医師もやってる寿命のばす入浴テク(※画像はイメージです)

 11月26日は「いい風呂の日」。あいかわらずのサウナブームの一方で入浴の健康効果が見直されている。最新研究に基づく「正しい入浴ノウハウ」をお風呂大好き医師が教えてくれた。

高血圧も糖尿病も毎日の入浴で予防

 世界一の長寿国、日本。その秘訣が「毎日の入浴にある」と語るのは東京都市大学人間科学部教授で、温泉療法専門医の早坂信哉先生だ。

千葉大学と私たちのチームが共同で行った最新の調査では、毎日、湯船に入る人は、週0~2回の人に比べて、寝たきりにつながる要介護リスクが約3割も減少することがわかりました」(早坂先生、以下同)

毎日の入浴で寝たきりリスク減少!

 肩までお湯につかる全身浴の健康効果は科学的に証明されているのだ。

「全身浴で効率よく身体が温まると血管が拡張し、さらに水圧によるマッサージ効果で血流がよくなります。これらの作用はシャワーや半身浴では得られないもの。毎日の入浴習慣で血管自体が柔らかくしなやかになって動脈硬化を防ぎ、要介護を招く心筋梗塞や脳卒中など、多くの病気を予防できます

 お風呂は高血圧や糖尿病の予防、要介護につながる身体の痛みを和らげる効果もあると早坂先生。

「入浴すると代謝が上がって軽い散歩程度のカロリーが消費されて血糖値が下がり、血管が拡張して血圧も下がります。また、筋肉が温まって肩こりや腰痛などの痛みが軽減する効果も」

 さらに、心の健康にも効くという。全身浴をするとストレスホルモンのコルチゾールが減り、幸福ホルモンのオキシトシンが増えるのだ。

「ある調査では、毎日お風呂に入る人のうち、幸福度の高い人は54%、低い人は46%という結果が出ました。幸福を感じる理由はさまざまですが、ストレスを減らしてリラックスに導いてくれることは確かです」

命を危険にさらす危ない入浴法とは?

 たくさんの健康効果が期待できる全身浴だが、間違った入り方をすると効果が得られないばかりか、命に関わる危険があると早坂先生。

健康効果を最大限得るには、40度の湯温で10分間の入浴が最適です。42度以上になると、ヒートショックや熱中症のリスクを高めます。ヒートショックとは、気温が下がる冬などに、居間と、脱衣所や浴室との温度差で血圧が急変動し、心筋梗塞や脳卒中、失神を引き起こすこと。ヒートショックを防ぐには、室温差を5度以内にすることが大切です。脱衣所を暖めたり、お風呂場はあらかじめ湯船やシャワーの蒸気などで暖めておくのがおすすめです

 特に動脈硬化が進みやすい高齢の人や、高血圧や糖尿病などの生活習慣病がある人はヒートショックの危険が高まるため注意が必要だ。

「入浴前の血圧が上が160以上、下が100以上あるときは、事故の危険が高まるため入浴は避けてください。また、長風呂も熱中症の原因になります。特に高齢になると熱さやのぼせを感じにくくなるため、10分を守ること」

 高齢でなくても、42度以上だと交感神経が優位になって興奮状態になり、リラックスや入眠を妨げてしまう。熱い湯に入りたくなる冬こそ、保温効果の高い入浴剤などを利用して、湯温と時間を守りたい。

入浴剤を上手に使って健康・美肌効果をアップ

 40度10分という目安は、実はお風呂の美肌効果にも欠かせないという。

血流がよくなると肌のターンオーバーが促され、コラーゲンを生み出す細胞が活発に働いて、シワ予防や肌のハリが期待できます。しかし、40度以上の熱い湯や長時間の入浴は、肌表面にある潤い成分のセラミドを流出しやすくさせ、肌乾燥を招くので要注意です」

