SKRYU(撮影/齋藤周造)

SKRYU(26)1996年生9月3日生島根県出身
現在は東京を活動拠点とする愛媛県松山市のRapper。4THCoastを代表するDisryから大街道サイファーを受け継ぎキャリアをスタート。
戦極MC BATTLE23章や、凱旋MCバトル西日本ZEPP TOUR福岡之陣での優勝経験を持つ。

 今年8月、島根県出身のラッパー・SKRYU(スクリュー・26)がEP『MUNASAWAGI』をリリースした。《金と酒に翻弄された、自業自得の堕落キャリアを綴る》という本作。その原点は、大学時代まで遡る。

借金をした大学時代

初めて借金をしたのが大学生だったんです。愛媛県の大学に通っていたのですが、大学4年のときに『UMB2018』という大きいラップバトルの全国大会に初めて出場しました。“俺はラップで食べていくんだ”と思って、バイトを全部辞めて、曲を作りながらクラブで遊ぶために、消費者金融で50万円を借りて。でも、あとから“意外とこれってやばいらしい”みたいな(笑)。その矢先に、島根県の銀行に内定が決まったんです」

ラップで食べていく”と決意したのに、なぜ就職?

「UMBの全国大会に出るし、“優勝してムーブメント起こしてラップで食っていこう”と思っていたんですけど、1回戦で負けてしまって、“話が違う”と。なので、借金もあるし長男ですし、実家に帰って丁寧に生きてみようと思って。ラップを諦めかけていた時期だったんだと思います」

縁がつながりラップバトルで優勝

 しかし、就職して2か月がたったころ、転機が訪れる。

「『UMB2018』の現場で配っていた、借金したお金で作ったCDを、戦極MCバトルを主催しているMC正社員さんが聞いてくれて、ライブにブッキングしてくれたんです。そのときにバトルにも出ることになって、『戦極令和杯』という大会で優勝することができました。そこから、曲を書きながら銀行で働いて、2枚くらいミニアルバムを作ったりして。

 2枚目のミニアルバムに収録されている『Mountain View』が今の僕のいちばんポピュラーな曲なのですが、“ステージをあげていく”、地元の島根県は山々が豊かで何もない場所なんですが“山を離れて本当の山の頂上の景色を見に行こう”という思いが詰まっているので、上京に向けての転機となる曲だったと思います」

SKRYU(撮影/齋藤周造)

 そして、銀行を1年で退職して上京……はせず、千葉県に移り住んだ。

「何もわからないのに、いきなり東京に行くのは恐ろしくて。東京に近いところで働きながら音楽ができたらいいなと思って、穏やかに暮らしながら、東京でライブがあれば行ったり、クラブに遊びに出て、タクシーで2万円かけて帰ったり(笑)」

 東京に住み始めたのは、昨年4月のこと。

「上京して1年間は、それなりにお金をいただけるようになったこともあって、満足してしまっていた自分がいて。クラブに繰り出したらちょっとチヤホヤされて、みんなで乾杯して最高、みたいな。

 そんなときに僕の“BIGBOSS”の白井仁(ひと)志(し)さんに助けていただいて、曲作りを手伝っていただく話を受けたんです。東京に越してからの1年が、楽しいところになびいてお金を使って痛い目を見て、お酒に頼って……すごくつらかったので、そんな思いも込めて『MUNASAWAGI』をリリースしました。今はそれを抜け出して、すごくいい感じなんですけどね」

 制作は、リリースの約1年前から始まったという。

「『MUNASAWAGI』をオールプロデュースしてくれたNoconocoさんという方に出会ったときに“こんな曲でやってみない?”と聞かされたのが『Magic Potion』でした。聞いたときに“これはすごいのができる”と思い、その夜に全部詞を書いて朝に送って。

 お酒も進んでいたので、酔った勢いでNoconocoさんに電話をかけたら“めっちゃいいじゃん”と言ってくださり、そこから1年近くをかけて、EPが出来上がっていきました。

『Magic Potion』は、愛媛でやっていたときの思い出の映像を集めて自分でPVを作ったんです。友達に連絡して映像を使わせてほしいと直談判したんですが、PVが完成したときはみんな喜んでくれたのでよかったなと。いいところが集まっているので、ワンシーンずつしっかり見てほしいです」

『MUNASAWAGI』はジャパニーズHIPHOPのメインストリーム

SKRYU(撮影/齋藤周造)

 ミニアルバムのタイトルでもあり、リード曲にもなっているのが『MUNASAWAGI』。

「ビートを聞かせてもらったその日に“これで書いてみなよ”と言われたので、スタジオから出てすぐ作りました。この曲は、僕が初めてレコーディングをした広島県尾道市にある屋根裏のスタジオで感じた胸騒ぎが今ここにつながっているという思いを込めているので、そこで出会った同士のSUB-Kを誘って完結させました。

 ちょっと古臭くて懐かしさがあり、ダンサブルな曲調が僕の中で王道だと思っているんですが、『MUNASAWAGI』のトラックにしたものはまったく曲調も違ってすごく現代チックというか、今のジャパニーズHIPHOPのメインストリームのサウンドを踏襲したような形だと思うんです。

 “僕がこんなの乗れるのか!怖い!”と思っていたのですが、曲を聞いてくれるファンの層が増えた感じがします。『No Drama』という曲のサウンドもそうなのですが、オートチューンを使って現代のサウンドに合わせると、新しい層が聞いてくれることを実感しているので、これからも新しいジャンルにくじけずにチャレンジしていこうと思っています」

 では、なぜこの曲をタイトルに?

