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 ご飯のお供やお酒のつまみとしても親しまれ、さまざまな料理にアレンジが利く韓国の漬物、キムチ。最近では、腸活や菌活にもおすすめの、乳酸菌が豊富な発酵食品としても知られている。

 だが、そんなキムチに「ニセモノ」が出回っているという説をご存じだろうか。

キムチ“風”食品は発酵食品としての効果がない

「2つの観点で“本物ではないキムチがある”といわれています」

 こう話すのは管理栄養士の奥田千晶さんだ。

「ひとつは、市販されているキムチには“発酵していない”ものもあるということです」(奥田さん、以下同)

 キムチを積極的に食べても、腸活や菌活にならないのならこれは問題。見分ける方法はあるのだろうか?

「発酵させた食品には、裏面の原材料名に発酵の役割をする原材料が書かれています。キムチならば魚介類の塩辛や魚醤ですね。最近では麹を加えたキムチも見かけます。これらの記載がなくて、『発酵風味料』と書かれているキムチの場合、発酵していないケースもあります」

 発酵風味料とは、うまみや香ばしさをつける調味料のことだ。

「実際に発酵の役割をする原材料が入っている場合もありますが、使用量によっては、食品表示法に基づく食品表示基準でも表示の省略が認められているため、区別がつかないですね。

 また、野菜をいわゆる『キムチの素』であえたものにも、発酵の役割をする原材料が入っていなければ、発酵食品としての健康効果は期待できないでしょう」

 一方、もうひとつの“ニセモノ”とは何なのだろうか。

発酵していなくてもキムチはおすすめ!

韓国の伝統的な製法で作られたキムチではないと“本物ではない”というものですね。韓国産の食材を使用し、魚介の塩辛や魚醤でじっくり発酵させたキムチを本物とし、韓国政府が許可した証し『キムチくんマーク』がついています。たしかに、原材料の確認が難しいときは、このマークを目印にすると失敗しないですね」

 だが、奥田さんはこう見解を述べる。

「発酵していないからといって、身体に悪いわけではありません。腸内環境をよくするには、まずは腸内のゴミを出すことが大事です。効率的に食物繊維をとり、お通じをよくすること。そのうえで腸内細菌を増やすことなんです。

 キムチは、そもそも野菜の漬物なわけですから、生で食べるより、野菜をたくさん摂取することができます」  

 発酵していないキムチでも、食べたほうが断然いいということのようだ。

「また、発酵していたとしても、その乳酸菌が食べた人の腸にすべて合うかというと、そういうわけでもありません。よく『キムチはぬか漬けの数百倍の乳酸菌がある』などといわれたりもしますが、日本人にはぬか漬けの乳酸菌のほうが腸に合うかもしれません

 来日後、日本で“本場”のキムチを作り続けている高級焼き肉店「MUGEN赤坂」の店主、牟忠一(モ・チュンイル)さんはこう話す。

牟さん特製のキムチ。「十分発酵したキムチは、ワインにも合います」(牟さん) 撮影/齋藤周造

日本でも、おいしいキムチは作ることができます。ですから、韓国産のもので作られたものがすべて“本物”というわけではありません。キムチは塩漬けから始まり、本来とても手間がかかるものです。

 そしてキムチには数え切れないほどの種類があり、うちの店でも、甘酸っぱいものや、数年ものの古漬けのもの、玉ねぎやニンニクの芽だけを使ったものなど、常時20種類くらい提供しています。日本でよく知られている唐辛子を使った白菜のものは一部でしかありません。

 そのため、これだけが“本物”と言われるのは違うと思います。また、発酵していない、浅漬けの段階で食べることもあります。キムチがお好きな方には、ぜひとも本場のキムチの奥深さを知っていただきたいです

 何げなく食べていたキムチ。これを機に、いろいろ食べ比べてみてはいかがだろうか。

お話を伺ったのは……

奥田千晶さん
管理栄養士。大手食品メーカーで研究開発などを経て独立。食と美容の関係についての解説に定評がある。
牟忠一さん
高級焼き肉店「MUGEN赤坂」店主。提供するキムチは、来日した韓国スターたちも多数訪れるほどの納得の味と評判。
MUGEN赤坂:東京都赤坂3-7-11

取材・文/木原みぎわ