現役薬剤師3人の覆面座談会の様子

 薬をもらい、支払いをすませたら、さっさと帰りたい……。

 薬局はそんなところだと思っていないだろうか。そんなあなたは知らず知らず、薬代のムダ遣いや、はた迷惑な行為を「やらかしている人」になっているかも? さらには薬による健康被害につながることもあるとか。

 ここでは3人の薬剤師が、薬局で見かける残念な患者について、ぶっちゃけ覆面座談会を開催! 最新の薬事法にもとづく“中の人”情報で、薬局でソンしない患者をめざそう。

一にも二にもお薬手帳を持参!

A子 薬局で損をしているいちばんの代表格は、何よりお薬手帳を持参しない人。

B美 そうそう、薬局で支払う金額には薬代のほかに調剤とかの手数料が含まれていて、お薬手帳があると、それが安くなることがほとんどなのに、持参しないで損をしている人が実に多い!

C恵 3割負担の場合、1回40円くらい安くなる。月2回なら一年で840円。ランチ1食分にも。

B美 それに、お薬手帳がないと、あちこちの病院で効用が同じ薬を処方されていてもチェックできない。その分の薬代はまったくの損!

A子 お金の損だけではすまない。薬を多くのみすぎると、副作用や身体に悪影響が出る心配がある。

C恵 ムダ金使って、不健康になったらダブルで損!

A子 一緒にのむと効果が落ちる薬ののみ合わせもある。

C恵 なのに、病院ごとにお薬手帳を分けている人がいて、それだと時系列でいつどんな薬をのんでいるのか、わかりにくくて困っちゃう。それじゃお薬手帳の意味がない!

A子 最近はアプリ版のお薬手帳もある。特に若い男性は何度言っても持たない人が多いけど、スマホのアプリもすすめていきたい。

一にも二にもお薬手帳を持参!(イラスト/高村あゆみ)

処方箋はまとめて出したほうが安い

B美 処方箋は、複数の病院や別の診療科のものでも、まとめて薬局に持ち込めば、調剤にかかる基本料が安くなる。

A子 2件目からの基本料が2割引きになるのはけっこう知られていない。薬局によって違うけど、3割負担で20円くらい安くすむ。

B美 ただし、処方箋には使用期限があるから、まとめて出したい場合は要注意。

A子 営業時間外に処方すると、時間外加算がつくのも落とし穴。状況によるけど、数百円になることも。理由もなく時間外に来局するのは損。

C恵 特に、今年10月からは、後期高齢者で医療費の負担が1割から2割になった人も少なくない。一気に倍! ばかにならない。

ジェネリックを全否定するのも損!

C恵 薬代を安くすませるなら、同じ効果で価格が安い後発製品「ジェネリック薬」の利用がいちばん。

A子 でも、最近ジェネリック薬メーカーの不祥事が大きく報道されてから、「絶対拒否!」という患者さんが増えた気がする。

B美 特に小さいお子さんを持つお母さんはナーバス。子育てに熱心なママほど過剰反応しちゃうのかも。

C恵 うーん、心配になるのはわかるけど、あくまでも一部のメーカーの話。ジェネリックのほうが、風味を工夫したり、飲みやすくなっているものもあるし。

B美 不安な人や、毎回なんとなく同じ薬を処方されている人は、一度薬剤師に問い合わせるのがおすすめ。

“薬を飲んだふり”は財布にも身体にも×

B美 薬は決められた量とタイミングでのむのが基本だけど、のみ忘れなどで余った薬がある場合は、医師や薬剤師に伝えてもらって調整を。支払い額を減らせるチャンス。

C恵 ある患者さんなんて、家にある余った薬をかき集めたら、金額が万単位になったそう。

B美 わっ、それはすごい! 高価な薬もあるしねえ。

A子 いちばん困るのは、薬をきちんとのんでいないのに、医師にも薬剤師にも「のんでいます」と言っちゃう人。「怒られると思ったから」とかいって(苦笑)。気持ちはわかるけど、それじゃ薬代がムダになるだけでなく、健康面での悪影響が心配。

B美 医師は血液や尿、血圧など検査結果を見ながら薬を調整していますからね。のんでないのに、のんだとウソを伝えると、効いていないと判断されて量を増やされてしまうこともある。

A子 例えば降圧剤を増やされちゃって、血圧が下がりすぎると、高齢者は昏倒しやすくなったりして危険!

