原作エピソードから選び抜いたエピソードを4クールにわたり放送するという(写真は番組HPより)

 

 

 宇宙から来た鬼っ子・ラムと、ダメダメ男子高校生・諸星あたるのラブコメディーが再び! '80年代に一世を風靡した、高橋留美子原作の『うる星やつら』。声優陣を一新しての、36年ぶりとなる新作アニメが13日より放送開始となった。

 ファンからは歓喜の声が上がっているが、実は'86年当時のアニメ最終回は大不評だったのだ。テレビ局には苦情の電話が鳴り響き、ファンの間でも「あまりにひどかった」といまだに語り継がれるほど。

 がっかりな最終回となってしまったアニメは、『うる星やつら』だけではない。読者にアンケートを実施したところ、さまざまな作品に対し「いまだにもやもやする……」との声が続々と寄せられた。

「名作といわれるアニメでも、さまざまな事情や理由で、最終回が残念なものになってしまうことがあるんです」とは、阪南大学国際コミュニケーション学部教授で、アニメやドラマに造詣が深い大野茂先生。がっかりな最終回はなぜ生まれるのか? その理由を分析してもらった。

1位『新世紀エヴァンゲリオン』 234票

 ほかの作品を大きく引き離し、1位に輝いた(?)のは、庵野秀明が脚本・監督を務めた『新世紀エヴァンゲリオン』。近未来を舞台とした少年少女たちの戦いの物語は、社会現象にもなった。

「視聴者に丸投げともとれるような終わり方だった」(京都府・女性・36歳)

「同じ庵野監督でも、『ふしぎの海のナディア』はきっちり終わっていたのに残念」(埼玉県・女性・45歳)

「最終回で、レイやゲンドウなど大勢の仲間がシンジを取り囲み、会話の途中で急に、おめでとう!と拍手する。視聴者みんなが思っていることだと思うが、何がめでたいのか意味不明」(福岡県・男性 55歳)

 などの意見が寄せられた。

「当時、放送が進むにつれ、庵野監督が心の不調を抱えてしまったんです。原作のないオリジナルストーリーであるがゆえに、監督の心の葛藤がそのまま作品に投影されてしまい、たしかにラスト数話はストーリーが難解で見る人も混乱しました」(大野先生)

 作者の精神状態が理由で、最終回が残念になってしまうケースは非常に珍しい。

「監督にとっても、これで終わってしまうのは不本意だったでしょう。テレビアニメ終了後に何度も劇場版が公開され、昨年の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』でようやく、本当の結末を迎えましたね」(大野先生)

 完結編となったこの作品だけで、興行収入100億円を突破! がっかりな最終回の汚名は、見事に返上されたといえるだろう。

第2位『フランダースの犬』 146票

 第2位は、『フランダースの犬』。日本アニメーションが手がけた『世界名作劇場』シリーズのひとつで、'75年に放送された。

「まだ子どもなのに、たくさん苦労したネロが、最後に死んでしまうなんてあまりにひどい」(埼玉県・女性・46歳)

「すごく感動した最終回でしたが、やはりネロが死んでしまったことはがっかり」(宮城県・男性・54歳)

 など、悲しすぎる結末を嘆く意見がほとんど。

「子ども向けの物語だからといって、必ずハッピーエンドで終わるべきでしょうか。アメリカのディズニー作品に見られるこのような傾向を、私はとても危惧しています」(大野先生)

 童話の『ごんぎつね』や『人魚姫』など、必ずしも「めでたし、めでたし」で終わらない物語は昔から数多く存在した。

「この作品はアメリカでも映像化されていますが、なぜか最後にネロが生き返り、ハッピーエンドで終わるのです」(大野先生)

 ネロがパトラッシュとともに天に召されるあの名シーンは、なんとアメリカ版では改変されていた!

