豆腐ステーキ しらすナッツソース(撮影/廣瀬靖士)

 日本の平均寿命は年々伸びているものの、健康寿命との差は依然として縮まらない。厚生労働省が2022年7月に発表したところによれば、2021年の平均寿命は男性が81.47歳、女性が87.57歳。平均寿命と健康寿命との差は、男性8.79年、女性12.19年という調査結果に。

タンパク質以外にも筋力アップに必要なものがあった!

「寝たきりの老後」にならないためには、筋肉や骨を強くし、さらにそれを維持することが不可欠だ。それには適度な運動と、食生活の見直しがカギとなる。

 筋肉作りにタンパク質が重要であることは常識になりつつあるが、 必要なのはそれだけではない。管理栄養士で、高タンパクレシピに関する著書もある新谷友里江さんに聞いてみると、

「筋肉・骨・腱・靭帯などの成分であるコラーゲンも大切。タンパク質の一種で、筋肉や骨を作り、関節の動きをなめらかにする役割もあります。ただし、これを含む食材は鶏の手羽など脂質が高いものが多いので注意が必要

 より健康を意識するなら、鶏むね肉やしらすなど脂質が低い食材を選ぶといいでしょう。このほか、コラーゲンが多く脂質が少ないのは、えび、あさり、ゼラチンなどです。食べるときはビタミンC、鉄分を合わせてとると、体内でコラーゲンが生成されやすくなりますよ」(新谷さん、以下同)

 そして、筋肉作りのサポートをしてくれるのがビタミン。

ビタミンDとビタミンKは、ともに筋肉や骨を合成する手助けをしてくれます。どちらも脂溶性ビタミンなので、少量の良質な油と一緒にとるのがおすすめ」

 ビタミンDはきのこ類や卵のほか、魚肉に多く含まれる。代表的なものは鮭やさば、さんまやいわし、しらすなど。一方ビタミンKは、緑の野菜や海藻、納豆などから効率的にとることができる。

 さらに、骨を強くする栄養素として知られるカルシウム。実は筋肉を動かす働きも担っている。

カルシウムを多く含むのは、乳製品、大豆加工品のほか、切り干し大根・高野豆腐などの乾物。小魚、海藻、ナッツなどにも豊富です

 これらをふまえ、タンパク質(コラーゲン)、ビタミンD・K、カルシウム、すべてを1品でとれるレシピを新谷さんに教えてもらった。

「必ずしも1品でとる必要はありませんが、タンパク質とビタミンは食べだめができず、身体に吸収しきれなかった分は排泄されてしまうので、できるだけ頻繁にとるよう心がけてみてください」

豆腐ステーキ しらすナッツソース

 うまみと酸味、噛みごたえのあるソースがポイント!

豆腐ステーキ しらすナッツソース(撮影/廣瀬靖士)

材料/2人分
・木綿豆腐……1丁
・しらす……20g
・アーモンド……30g
・春菊……1/3束(50g)
・にんにく(みじん切り)……1片分
・サラダ油……大さじ1/2
・バター……20g
・塩・こしょう……各少々
・しょうゆ・レモン汁……各大さじ1

【作り方】

(1)豆腐はペーパーで水けをふき、厚みを半分に切って塩・こしょうをふる。アーモンドは粗く刻む。春菊は葉を摘み、長ければ2〜3等分に切る。

(2)フライパンにサラダ油を熱し、豆腐を入れる。中火で2〜3分焼き、焼き色がついたら返してさらに1~2分焼いて器に盛る。

(3)フライパンをサッとふいてバターを熱し、中火でにんにくを炒める。香りが立ったらしらす、アーモンドを加えてサッと炒め、しょうゆ、レモン汁を加えてひと煮立ちさせる。(2)にかけ、春菊を添える。

《ここが筋力アップ》しらすはカルシウム、ビタミンD、コラーゲンを含み、筋力アップにはもってこい。美容にもいいナッツの健康効果も見逃せない!

