携帯のショートメール(メッセージ)に届いた詐欺メールの数々。リンクを踏んだらアウト

 人気グループ『King &Prince』の平野紫耀(25)が主演することで話題の新ドラマ『クロサギ』(10月21日スタート、TBS系)。

 平野演じる主人公・黒崎は父親がシロサギ(金銭を騙し取る詐欺師)の被害に遭い、家庭が崩壊した過去を持つ。作品は黒崎がシロサギとアカサギ(恋愛関係を利用する詐欺師)を専門に騙す詐欺師、通称『クロサギ』となり、詐欺には詐欺で戦う物語だ。

「2006年には山下智久さんが黒崎を演じて話題になり、今回のドラマはそのリメイクです。もともとは少年ヤングサンデーの連載で開始は2003年、それから約20年。新ドラマでは現代の詐欺事情にも切り込んでいくとみられています」(漫画雑誌編集者)

 現実でも『クロサギ』が目を付けそうな事件が無数に起きている。詐欺や悪徳商法に詳しいジャーナリストの多田文明さんに最新詐欺手口について聞いた。

騙り詐欺・二段階認証に注意!

「年齢、性別問わず誰でも引っかかる。自分は騙されない、と思う人ほど騙されます」

 まず危惧しているのが偽メールを使い、本当の業者などを装う『騙り詐欺』だ。

「宅配業者や携帯電話会社、クレジットカード会社などを騙り、メールを送ってきます。文中のURLをクリックすると偽サイトに飛ばされ、必要事項を記入するとクレジットカード情報が抜き取られるというもの。被害が増えています」

 リンク先のホームページは本物と見間違うほどに巧妙で、ついついIDとパスワードを入力してしまう。すると詐欺犯たちはその情報をもとに、本当のサイトにアクセス。登録したカード情報が抜き取られてしまうのだ。

 おまけにセキュリティー強化のために設けられている『二段階認証』ですら突破される手口もある。

「被害者を偽サイトに入らせ、詐欺犯が本物のサイトに同時にログイン。詐欺犯は本物のサイトにログインしているため、被害者には本当の認証コードが送られてきます。それを偽サイトに入力すると詐欺犯たちに情報が伝わる。すると彼らは本当のサイトでその情報を入力、二段階認証を突破してアカウントごと乗っ取るというものです」(多田さん、以下同)

ロマンス詐欺・SNS上での友情に注意!

 次に紹介するのは『ロマンス詐欺』。

 これはマッチングアプリなどを通して知り合った相手に対し、その恋心を利用してお金を引き出すというもの。

「最近は恋愛だけじゃないんです。SNSで出会って友達になった人物から騙されることも」

 多田さんは投資を持ちかけられ、約1800万円を騙し取られた男性の事例を明かした。

 50代のAさんはSNSで仲良くなった女性から投資話を持ちかけられた。Aさんは既婚者で女性とは友人関係。しかし、ネット上でしかやりとりをしたことはなかった……。

 過去にビットコインで成功した経験があり、もっと増やしたいと考えていたAさんは女性の話に乗った。

「すすめられたのは海外の投資サイト。将来必ず値が上がると言われて、まず約40万円分の暗号資産(仮想通貨)を購入したそうです」(多田さん)

 その資産は10倍以上の約500万円にまで膨らんだ。手ごたえを感じたAさんは次々に仮想通貨を購入、約1200万円に。サイト上での表示金額は5000万円に達しており、元本を引き出そうとしたという。だが、引き出せない。

 サイトの運営者から「引き出すためには税金を納めなければいけない」と言われ、計600万円を借金して支払った。それでもお金は引き出せず、詐欺に遭ったことに気がついたという。

「Aさんはお金が取り戻せる、とあるハッカーを信じ、その人物からお金が必要と言われてさらに借金をして費用を支払った。その人も詐欺師で、二次被害にも遭っていた。お金を取り戻そうとしている人を狙う詐欺師もおり、“弁護士を紹介する”と言われてお金を騙し取られた人もいるんです」

サポート詐欺・カスタマーサービスに注意!

 SNSはやっていないから安心、とはいかない。

「インターネットのトラブルを狙った『サポート詐欺』という手口もあります」

 ネットを使っていたら突然、画面上に《ウイルスに感染しました》などと警告文が出たり、警報が鳴る。表示されているカスタマーサービスに電話をすると、そこは海外の詐欺組織。被害者は電話口でさまざまな操作を指示され、遠隔操作ソフトをダウンロードさせられてしまうのだ。

 すると遠隔操作でマウスを動かされることから「ウイルス感染した」と、信じ込まされてしまうという。

「駆除するためにはコンビニで電子マネーを購入し、セキュリティー費用を払ってください、と言われます」

 最初は数万円だが“このお金だけでは駆除できない”などと言われ、解除作業のために何十万円、何百万円と支払ってしまった被害者もいる。

「『オレオレ詐欺』の被害も後を絶たないんです。電話の相手は子や孫ではなく、警察官を装っているんです」

 その手口はこうだ。まず、自宅に警察官を名乗る人物から電話がかかってくる。

「クレジットカードが不正利用されています。今から金融庁の職員を向かわせますので、カードを止める手続きをしましょう、と。しばらくすると、金融庁の職員を名乗る人物がやってくる。そこでカードの暗証番号や個人情報を書類に書かされます。そして当該のクレジットカードを止める手続きをするので封筒に入れて保管してください、と言われます」

 被害者がハンコを取りに行っている間に別のカードが入った同じような封筒にすり替えられてしまう。すると被害者は自分の手元にクレジットカードがあると信じ込み、すり替えられた封筒を保管する。詐欺師は被害者のクレジットカードを持ち出し、気づかれない間に限度額の上限に達するまでお金を引き出してしまうのだ。

騙されて気づかない内に自分が加害者に…!?

 だが、さらに怖いのは自分が加害者になる場合だという。

 貧困に悩む20代の女性の元に『お金をあげます』というメッセージが届いた。そんなうまい話はあるわけないと思いつつも、困窮していた女性は返信してしまう。

お金を都合できるが、条件がある。銀行でキャッシュカードを3枚作って、送ってくれ」と返信があった。女性は鵜呑みにし、3枚カードを作り、レターパックで送った。そのカードにそれぞれ40万円振り込む、と言われたからだ。

 だが一向に振り込まれない。その後、警察から事情を聴かれることになった。

「他人にキャッシュカードを譲渡することは犯罪行為。それを知らずにほとんど入金していない口座のカードだからいいかと安易に送ってしまう人は後を絶ちません。送ったキャッシュカードが振り込め詐欺の口座として利用された場合、加害者として警察の捜査を受けることになります」

 騙される背景にはコロナ禍や不況により金銭的に余裕がない人が増えていることもあると指摘する。

「投資で騙された人は、老後に必要といわれている2000万円を用意するために騙されてしまった。その一方で、これからは自分がお金を騙し取られるだけではなく、加害者にならないようにも気をつけなければいけません」

 お金に困っていて、結果詐欺に遭い、それを取り戻すため、誰かを騙す。

「高齢者は貯金を取られ、若い世代は借金をさせられるケースが多い。おかしいな、と思ったら必ず2人以上に相談してください。第三者への相談で詐欺に気づくことが多いんです」

 詐欺で取られたお金は戻ってこない。

「詐欺被害者を責めないでほしい。悪いのは詐欺を働いた人間です」

 詐欺の怖いところは金を奪われるだけでなく、家庭を崩壊させられ、幸せな未来まで奪っていくのだ─。