 乾燥を防ぐには、保湿成分入りの入浴剤や浴室内での保湿を目的としたインバス化粧品の活用もおすすめだ。

女性などで肌乾燥が気になる場合は、ホホバ油やグリセリンなどの保湿成分がプラスされたスキンケア系の入浴剤が有効です。特にホホバの種子から採れるホホバ油は保湿効果が高い。インバス化粧品には化粧水やクリームなど、いろいろ種類がありますが、特にオイルタイプで保湿成分のセラミドが配合されたものだと肌乾燥の予防効果がより期待できます」

 入浴剤は保湿以外にも健康効果がさまざまあるため、好みや目的でお気に入りのものを探したい。

保温や血流促進効果がメインの『無機塩類系』や『生薬系』、血管拡張効果のある『炭酸ガス系』などが代表的。温泉成分を抽出した薬用入浴剤も人気があります。どれも効果がありますが、私は高濃度炭酸ガスが入ったバスクリンの『きき湯』を愛用中。粒が小さく、すぐ溶けるので気に入っています。お気に入りの入浴剤を使うとリラックス効果もアップするので、ぜひ見つけてみてください」

健康美肌に導く入浴ポイント4つ

1. 湯温は40度以下、入浴時間は10分

湯温は40度以下、入浴時間は10分(イラスト/伊藤和人)

 入浴中はセラミドが流出しやすくなるため、必要以上の熱い湯や長時間の入浴は避ける。

2. 肌は素手でなでるように優しく洗う

肌は素手でなでるように優しく洗う(イラスト/伊藤和人)

 肌表面にある角質層が剥がれると肌乾燥の原因になるため。ボディソープもセラミドの流出を加速させるので少量に。

3. 入浴後10分以内に保湿する

入浴後10分以内に保湿する(イラスト/伊藤和人)

 セラミドが減っている入浴後は肌乾燥が起こりやすいため、お風呂を出てから10分以内に全身を保湿する。

4. 保湿効果の高い入浴剤を使う

保湿効果の高い入浴剤を使う(イラスト/伊藤和人)

 セラミドの流出をできるだけ防ぐため、ホホバオイルなど保湿成分の入った入浴剤を活用する。

知っておくべきサウナのリスク

 入浴といえば、最近注目されているのがサウナだ。熱いサウナと冷たい水風呂に交互に入ることで、血流改善や疲労回復が期待できるが、極端な入り方は健康を害するおそれがあるという。

「サウナで温めて広がった血管が、冷たい水風呂で一気に収縮するとポンプの原理で血流が促進されます。しかし血管や心臓に強い負荷がかかるため、心筋梗塞などの病気が増える50代以降はリスクが高まります。また、若い世代でも不整脈の危険性があり、要注意です

 さらに温冷交代浴で得られる「ととのう」と呼ばれる快感も、身体にいい効果ではない可能性がある。

「身体に強い負荷が加わると痛みを抑えるため、脳内麻薬ホルモンのβエンドルフィンが分泌されて快感を感じます。ランナーズハイなどがこの状態。極端な温冷交代浴でも同じ現象が起きているのでは」

 急激な血圧の変動で一時的に脳内に虚血が起き、頭がボーッとすることもあるという。

「負荷の強い温冷交代浴は危険を伴うので注意が必要。手足の先に水を軽くかけるだけでも効果は得られるので、無理のない範囲で楽しみましょう」

 わざわざサウナに行かずとも、日本には自宅に最高の健康効果が得られるお風呂がある。ぜひ、有効活用したい。

教えてくれた人は早坂信哉さん

東京都市大学人間科学部長・教授の早坂信哉さん

 東京都市大学人間科学部長・教授。温泉療法専門医、博士(医学)。20年にわたり3万人以上の入浴を調査した、入浴や温泉に関する医学的研究の第一人者。著書に『おうち時間を快適に過ごす 入浴は究極の疲労回復術』(山と溪谷社)など。

<取材・文/井上真規子>

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【出演】
TK(芸能記者)
あっきー(芸能記者)

【パーソナリティ】
八木志芳(ラジオDJ)

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