木村仁容疑者(左)と仲本工事さん(容疑者SNSより)

「俺はフェラーリとかポルシェに乗っているんだって、よく自慢していました」

 とある飲食店の常連客が、“ある男”について語り始める。

「それが木村仁(じん)という男です。テレビのニュースを見ていたら、木村が警察に連行される映像が流れたのでビックリしました。報道によると、木村は今年6月に都内を車で運転中、自転車に追突したのに現場から逃走する“ひき逃げ事件”を起こしていたんです。しかも20年以上も無免許運転だったようで、11月4日に逮捕されたことが報じられました。木村は“あの店”にしょっちゅう来ていたから、よく知っているんです」(常連客の男性)

“あの店”とは、10月に亡くなった仲本工事さんが経営する東京・目黒区にある飲食店のこと。木村容疑者は、毎週のように仲本さんの店を訪れていたという。

「仲本さんの店がオープンした翌年の2016年ぐらいから、木村は週1の頻度で来ていました。酒は全然飲めないのに羽振りはよくって“この餃子、食べてください。コーラも飲みますか?”という感じで、仲本さんやほかの客に自分が注文した料理を振る舞っていました。あの店には芸能人が来ることもあるのですが、その芸能人にお酒を奢って一緒に写真を撮っては、数千円のチップを渡すんです。イベント会社を経営していると言って、周囲に自分のことを“社長”と呼ばせていました。見栄っ張りだけど、お金はあるんだと思っていたのですが……」(同・常連客)

 この話を聞けば“カネ払いのいい上客”という印象もあるが、どうにも違和感のある話も。

俺はイベンターだから顔が効く

「“俺はイベンターで顔が効くから、友だちの芸能人のコンサートに行こう、楽屋にも入れるから”と、店でお客さんに話すんです。好きな芸能人に会えるならと楽しみにして行くと、チケット代は1万円か2万円のはずなのに、3万円を要求された人もいて。楽屋に入るのもコネがあるわけではなくて、木村が主催者に“今後もチケットを20~30枚買ってやるから楽屋に入れろ”と交渉していたようです」(同・前)

 蓋を開ければ業界の“コネ”でもなんでもないようだ。

 木村容疑者の“被害”に遭った人は、ほかにも。

「昨年のことです。私が新しく事業を始めようとしていた時期で、それにはちょっと資金面で不安かなと思っていたところでした。そこに都内の飲食店で知り合った木村から“お金は貯めておくだけじゃダメだよ。投資しない? 俺は何回もやってるから大丈夫”と言われて……」

 そう話すのは、30代の女性。話を続ける。

「プライベートでも、少し精神的につらいタイミングだったこともあって、甘い言葉に惑わされてしまいました。木村の口車に乗って100万円ほど預けてしまったんです。

 後から我に返って、木村を知る人に話を聞くと、お金が返ってきていない人がたくさんいて……。私の知る限りでは7人は被害に遭っており、最高で400万円を預けていた人も。木村を問い詰めても、のらりくらりで……」(30代女性)

 ひき逃げ事件から、思わぬ方向に話が広がっていく。

芸能人にコッソリお金を渡していた

「最初に木村に会ったときは“不動産の仕事をしている”と言っていました。そしてスマホを取り出して、いろいろな芸能人とのツーショット写真を見せてきて“全員友だちなんだ”って言うんです。写真には千葉真一さんや坂本冬美さん、高木ブーさんもいました。実際に芸能人と一緒に飲むこともあったようですが、どうも芸能人を呼ぶために自分でお金を払っていたみたいで……。あるとき、連れてきた芸能人に、コッソリお金を渡しているのを見たことがありますから」(同・女性)

石田純一(左)と木村仁容疑者(容疑者SNSより)

 たしかに、木村容疑者のSNSを見ると、さまざまな芸能人とのツーショットが並んでいた。加藤茶石田純一、2020年に亡くなった岡江久美子さんまで。自分を大きく見せる小細工は、これだけではない。木村容疑者を知る、都内で飲食店を営む男性が明かす。

「ある飲み屋で木村に会ったとき、“今日は運転手付きのロールスロイスで来た”と話すんです。運転手付きロールスロイスなんて、志村けんさんじゃないんだから……。にわかには信じられなくて、木村が連れていた女の子と店を出たのをコッソリつけてみたんです。そうしたら、女の子を駅に送った後、電車に乗って帰っていきました(笑)」

仲本工事さん・純歌夫妻と木村仁容疑者(容疑者SNSより)

 木村が“常連”だった、仲本さんの居酒屋に連れて行ってもらったという20代の女性も、こう証言する。

「SNSの写真では、仲本さんと仲よさそうに写っていますが、実際に仲本さんと会うと、少し距離感がある気がして……。本当に仲がいいのか疑問に感じました。木村は自分の誕生日に、ご存命だった千葉真一さんを呼んで都内の飲食店でパーティーを開いたこともありましたが、その飲食代は木村が払っていました。自分の誕生日パーティーなのに(笑)。千葉さんにもお金を払っていたんじゃないかな。結局のところ、お金のつながりだけなのでしょうが、“本当に有名人と知り合いなんだ”と騙されてしまう人もいたと思います」

 なぜ、そこまでして偽るようになったのか。20代の女性は木村容疑者からこんな話を聞いたと続ける。

「“オレは学生時代にいじめられていたんだけど、同窓会に高級車を乗り付けて、見返してやった”と話したことがありました。強いコンプレックスがあったんでしょう。けど、実際に木村の車に乗ったという女の子は“普通の車だった”と話していました。また、木村から家に来るように誘われたこともありましたが“菅義偉もオレの家に来る”と言われたときは笑ってしまいました。当時は現役の総理大臣だったので、どう考えてもありえない話ですから。まぁ、当日になると毎回“先方の都合が悪くなって来れなくなった”と言うんです。

「もちろん、誘いはすべてお断りしました」

 木村容疑者のSNSには、仲本さんとの仲睦まじいツーショットと一緒に《気心知れてるっていいよねー》と綴られた投稿もあった。

純歌さんとは仲がよかった

 木村容疑者にとっては“拠り所”だったのだろうが、仲本さんはそうは思っていなかった。仲本さんの知人は、こんな様子を覚えている。

「木村は、仲本さんの妻である純歌さんとは仲がよかった。純歌さんは、木村にいろいろ相談していたこともあったみたい。だけど仲本さんは、そんな彼女を心配していて“あんな得体の知れないヤツは危ない。きっと詐欺師だから気をつけろ”って、純歌さんや常連客に言っていました。とはいえ毎週のように来て数千円から1万円ほど使っていくので、仲本さんも強くは言えなかったみたいです」

 木村容疑者のSNSは、ひき逃げ容疑で逮捕される直前まで更新されていた。

「最後の投稿は10月20日で、仲本さんが亡くなったことを悼む内容でした」(前出・30代女性)

 木村容疑者が綴っていた仲本さんへの思いは、どこまでが本当だったのか――。