筋力アップに効果的な栄養素と主な食材

タンパク質&コラーゲン

 肉、魚、卵、大豆加工品はタンパク質が豊富。中でもコラーゲンが多く脂質が少ないのは、皮つきの鶏むね肉、しらす、えび、あさり、ゼラチンなど

タンパク質&コラーゲンが豊富な鶏むね肉としらす(撮影/廣瀬靖士)

ビタミンD

 筋肉の合成を促進し、骨をつくるためのカルシウムやリンの吸収を助けるのがビタミンD。きのこ類、卵、さけ、さば、さんま、いわし、しらすなど

ビタミンDが豊富なきのこ類(撮影/廣瀬靖士)

ビタミンK

 骨にカルシウムを沈着させる働きがある。緑の野菜や海藻、納豆に豊富。ブロッコリー、ほうれん草、春菊、豆苗、ニラ、のりなど

ビタミンKが豊富なほうれん草(撮影/廣瀬靖士)

カルシウム

 骨や歯の材料で、筋肉を動かす働きも。乳製品、大豆加工品、切り干し大根・高野豆腐などの乾物、小魚、海藻、ナッツなど

カルシウムが豊富な牛乳(撮影/廣瀬靖士)

鶏肉とまいたけのクリーム煮

 身体が温まる簡単ホワイトシチューで筋力アップ。

鶏肉とまいたけのクリーム煮(撮影/廣瀬靖士)

材料/2人分
・鶏むね肉……1枚
・まいたけ……1パック
・ほうれん草……1束(200g)
・玉ねぎ……1/4個
・牛乳……300ml
・小麦粉……大さじ1
 A[塩……小さじ1/4、こしょう……適量]
 B[塩……小さじ1/3、こしょう……適量]
・オリーブオイル……大さじ1
・粗びき黒こしょう……適量

【作り方】

(1)鶏肉は1.5cm厚さのひと口大に切り、Aをふって小麦粉適量(分量外)をまぶす。まいたけは小房に分ける。ほうれん草はラップで包んで600Wの電子レンジで1分30秒加熱し、水に5分ほどさらす。水けを絞って5cm長さに切る。玉ねぎは薄切りにする。

(2)フライパンにオリーブオイルの半量を熱し、鶏肉を中火で2分ほど焼く。焼き色がついたら返し、さらに1〜2分焼いて取り出す。

(3)フライパンをサッとふいて残りのオリーブオイルを熱し、中火で玉ねぎを炒める。しんなりしたら小麦粉を加えて炒め、粉けがなくなったら牛乳を少しずつ加えながら混ぜる。なめらかになったら(2)を戻し、まいたけ、Bを加えてふたをし、弱火で7〜8分煮る。ほうれん草を加えてサッと煮る。器に盛り、粗びき黒こしょうをふる。

《ここが筋力アップ》もも肉より脂質が低い鶏むね肉を使い、さらにバターではなくオリーブオイルを使用。小麦粉も少なめなヘルシーシチュー

まぐろとチーズのカルパッチョ

 豆苗サラダをのせたり巻いたりしてどうぞ。

まぐろとチーズのカルパッチョ(撮影/廣瀬靖士)

材料/2人分
・まぐろ(さく)……150g
・モッツァレラチーズ……1個(100g)
・豆苗……1/2袋(50g)
 A[すりおろしにんにく……小さじ1/4、粒マスタード……大さじ1/2、酢……小さじ1、塩・こしょう……各少々、オリーブオイル……大さじ1]

【作り方】

(1)まぐろとモッツァレラチーズは7〜8mm厚さの薄切りにする。豆苗は根元を落とし、3cm長さのざく切りにする。

(2)ボウルに豆苗、Aを入れてサッとあえる。

(3)器にまぐろ、モッツァレラチーズを交互に盛りつけ、(2)をのせる。

《ここが筋力アップ》まぐろはタンパク質も、ビタミンDも豊富。豆苗はビタミンKをはじめ、ビタミンA・C、葉酸などを含み、女性にうれしい野菜

ひき肉とひじきの袋煮

 栄養満点! しみじみおいしいお揚げ煮。

ひき肉とひじきの袋煮(撮影/廣瀬靖士)

材料/2人分
・鶏ひき肉……150g
・ひじき(乾燥)……小さじ2
・油揚げ……3枚
・ニラ……2本
・うずら卵の水煮……6個酒
 A[酒・片栗粉……各小さじ1、塩・こしょう……各少々]
 B[だし汁……300ml、しょうゆ・みりん・砂糖……各大さじ1]

【作り方】

(1)ひじきは水に15分ほどつけて戻し、ざるにあげて水けをきる。ニラは1cm長さに切る。油揚げは半分に切って袋状に開く。

(2)ボウルに鶏ひき肉、ひじき、ニラ、Aを入れて練り混ぜ、1/6量ずつ油揚げに詰める。うずら卵を1つずつ押し込み、つまようじで縫うように口をとめる。

(3)鍋にBを煮立たせ、(2)を入れる。落としぶたをして弱火にし、12分ほど煮る。つまようじを抜いて器に盛る。

《ここが筋力アップ》ひき肉と油揚げはもちろん、ひじきのカルシウム、ニラのビタミンK、うずら卵のビタミンD、すべての材料が筋力アップ食材!