C恵 なかには、ネットで副作用を調べて、自己判断でのまない人もいる。こちらからいろいろ説明しても、「ネットにこう書いてあるぞ」と強硬に論破しようとする人もいて、いやんなっちゃう(泣)。

「急いでやって」は絶対NG

B美 薬局をお得に活用するには、まず薬剤師の役割をわかってもらうことから。

A子 たしかに。まず薬剤師はただ処方箋どおりに薬を渡すのではなく、患者さんの話を聞いて、処方薬を確認する役割があります。必要に応じて医師に確認するのも重要な仕事のひとつだし。

C恵 医師がうっかり処方を間違えてることも、けっこうある!

B美 常用してる薬が抜けてたり、同じ薬でも5mg錠と10mg錠を間違えてるとかね。

A子 それもあるから薬剤師は、窓口で薬をお渡しするときに、前と処方が違う場合は、理由を確認したいんですよ。ですから患者さんには、症状や診察の経緯、検査結果などを、薬剤師に簡単にでも伝えてもらいたい。おひとりおひとりに合った、より的確な対応ができますから。

B美 服用歴の確認や、医師への問い合わせには時間がかかるので、どうか薬局には時間に余裕を持って来てほしい!混むと長くお待たせすることになって、申し訳ないのですが、マンパワーは限られているので……(汗)。

C恵「あのバスに乗るから急いでくれ」とか、大声出す人もいるけど、事情をわかってもらいたいわ(ため息)。

B美 服用した市販の薬やサプリメントもお薬手帳に書いてもらうと服用歴の確認がしやすい。同じ効用の薬やサプリが病院から処方されていることもあるから、何よりムダな出費も抑えられるし。

C恵 さらにおすすめなのは、家族で同じ薬局を利用すること。家族はアレルギーなど共通した傾向を持っていることがあるので、注意喚起することもできる。

A子 3か月以内なら同じ薬局を使ったほうがお薬手帳持参で支払いが安くなるし、なじみの薬剤師がいれば、相談もしやすいんじゃない? 同じ薬局に通うのは、いろいろな面でお得なのは間違いない。

C恵 お医者さんに言いにくいことも、ぜひ薬剤師を頼ってほしいですからね。今はかかりつけ薬剤師の制度もあるので、検討してみてもいいと思う。

「急いでやって」は絶対NG(イラスト/高村あゆみ)

かかりつけ薬剤師を上手に活用して!

「かかりつけ薬剤師」とは、ひとりの患者にひとりの薬剤師が、薬による治療について相談できる仕組み。資格のある薬剤師を、患者が選んで依頼、契約する。

 休日や夜間も相談に対応してもらえるなどメリットも多いが、3割負担で薬局での1回の負担額が60円または100円増える。

 ただし、あまり行かない薬局で契約してしまうと、相談できる機会も少なく、契約料に見合う恩恵を受けられないこともあるとか。継続的に利用する薬局を選んで、上手に健康管理に役立てたい。

【トクする!薬局活用法4選】
(1)お薬手帳を持参する
(2)処方箋はまとめて出す
(3)同じ薬局を続けて利用する
(4)薬剤師としっかりコミュニケーションをとる

本音トークしてくれた現役薬剤師

 ・A子さん(40代)
  大手ドラッグチェーン社員「お薬手帳がない人!損してますよー」

大手ドラッグチェーン社員「お薬手帳がない人!損してますよー」(イラスト/高村あゆみ)

 ・B美さん(30代)
  調剤薬局パート「処方箋は使いようで節約できます!」

 

調剤薬局パート「処方箋は使いようで節約できます!」(イラスト/高村あゆみ)

 ・C恵さん(30代)
  調剤薬局薬局長「市販薬の相談もOK。お得な情報ありマス!」

 

調剤薬局薬局長「市販薬の相談もOK。お得な情報ありマス!」(イラスト/高村あゆみ)

(取材・文/志賀桂子)