事件が起きた福岡県飯塚市の団地

「子どもの虐待は初めてかもしれんけど、奥さんへのDVはしょっちゅうで、この団地では有名。酒浸りのヒモやっけん、どげんしようもなか男ですよ」

 容疑者が住んでいた福岡県飯塚市の団地住民は、そう吐き捨てた。

 福岡県警飯塚署は11月27日、自称派遣社員の新枦隼人容疑者(35)を暴行の疑いで逮捕した。前日の26日午後11時15分ごろ、自宅で長男(当時2)の頬を手の平で1回、殴打するなどの暴行を加えたというもの。

2歳児を平手打ちして、床に倒れると…

「手の平で叩いたあと、床に倒れた長男を転がして、壁にぶつけた。その様子を目の当たりにした妻が“子どもに暴力を振るっている”と110番通報。幸いにも、子どもに特に怪我はなかったのだが、駆けつけた警察が任意同行を求めると、酒を飲んでいた容疑者は“なんで行かんといかんのか?”などとかなり抵抗したようです」(全国紙社会部記者)

 新枦容疑者は警察の取り調べに対しても、

「叩いたり転がしたりはしたが、コミュニケーションの一貫やった」

 と容疑を一部否認しているというが……。可愛い盛りの愛息子にこんなひどい仕打ちをした容疑者とは、いったいどんな人物なのか。

 新枦容疑者は、筑豊地方(福岡県の中央部)で生まれる。幼いころに両親が離婚して、その後4人の子どもを連れた母親は父親がわりの男性と一緒に暮らすのだが、

「隼人くんは10代のころから酒を飲みよったとよ。同居の男が酒場によく連れていって飲ませたのが、癖になってしもうた。彼は金銭的には十分なものを与えたが、母親とともに忙しすぎて、十分な愛情を注げなかったのが悪かったのかも」(実家の近隣住民)

 中学校時代には、暴力事件を起こしたようで、

「気にくわん先生を殴ってしまって、少年院送りになった」(中学校の同級生)

 その後、容疑者は10代で結婚。3人の子どもをもうけたが、20代半ばで離婚。

「離婚の原因は、妻への暴力だったと聞いとるけどね」(容疑者の知人)

 4年ほど前、現在の妻と出会って、3年前から半同居の状態に。自宅を訪ねると、妻A子さんが取材に答えてくれた。

新枦隼人容疑者(関係者より提供)

 もともと結婚しておらず、内縁の関係だという。

「彼とは今後、二度と会うことはしません。私の連れ子である中学生の長女も賛成してくれとるから。これまで、私が殴られる分にはなんとか我慢できたんですけど、子どもへの暴力は絶対に許せませんからね」

 事件当日は来客があり、酒を飲んでいた新枦容疑者は、長男を抱いて無理やり寝かしつけようとした。

「ところが、長男が嫌がったため、それが気に入らず、暴力を振るったんだと思います」(妻、以下同)

 子どもへの暴力は初めてだったが、妻への暴行は今年だけで11回もあり、すべて警察を呼んでいるという。

暴力から逃げるために2階から飛び降りて骨折

「2月には私の父親がいる前で暴力を振るい、逮捕されました。でも、本人は“反省しとる”というので、結局は私が被害届けを取り下げてしまいました。6月には団地の廊下で腕を掴まれて、引きずり回された。彼の暴力から逃げるため、2階から飛び降りて、尾てい骨を折ってしまったこともありました」

 それほどひどい夫なのに、なぜ別れなかったのか?

「バカと言われるかもしれないですが、何度も別れたけど、そのたびに謝ってきたので、許してしまいました。出会ったころは長女ともよく遊んでくれて、私にも気を遣ってくれるやさしい人だった」

「仕事で立ち直ったら、結婚するけん」

 容疑者が豹変してしまったきっかけは“仕事がうまくいかなくなったこと”ではないかという。

「隼人くん(容疑者)との間に長男が生まれたころに、経営していた建設関連会社が傾いた。最初はそれでも私たちの生活の面倒をみてくれたんですが、次第に仕事もせずに酒浸りになってしまった。入籍しなかったのも、いっぱしに九州男児らしいプライドがあって、“仕事で立ち直ったら、結婚するけん”と」

 妻も子どもがまだ幼くて働けないため、自分の貯金を切り崩して生活する状態に。すると、

「彼は酒を飲むと、日ごろのストレスが出てきてしまうんですかね。現実逃避かも。それに加えて、相手に自分の気持ちを伝えることが下手で、伝わらない鬱憤で暴力を振るうようになったのでしょう。でも、いま考えると、前妻と離婚したのも、私と同じようなことがあったからかもしれんですね。つまり、次第に本性を見せはじめただけ……」

 現在、妻は前出の長女、長男、そして生後半年になる次男と3人の子どもを抱えているが、

「シングルマザーで大変ですが、子どもが嫌な思いするよりマシ。私がもっと頑張るしかないですね……」

 一線を超えてしまった容疑者。失ったものはもう取り戻せない。

 
新枦隼人容疑者(関係者より提供)

 

 

妻が容疑者の暴力で警察を呼んだのは今年だけで11回

 

団地では、容疑者のDVは有名だったという

 

被害児童が遊んでいたと思われる遊具