも、拓郎さんがご自分で線を引くのは、らしいなって感じがすごくします。英断だなと思う」

 放送では、ハワイで番組収録があったら出演すると話していた。

坂崎「決まったらハワイに行くんじゃないですかね。そういう人ですから(笑)。それと、山本潤子さんも、ご自身が納得できるようなパフォーマンスができないからか、休養に入られて。やはり残念です」

『LOVE LOVE あいしてる』に準レギュラーとして出演し、大ヒット曲に『翼をください』がある山本潤子も無期限休養を宣言している。

桜井誰でも必ず終わりがあるわけで、それを決断するということもすごく大変な勇気がいることだと思います。加山さんでいえば、85歳まで現役でステージに立ち続けたということは残るわけじゃないですか。だから、われわれは、来年結成50年、再来年でデビュー50年になりますけれど、ひよっこだなと思いますよ。いままでずっと加山さんを見てきて、“まだまだだな”と思いながら続けてきたんですから。加山さんと同じ85歳までバンドが続けられるのかは少し疑問ですけど、やはり素晴らしい足跡を残してくれた方ですから、それは永遠だと思います。同じような決断をされた、ほかの方々にしても同じですね」

高見沢ただ、僕らとしては、まだ、できていないこと、やり残していることが、たくさんあるように思うんです。そして、ありがたいことに僕らのことを待ってくれている人たちがいる。コロナ禍でライブができなかったから、少しずつ情熱がなくなっていってしまったんじゃないかと心配してたら、逆に高まっているようでホントにありがたいです」

THE ALFEE銀行は破綻しない

坂崎僕らがやっているラジオ番組に若い方からメールが届くんです。“コロナ禍でファンになりました”とか“沼に落ちました”と。2月にリリースしたアルバム『天地創造』でファンになってくれた方もいて。これも、現役でやっているからだと思います」

高見沢「新曲を楽しみにしてくれるというのは、めちゃくちゃうれしいですよね。例えば、ビートルズだと、ジョン(・レノン)の声があって、ポール(・マッカートニー)があって、ジョージ(・ハリスン)で、たまにリンゴ(・スター)の声が聞こえてくる(笑)」

坂崎「たまにね(笑)」

高見沢「バンドサウンドとしてそれが、すごく心地よかった。だから、ソロになって、それぞれとても素晴らしい曲がありますが、ビートルズは越えられない、何か物足りない気がするんです。やっぱり、彼らが一緒にやってる時代の作品に心をつかまれますね。個人的な意見ですが」

坂崎「サイモン&ガーファンクルも、ポール・サイモンもソロでいいアルバムをたくさん出しているけれど」

高見沢「やっぱりガーファンクルの声が聴きたくなる。ハーモニーが欲しくなってしまうんですよ」

桜井「僕ら、ひとりひとりがバンド志向ですから。バンドじゃなくちゃ意味がないと思っている」

高見沢「ひとりだと大変だしね」

桜井「おまえが、それを言うなよ(笑)」

高見沢「だって、全部、ひとりで歌わなくちゃいけないんだぜ(笑)」

坂崎「そりゃそうだな、大変だ(笑)」

 結成50年、デビュー50年が目前に迫っている。どんな計画を立てているのだろうか。

坂崎「もう綿密に」

高見沢「何も考えていないです(笑)。でもね、応援してくださるみなさんの青春を預かっちゃった以上、THE ALFEE銀行は、破綻しません! 預けていただいたものを倍にして返します

桜井「みなさんのパワーがあってこそ続けられているバンドですから、きっちり返していきたいと思います」

10月5日発売ダブルAサイドシングル『星空のCeremony/CircleofSeasons』初回限定盤A・B・C、通常盤各1100円

 秋の全国ツアー『THE ALFEE 2022 Autumn Tour Genesis of New World 秋の天地創造』が10月6日からスタート!

 12月には『THE ALFEE 2022 Winter Genesis of New World Final 冬の天地創造』を開催。

<ヘアメイク/野原ゆかり COSTUME/中村秋美(ナカムラアキミ)>

高見沢俊彦(撮影/廣瀬靖士)

 

桜井賢(撮影/廣瀬靖士)

 

坂崎幸之助(撮影/廣瀬靖士)