ぶりと小松菜大豆のオイスター炒め

 うまみたっぷり中華炒めに大豆をプラス。

ぶりと小松菜 大豆のオイスター炒め(撮影/廣瀬靖士)

材料/2人分
・ぶりの切り身……2切れ
・小松菜……1袋(200g)
・蒸し大豆……1袋(50g)
・ごま油……大さじ1
 A[酒・片栗粉……各小さじ1、塩……小さじ1/4、こしょう……少々]
 B[オイスターソース・酒……各大さじ1、しょうゆ・砂糖……各小さじ1]

【作り方】

(1)ぶりはひと口大のそぎ切りにしてボウルに入れ、Aを加えてまぶす。小松菜は5cm長さのざく切りにする。Bは合わせておく。

(2)フライパンにごま油の半量を熱し、ぶりを中火で2分ほど焼く。焼き色がついたら返し、弱火にしてさらに2〜3分焼いて取り出す。

(3)フライパンをサッとふいて残りのごま油を熱し、小松菜を中火で炒める。しんなりしたら(2)を戻し、大豆、Bを加えてサッと炒め合わせる。

《ここが筋力アップ》これからが旬のぶりは、タンパク質(コラーゲン)、ビタミンDに加えて認知症予防に効果があるといわれるDHA・EPAも豊富

チンゲン菜とまいたけの梅納豆あえ

 ねばシャキ酸っぱいあえものをレンチンで。

チンゲン菜とまいたけの梅納豆あえ(撮影/廣瀬靖士)

材料/2人分
・チンゲン菜……1株
・まいたけ………1パック(100g)
・梅干し……1個
・納豆……1パック
・しょうゆ……大さじ1/2
・ごま油……大さじ1

【作り方】

(1)チンゲン菜は5cm長さに切る。まいたけは小房に分ける。梅干しは種を除いてたたく。

(2)耐熱皿にチンゲン菜、まいたけを入れてふんわりとラップをかけ、600Wの電子レンジで3分加熱する。あら熱がとれたら水けをきる。

(3)(2)をボウルに入れ、梅干し、納豆、しょうゆ、ごま油を加えてあえる。

切り干し大根とハムのミルク煮

 うまみを吸ったコリコリ大根がおいしい。

切り干し大根とハムのミルク煮(撮影/廣瀬靖士)

材料/2人分
・切り干し大根……20g
・ハム……2枚
・エリンギ……1/2パック(50g)
・オリーブオイル……小さじ1
・パセリのみじん切り……適量
 A[牛乳・水……各100ml、顆粒スープの素……小さじ1/2、塩・こしょう……各少々]

【作り方】

(1)切り干し大根は15分ほど水につけて戻し、水けを絞って食べやすい長さに切る。ハムは半分に切ってから1cm幅に切る。エリンギは長さを半分にして縦半分に切り、5mm幅の薄切りにする。

(2)鍋にオリーブオイルを熱し、中火で切り干し大根、エリンギを炒める。しんなりしたらハム、Aを加え、煮立ったら弱火にして、10分ほど煮る。器に盛り、パセリをふる。

しらすとわかめの卵スープ

 ふわふわ卵の“すぐでき“汁もの。

しらすとわかめの卵スープ(撮影/廣瀬靖士)

材料/2人分
・しらす……20g
・わかめ(乾燥)……大さじ1/2
・長ねぎ……1本
・溶き卵……1個分
・ごま油……小さじ1
・白いりごま……適量
 A[しょうゆ……小さじ1、顆粒鶏ガラスープの素……小さじ1、塩……小さじ1/4、 水……400ml]

【作り方】

(1)長ねぎは1cm幅の斜め切りにする。

(2)鍋にAを煮立てて、長ねぎ、しらす、わかめを入れて弱火にし、5〜6分煮る。火が通ったら溶き卵を回し入れ、ふんわり固まったらごま油を加える。盛りつけて白ごまをふる。

教えてくれたのは……新谷友里江さん●料理家・管理栄養士。2児の母。栄養バランスのとれた、作りやすくておいしい家庭料理レシピが好評。雑誌、書籍、テレビなど各種メディアで活躍中。近著に『コンテナですぐできレンチンひとり分ごはん』がある。
料理・レシピ/新谷友里江
撮影/廣瀬靖士
取材・文・スタイリング/加藤洋子
デザイン/黒田志麻