「決め手は、やっぱりいい曲だったし、歌詞の中にすべて詰まっていると思ったからですね。もともと、酒に使うお金が無限だと思い込んでいた僕は、お酒に溺れてたくさん痛い目も見たし、そういうタイトルにしようと思っていたんです。

 1曲目の『intro -Million-』のサブタイトルはもろにお金ですし、『MUNASAWAGI』にも“アコムのご利用明細”というリリックがあったり、『Intelude -Rakuten-』には楽天カードからの請求の声を入れたりと、お金に関する内容を散りばめた結果、最後は『MUNASAWAGI』だったのかなと。これをいちばん聞いてほしいという思いがありました」 

『Magic Potion』から始まった制作だったが、いちばん最後に完成したのが意外にも『intro -Million-』だった。「ごりごりのラップを詰め込んで気持ち悪いリリックとかおふざけを(笑)」SKRYUらしさ”全開のリリックが、随所に見られる。

「その“らしさ”を出すのに妥協は許されないと思って、とにかく力んでしまって……。1か月くらいだったと思うのですが、作る過程でいちばん悩んだかもしれないですね」

 リリースから約2か月。ライブで本作の曲を披露することも多いが、なかでも盛り上がる曲は『VIP』だそう。

「僕自身がいちばん好きな曲なのですが、僕らしい踊れるファンクで、みなさんが期待しているものを見せることができたと思います。トークボックスのサウンドを交えたファンクをいつかやってみたいと思っていたので、北海道にお住まいのLil‘jさんというトークボクサーをお招きしました。

 ライブでは、『VIP』が僕も気持ちいいしお客さんも揺れてくれてるなというのを感じます。歌詞は借金のこととかですけど(笑)。それで踊ってもらえると、書けてよかったと思いますね

 そんなファンキーな楽曲がある一方、最後を締めくくるのはややネガティブなリリックの『No Drama』。

「“適当に触れて俺を汚すな”とかすごく強い言葉があるんですけど、この1年、東京で僕が情けないけど弱ってしまった中で出た言葉で。あんなことは絶対に言っちゃだめだと思っているんですけど……。

 でも、あの曲は東京で心にまったく余裕がなくて、お金もなくて、お金をあるだけ全部使い切って、とか。仕事も、僕のためを思って誘ってくれる人が大半だと思うのですが、その中でイエスマンじゃダメだなとか、シビアな話が出てくるじゃないですか。本当はそんなことお客さんに届けたくなくて、そんな尖ってる僕なんて見せたくないけど、これがないと成り立たないなというくらい、リアルに近づく1曲になったなと。この作品に芯を入れてくれたと思います」

将来はR-指定さん、呂布カルマさんみたいに…

 最後に、今後の展望は?

「なんでもやりたいと思っているんですが、今いちばん思っているのは、フルアルバムを出してワンマンを成功させることですね。ここまでもったいぶったので、最高にもったいぶってからやろうと思っています。腐りかけくらいまでもっていこうかなと(笑)。次の作品で勝負をかけるというのは毎回言っているんですが、フルアルバムとして10曲くらいつめて、自分の最高を集めたものを出したときに、満を持してやりたいという感じですね」

 さらに、こんな夢も。

「バラエティー番組にも出たいですね。R-指定さんとか呂布カルマさんがいっぱい出てるのをうらやましく思ってしまうタイプで(笑)。みんなのお茶の間をジャックするという使命があるので、ワンマンの後はテレビスターを目指したいと思います」

SKRYU 3rdEP「MUNASAWAGI」(※画像クリックで楽曲配信ページへ移動します)
MCバトルの功績はもとより、楽曲こそSKRYUの真骨頂である。2020年4月にリリースした自身初のEP【SCREEN SAVER】は iTunes Store ヒップホップ/ラップ トップアルバム(日本)にて1位にチャートイン、同年12月にリリースした2nd EP【SHORT CUT】も同チャートにて最高順位2位を記録した。

キャリアを、生々しく且つコミカルに歌い上げている。
どこか懐かしさを感じるダンサブルなサウンド、生活感のあるリリック、ラップ、メロディー、ハーモニーを自在に操る "小気味良いスタイル" がSKRYUの十八番と言えるだろう。癖のあるGrooveと独特の世界観を是非、体感してほしい。https://linkco.re/Z6nGqDmn
 
SKRYU(撮影/齋藤周造)

 

SKRYU(撮影/齋藤周造)

 

SKRYU(撮影/齋藤周造)