「人生とは本来、思うに任せないもの。この物語は、それを子どもたちに教えてくれています。あのラストシーンだからこそ、歴史に残る名作になったのではないでしょうか」

 と、大野先生。ハッピーエンドでなかったことを嘆く意見は、5位にランクインした『美少女戦士セーラームーン』や7位の『ベルサイユのばら』、ランク外の『魔法のプリンセス ミンキーモモ』にも見られた。

「この結果からもわかるように、切なくて悲しいビターエンドの物語のほうが、実は人の心には長く印象に残るんです。ハッピーエンドの物語の最終回は、意外と思い出せないものです」(大野先生)

3位『うる星やつら』 92票

 第3位は『うる星やつら』。'80年より『週刊少年サンデー』(小学館)にて連載が始まった、高橋留美子の原作が大ヒット。翌年にはアニメ化され、放送は約5年間続いた。

「急にミサイルが爆発したと思ったら、最後にいろんな登場人物がバタバタと出てくるめちゃくちゃなストーリー」(神奈川県・女性・49歳)

「ふたりのラブシーンで終わらせてほしかった。最終回のうるさいドタバタ劇はいらない」(東京都・男性・52歳)と、これまでの登場人物を総動員した騒々しいラストシーンが不評の原因に。

「残念な最終回が生まれる最大の要因が、原作の連載とアニメの放送が並行して進むパターン。この作品もまさにそうです」(大野先生)

『うる星やつら』のアニメ版は、原作の漫画連載が最終回を迎える前に、放送終了することとなった。つまり原作にはまだ最終回が存在しないため、アニメ版でオリジナルストーリーを制作する必要があったのだ。

「高橋先生の原作連載が続いているなか、アニメ版でラムとあたるの物語を勝手に完結させるわけにはいきません。苦肉の策として登場人物を勢ぞろいさせ、ドタバタで終わらせる形となってしまいました。この作品に限らず、原作の連載中にアニメを終了しなければならない場合、どうしても不自然な最終回になりがちでした」(大野先生)

『うる星やつら』の原作の最終回は、アニメ版最終回の翌年に発表された。アニメとはまったく違う、完成度の高い胸キュンのラストシーンは、いまでも伝説に。ちなみにこの漫画版最終回は、劇場版『うる星やつら 完結篇』でアニメ化されている。ファンとしては、こちらを本当の最終回としたいところだろう。

 大野先生によると、アニメ作品の約3分の2以上が“原作あり”だそう。オリジナルストーリーよりも、すでにヒットしている原作をアニメ化するほうが、大はずれとなるリスクが低いからだ。

「最近では、原作の連載と並行してアニメを放送する場合には無理に終わらせず、話が一段落するまでの“シーズン”で細かく区切ることが多くなりました。万が一アニメが不評でも1シーズンで終われますし、連載が長期間続く場合でも、シーズンごとに分割されていたほうが管理しやすいからです。

 そのため'80~'90年代に見られたような、“アニメ放送がいきなり不自然な形で終了する”ケースは少なくなりました。今回のランキングも、すべてが20年以上前の作品。最近のアニメは緻密に放送プランが練られているため、がっかりな最終回が出現する確率はますます低くなるでしょう」(大野先生)

 令和版の『うる星やつら』ははたしてどんなエンディングを迎えるのか──。

全国男女30代~50代1000人に聞いた『アニメ“がっかり”最終回』

1位 新世紀エヴァンゲリオン('95年〜)234票
2位 フランダースの犬('75年) 146票
3位 うる星やつら('81年〜) 92票
4位 機動戦士Zガンダム('85年〜) 65票
5位 美少女戦士セーラームーン('03年〜) 44票
5位 魔法少女まどか☆マギカ('11年) 44票
7位 ベルサイユのばら('79年〜) 41票
8位 海のトリトン('72年) 32票
8位 伝説巨神イデオン('80年〜) 32票
10位 無敵超人ザンボット3('77年) 21票

(取材・文/植木淳子)

全国男女30代~50代1000人に聞いた『アニメ“がっかり”最終回』ランキング

 

原作エピソードから選び抜いたエピソードを4クールにわたり放送するという(写真は番組HPより)

 

物語の解釈について、数多くの検証サイトが立ち上がった『エヴァンゲリオン』。テレビ版最終回も謎(!?)が多く……(写真はDVD-BOX)

 

物語の舞台・アントワープをファンが訪れると、アニメと違う!と感じる“がっかり”聖地だという『フランダースの犬』(写真はDVDメモリアルボックス)