森保一監督

 サッカー日本代表の歴史的“大金星”だ。ワールドカップ(以下、W杯)カタール大会で強豪がひしめく“死のグループE”にて、初戦のドイツ戦に2対1で勝利し、見事に勝ち点3を手にしたのだ。

「2大会連続の決勝トーナメント進出にグッと近づきました!」と興奮するのはスポーツ紙・サッカー担当記者。

「親善試合でもないW杯の本気舞台でドイツに勝ったという事実が、日本代表の真の強さを物語っています。かつて代表を牽引した中田英寿や本田圭佑といった絶対的大黒柱がいないとされる現代表ですが、選手、監督を含めたチーム全員が一丸となって勝ち取った試合でした。

 特に就任当初より、戦術や采配をめぐって批判の的となっていた森保一監督には、ネット上で早くも“ごめんなさい”の大合唱が起きていますよ(笑)」

 同点ゴールを決めた堂安律選手、その攻撃の起点となった三苫薫選手と南野拓実選手。そして値千金の決勝ゴールを決めた浅野選手と、“ドーハの奇跡”を演出したのは、森保監督が後半から送り出した“リザーブ”選手たち。

「森保さんも28年前に“ドーハの悲劇”のピッチにいた、カタールの地は特別な思いを持っている1人。まるで、当時のキャプテンだったラモス瑠偉さんが常日頃口にしていた“気持ち”を入れられたように、後半に入って選手の動きがグッと良くなった印象。

 おそらくは前半終了後のロッカールームで、森保監督が選手たちにゲキを飛ばしたのでしょう」(前出・記者)

ハーフタイムに突然の監督インタビュー

 そんなハーフタイムの終了間際、テレビにて試合を見ていたサッカーファン、並びに視聴者を驚かせる出来事が起きた。まだ試合の途中だというのに、選手たちが後半のピッチに駆け出している最中に、突如として森保監督のインタビューが始まったのだ。

【選手たちは粘り強く戦ってくれました。PKの失点は痛かったですけど、ある程度相手に押される事も想定しながら、我慢強く戦うということ。ビハインドを負っても、この状態を崩壊することなく、キープしようと戦ってきている。選手たちはプラン通りに戦ってくれています。もう1度相手の戦いを止めながら、前半同様のチャンスがくると思いますので、チャンスの時に決めきれるように準備して、選手たちに粘り強く戦ってほしいと思います】

 するとSNS上には《ハーフタイムに監督インタビューなんて初めて見た》との困惑の声とともに、《そんなことに応じてるほど余裕ないだろと思うが》《終わってからやればいいのに 大事なミーティング時間だろうに》と、試合の途中で、しかもビハインドを追っている中での監督インタビューに懐疑的な意見も向けられた。

 地上波でドイツ戦を中継していたのは、この大一番を含めたW杯21試合の放送権を獲得しているNHKだ。

 Jリーグを含めたサッカー事情に詳しいスポーツジャーナリストによると、「実はNHKが中継するJリーグの試合では、ハーフタイムに両監督のインタビューが行われることもあります」とのこと。NHKのサッカー中継では“通常運転”なのだとか。

円陣を終えると急いでインタビュー室へ

 多くの視聴者にとって見慣れない光景に思えたハーフタイムでの監督インタビューは、試合後の監督や選手のインタビューも含めて、視聴者サービスの一環として織り込み済みのようだ。

「日本サッカー協会としてもサービス向上のため、Jリーグでのインタビューを通じて監督や選手の“生の声”をサポーターに届けることに注力し、CMがないNHKとしても“間”を繋ぐ演出として重宝していると言います。でも、まさか日本代表戦、しかもW杯の大舞台でも実行するとは思いませんでした。さすがにNHKともども、ちょっと空気が読めないというか、空回りした印象を受けますね(苦笑)。

 ハーフタイムのミーティング後は監督や選手、チームスタッフ全員で円陣を組んで声出し、タッチを交わしてピッチに向かうのが日本代表のルーティン。本来ならば監督はコーチ陣と最終確認、そして審判ともコミュニケーションがとれる重要な時間でもありますが、森保さんは円陣後に急いでインタビュールームに向かったのでしょうか」(前出・ジャーナリスト)

 結果としては、歴史的勝利という最大のファンサービスで視聴者を喜ばせた森保JAPANだが、仮に負けていたとしたら、監督に、そしてチームにも批判の矛先が向きそうな行為にも思えるが……。

 また、同ジャーナリストは「NHKとして独自の演出がほしかった、という狙いもあったのだと思います」と続ける。

 ビデオリサーチ社の調べによると、ドイツ戦の世帯平均視聴率は平均35.3%、個人視聴率は22.1%(ともに関東地区)であることがわかった。かつて40%以上は当たり前で、NHKの中継ではフランス大会(1998年)のクロアチア戦で60.9%を記録したこともある日本代表戦。

10%の視聴率がNHKからABEMAに

 テレビ離れが囁かれる昨今においてで35%は上出来と言えるが、そう楽観視できない現実も迫っているようだ。今回のW杯は、NHKや各民放による地上波放送と並行して、インターネットテレビ『ABEMA』でも全試合無料で配信されている。

「ABEMAで解説を担当したのは元日本代表の本田圭佑で、その“解説ぶりが的確すぎる”とネットで話題になっていますし、何よりも若い世代は普段から馴染みのあるネットで視聴していたと考えられます。この日のABEMAは、同サービスで史上最高となる1000万人を超える視聴者数を記録。

 単純計算すると10%近くの視聴率がNHKからABEMAに流れたことを示し、ネットテレビで視聴する世帯が増えていくことも物語っています。そんな事情もあるだけに、多少の強引な手段になったとしても、NHKでしか見られないような、局のカラーを出せる監督インタビュー“演出”を押し込みたい狙いがあったのでは?」(同・ジャーナリスト)

 12月31日に放送されるNHK紅白歌合戦には、同局のサッカーテーマ曲『Stardom』を歌うKing Gnuも出場する。日本代表の結果次第では、ワールドカップをイメージした派手な演出がなされ、さらには森保監督のゲスト出演もありそうだ。

 
ネットで拡散されている、11月23日の「日本対ドイツ」終了後の渋谷スクランブル交差点の動画

 

 

ネットで拡散されている、11月23日の「日本対ドイツ」終了後の渋谷スクランブル交差点の動画。信号が赤になってもーー
日本サッカー協会会長の田嶋幸三氏

 

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