事件現場となった群馬県太田市にあるラーメン店『ばりきや太田店』

「ランチで外に出たら、ラーメン店のほうから“キャー!”と叫び声が聞こえて……。お客さんや従業員が一斉に駐車場のほうに逃げ出してきて、現場は騒然としていました」

 と現場近くの会社に勤務する目撃者はそう答えた。

 10月30日の午後12時10分ごろ、群馬県太田市にあるラーメン店『ばりきや太田店』で刺殺事件が発生した。

 男性客が「店長が刺されて厨房で倒れている」と110番通報。かけつけた群馬県警太田署員が、無職でかつて同店の従業員だった藤井翔平容疑者(31)を殺人未遂の現行犯で逮捕した。

 刺されたのは、同店店長の真下陽介さん(42)。病院へ搬送されたが、2時間半後に死亡。死因は胸や腹などを十数か所刺されたことによる失血死だった。

 冒頭の目撃者はこう話す。

「店から逃げ出していた人に何があったか聞いたけど、もう顔面蒼白で、答えられる状態じゃなかった。あんな顔は初めて見た。そのうち、警察官の“12時○○分、確保!”という声が店から聞こえてきた。“何やってんだ! 早く規制線を張れよ!”という怒鳴り声も」

 店前にはパトカーと覆面パトカー計7台、救急車2台が来ていたという。

店内満席の中、凶行に及んで…

「凶器の包丁は店のものではなく、藤井容疑者が用意したものでした。容疑者は昨年10月から今年3月まで同店で働いていたため、裏口に鍵がかかっていないことを知っていた。そこから侵入して、厨房にいた真下店長を刺したようです。事件当時は昼時で店内はほぼ満席。客約30人、従業員5人もいましたが、あまりに突然のことで誰も止められなかった」(全国紙社会部記者)

 亡くなった真下さんは、近隣の桐生市で両親と暮らしていた。愛息子を失った悲しみからか、父親は目元がくぼみ、無精ひげも生やしていた。記者が話しかけるも、

「申し訳ないです。(取材は)全部、お断りしています……」

 と小声で答えて弱々しくおじぎをするだけだった。

 近所の住民によると、真下さんは“背が高くてがっしりとした体格の優しい人だった”という。

「20数年前、両親と長男、そして次男の陽介さんが引っ越してこられた。そのとき陽介さんはまだ高校生で、両親に似て、よく挨拶してくれる、とても穏やかな方ですよ。高校を卒業後、どこかのラーメン店で修行をして、今の店の店長になったようですね。普通、従業員には厳しくしなければならない立場なんですが、陽介さんは絶対にそんなことはしないタイプ。恨みを買うような人ではないですよ」

 そんな店長を殺害した藤井翔平容疑者はどんな人物なのか。太田市にある自宅近辺で聞き込みをすると、

「小柄で色白、内気でおとなしく、外で遊ぶよりも家の中でひとりゲームをして遊ぶような子でした。母親がずっと病気で入退院を繰り返していたため、おばあちゃん子でしたね。きょうだいもおらず一人っ子だったため、本当におとなしいイメージしかなくて、あんな残忍なことをしたとは今でも信じられない」(近所の住民)

無口で友人もほとんどいなかった容疑者

 容疑者が10歳ぐらいのときに祖母が他界。だが、母親は病気がちで家におらず父親も会社勤めで忙しいため、農業をしていた祖父が容疑者の面倒をみるように。すると、

「無口で友人もほとんどいなくて、やはりひとりでゲームばかりしていた。中学校では卓球部に所属していましたが、レギュラーと補欠の境目。勉強もそれほど得意ではなく、まったく目立つ存在ではなかった」(小・中学校の同級生)

 容疑者の生活も変化したようで、

「祖父がしょっちゅうパチンコ店やゲームセンターに連れていって、遊ばせていた。孫とゲーセンで1日に7000円スったとか話していましたよ。そんな具合だから、友だちができないんですよ。高校になっても、祖父は“孫のスマホゲーム代は月8万円かかる”と言っていましたから。甘やかしすぎたんですよ」(別の近所の住民)

 その後、定職につかなかった容疑者は自宅近辺にあるコンビニの深夜アルバイトをしていたが、

「“すぐ辞めては別の店に行く”を繰り返していましたね。地元の成人式の集まりにも、参加しなかった」(別の同級生)

 祖父が所有していた農地が高く売れて大金が入ったことで孫への甘やかしに拍車がかかる。

「4年ほど前に祖父が翔平くんに軽自動車を買い与えていた。また資金援助を受けて、翔平くん(容疑者)は埼玉県熊谷市で独り暮らしをし始めたんです」(前出・近所の住民)

 理由は、容疑者の結婚だった。

「おじいさんは“オレの孫はモテるんだよ”と喜んでいて、引っ越しも手伝っていた。その際、“10万円渡した”とも」(同・前)

 ところが、2年前に祖父が他界。その頃には藤井容疑者も離婚していて、子どもが1人いたという話も。

『ばりきや太田店』は現在、休業中

 それから1年後、30歳を超えたばかりの藤井容疑者はラーメン店で勤務していたが、たった数か月で退職。またコンビニでアルバイトをしていたようだが……。

「結局、犯行直前にコンビニは辞めたようです。翔平くんはアルバイトを転々とする生活から抜け出すために、正社員採用を希望していた。ラーメン店でも正社員を目指していたんじゃないかな」(前出・近所の住民)

店長ではなく、ラーメン店を恨んでいた?

 店長への個人的な恨みではなく、正社員になる夢を断たれた同店への恨みだったのではないか。犯行時間をあえて客が多い日曜日の昼どきを選んだのも、犯罪をセンセーショナルなものにして同店へのダメージを狙ったとも考えられる。

 そこで同店の本社へ取材を申し込んでみるも、「この事件に関することは、受け付けておりません」とあっさり拒否。

 真相を知るべく、容疑者の自宅を訪ねた。そこには2年前、祖父が亡くなる直前に退院して家に戻った母親がいたものの、

「……何もお話しすることはありませんので……失礼いたします……」

 と答えるのみだった。

 藤井容疑者の動機の解明が待たれる。

 
祖父が藤井翔平容疑者に買い与えた軽自動車
 
藤井翔平容疑者はラーメン店の裏口から侵入して、厨房にいた店長を刺殺した

 

 

事件直後、騒然となったラーメン店の駐車場

 

『ばりきや太田店』の駐車場