滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)/'76年生まれ。'98年に西堀亮とお笑いコンビ『マシンガンズ』結成。'12年よりゴミ清掃員としても活動。著書に『ゴミ清掃員の日常』、『ごみ育』など多数

「どうも、マシンガンズのたきずぁ……」

 お笑いコンビ『マシンガンズ』の滝沢秀一。

「ゴミ清掃員なんで、芸人としての滑舌は全然回ってませんね(笑)」

清掃車の火災は年間で約500台

 『M-1グランプリ』では準決勝に2度進出するなど“期待のお笑いコンビ”であったが、現在は「ゴミ清掃員が本業で芸人は副業」と本人が語るほど、ゴミ清掃員の仕事に軸足を置いている。

 芸人としての活動と並行して、ゴミ清掃員となったのは'12年のこと。妻の出産費用を確保するためだった。現在まで続く“本業”での活動が評価され、環境省により『サステナビリティ広報大使』に任命されている。そんな彼が語る、“ここ最近増えている、危険なゴミ”の話……。

「ゴミ清掃車が炎上したと聞くと、だいたい原因は『リチウムイオン電池』。いつか死人が出るんじゃないかと思っています」(滝沢、以下同)

 リチウムイオン電池は、携帯電話・スマホ、パソコンのバッテリーなどに使われている。外部から強い圧迫や衝撃を与えると発煙・発火することがある。

「その場ですぐ火が出たら自分たちで処理できますが、数十分後に発火することも。また、瞬間的に火が出て終わりじゃなくて燃え続ける。それがまわりに引火したり……」

 スマホのモバイルバッテリーもリチウムイオン電池が使用されている。電池はプラスチックで覆われたものが多い。

「“プラスチックはうちの地域は可燃ゴミだからそっちに入れよう”という人も多い。僕自身、清掃車に入れる前に何度も取り出して、別に回収したことがあります。今はゴミの焼却炉も高性能になっていて、“なんでも燃えるだろう”“このくらいのもの、いいだろう”って捨てる人がいるので……」

 全国的に起こっているという清掃車の火災。

「年間で500台くらい清掃車の火災は起こっています」

 そのすべての原因がリチウムイオン電池ではないだろうが、滝沢が近年、見聞きしてきた原因はそれだ。

「燃えたら清掃車の配線がダメになるんで廃車になっちゃうんです。1台1000万円くらいする新たな清掃車を買わなくちゃならない」

 燃えるのは清掃車だけではない。

ゴミから包丁が飛び出したことも

「不燃ゴミの処理場で燃えたという話も聞きます。その発火の原因もだいたいがリチウムイオン電池だそうです」

 実際に処理場でリチウムイオン電池が原因と思われる火災が発生し、重大な被害を生んでいる。復旧には巨額の費用がかかる。三重県伊賀市の処理場で15億円、愛知県稲沢市の処理場では18億円を超える費用がかかっている。

「アメリカではリチウムイオン電池を使った商品は、“使い終わったらこの封筒に入れて送ってください”という『回収システム』があります。日本はまだないんですよね。僕は作ったメーカーが回収すべきだと思います。リチウムイオン電池の捨て方は自治体によって違います。“捨てられません。メーカーに問い合わせてください”とする自治体もあります」

 リチウムイオン電池の処理について発火・炎上の危険性があるなか、メーカーは自治体に任せ、自治体はメーカーに任せているのが実情だ。

「コンビニで回収するシステムを作るなど、きちんと処理する方法はあると思います」

実際に発火したリチウムイオン電池。モバイルバッテリーなど

 ゴミ清掃員として、リチウムイオン電池を捨てる人についてお願いしたいことは?

「リチウムイオン電池によって火災が起こる危険性があることを、まず“知る”ことが大事だと思います。リチウムイオン電池の処理は自治体によって違うので、捨て方はそれぞれの自治体に確認してもらえたらと思います」

 清掃員にとって“危険”なゴミはリチウムイオン電池だけではない。ここからは滝沢自身が体験した危険ゴミについて……。

「不燃ゴミで出された『包丁』が飛び出してきて、持ち手のほうがこちらに向いて落ちてきたから助かったけど、逆だったら貫通してましたね……

 また別の意味で怖いものも。

古紙の回収から70万円が

「牛乳パックを回収しようとしたら先輩に“触るな!”って言われて。理由を聞くと、いわゆる人間の“小”が入ってると……。毎回そうやって出すらしくて。トイレに行ってくれればいいのに……。怖くて謎だったのは電子レンジ。なぜか中に土が詰まっていました」

 いちばん重かったゴミは?

「大きくて重かったのは『大理石のテーブル』ですね。粗大ゴミで出たんですけど、大人3人でどうにか持ち上げられました。家の中からどうやって出したんだろう(笑)」
大量だったゴミは?

「大量で、かつ怖かったのが『こけし』、あと『注射器』ですね。こけしは呪われたりしないかと……。注射器は糖尿病の治療などでしょうか……。おばあちゃんが大量の『電動マッサージ器』を捨てていたのもありました(笑)」

実際に滝沢さんが回収したあまりに大量のこけしゴミ

 いちばん高かったゴミは?

古紙の回収で、『へそくり』が挟まっていることはわりとあって、僕が聞いたのでいちばん高かったのは70万円というのがありましたね。お金は事務所に報告して処理します。銀行の明細もありました。パッと見たら預金が数千万円ってあって。こんな金額貯められる人の捨て方じゃないだろって思いましたね」

 お金持ちはゴミが少ない。きちんと分別されているといわれる。このようにゴミからは“人”が見えるという。

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「きれいに分別されたゴミから出てくるテスト用紙の点数は高い、もしくはテスト用紙が出てこないそうです。捨てるにしてもちゃんとシュレッダーにかけているからです。逆に分別されていないゴミから出てくるテストの点数は低いっていいますね。こないだウチの子どもは35点取ってきましたけど(笑)」

 清掃員としてゴミを捨てる人に対して思うことは─。

「ゴミの捨て方は地域によって違うし、多くの人はゴミについて学んだことがないから、みんな捨て方が独自ルールなんです。まずゴミというものは正しくはどう処理すべきかを知ってもらいたいですね」

 ゴミは燃やしても消えてなくなるわけではない。灰になって最終処理場にたまる。

「今、処理場はパンパンになりつつあって、日本全体で約22年後に“ゴミが捨てられなくなる”といわれています。だからこそゴミはどう捨てればいいのか、またどうするとゴミを少なくできるのか、みんなが考えなくてはならない問題だと思います」

 

 

料理がそのままゴミで出されることも。そのまま捨てられたカレーも

 

実際に滝沢さんが回収したあまりに大量のこけしゴミ

 

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