基本の湯豆腐(撮影/廣瀬靖士)

 寒い日にしみじみおいしい湯豆腐。大豆製品も値上がりしているとはいえ、まだまだ庶民的な値段のためついリピートしてマンネリになりがち。「わが家も冬の湯豆腐率はかなり高めですが、少し手を加えて飽きないようにしています」と、料理研究家の武蔵裕子さん(以下同)。

立ち上る湯気もごちそう。かけだれや薬味で味変

「湯豆腐は鍋に昆布を敷いてだしをとり、豆腐を温めたらかけじょうゆでいただくもの。一説では京都の南禅寺周辺が発祥で、そのルーツは精進料理だといわれています。

 今では家庭でも広く愛されている冬の定番料理ですが、もっとも簡単なアレンジといえば、かけだれや薬味の工夫ですね」

 かけだれといえばポン酢しょうゆ、薬味にはおろししょうがや小口に切った細ねぎなどが定番……。

「レモンなどのかんきつの酸味をきかせたもの、ラー油やわさびなどの辛みをきかせたもの、キムチやみそなど発酵食品のうまみをきかせたものなど、たれも薬味も組み合わせ次第で新しいおいしさに出合えます。何種類か用意すれば楽しみも増しますよ

 湯豆腐をボリューム感のある主菜にするのもおすすめ。

「とはいえ、ゴロゴロと鶏肉や魚介を入れたら、水炊きや寄せ鍋になってしまう。“主役はあくまで豆腐”という点を心がけて、適度な肉や魚、野菜を組み合わせています。今回紹介している“変わり湯豆腐”はとっておきの自信作なので、ぜひ試してみてください」

 なめらか食感が好きなら絹ごし、満足感がほしいなら木綿を。

「豆腐そのものの味を楽しむ湯豆腐だからこそ、あまり小さく切らずに大きめに準備して」

変わり湯豆腐

 湯豆腐ってこんなに自由なんだっけ? スープや具で変化をつけたアレンジもウマ~い

豆乳とろろ湯豆腐

 すりおろした長芋のやさしい味わいにほっこり。

豆乳とろろ湯豆腐(撮影/廣瀬靖士)

材料/2人分
・絹ごし豆腐……1丁(300~350g)
・長芋(すりおろす)……200g
・だし……1/2カップ
・豆乳(無調整)……1カップ
・春菊(葉を摘む)……適宜

【作り方】

(1)豆腐はペーパータオルに包んで3分間ほどおき、水けをきる。

(2)鍋にだしを入れて中火で煮立て、豆乳を加えて2分間ほど温める。豆腐を大きめのスプーンなどですくって加える。表面がフツフツとしてきたら長芋を流し入れ、サッと煮る。好みで春菊の葉を散らす。好みの薬味を添えても。

鮭の酒かす湯豆腐

 鮭からしみ出るだしが深い!

鮭の酒かす湯豆腐(撮影/廣瀬靖士)

材料/2人分
・絹ごし豆腐……1丁
・甘塩鮭……2切れ
・ねぎ……1/2本
・酒かす(板状のもの) ……大さじ4〜5(約70g)
・だし……1と2/3カップ
・みそ……大さじ1/2
・貝割れ菜(根元を除く)……適宜

【作り方】

(1)豆腐は食べやすい大きさに切る。鮭は3等分に切る。ねぎは斜め薄切りにする。酒かすは塊が大きければ湯適量(分量外)で軽くほぐす。

(2)鍋に酒かすとだしを入れて中火にかけ、煮立ったら鮭を加える。鮭の色が変わってきたらねぎを加え、みそを溶き入れる。豆腐を静かに加えて弱火で温め、好みで貝割れ菜をのせる。

みそ豆乳の担々湯豆腐

 まろやかなスープをラー油で引き締め!

みそ豆乳の担々湯豆腐(撮影/廣瀬靖士)

材料/2人分
・木綿豆腐……1丁
・豚ひき肉150g
・しいたけ……2個
・にら……1/3把
・長ねぎ(みじん切り)……10cm分
・しょうが(みじん切り)……大さじ1
・春雨(ショートタイプ)……30g
 A〔水……1カップ、すりごま(白)……大さじ2、しょうゆ……大さじ1、顆粒チキンスープの素(中華風)……小さじ1〕
・豆乳(無調整)……1カップ
・ごま油……大さじ1
・ラー油……小さじ1~2

【作り方】

(1)豆腐は食べやすい大きさに切る。しいたけは石づきを除いて粗みじん切りにする。にらは2~3cm長さに切る。

(2)鍋にごま油を中火で熱し、長ねぎ、しょうが、しいたけ、ひき肉を炒める。肉の色が完全に変わったら春雨、Aを加え、煮立ったら豆乳、豆腐、にらを加える。再び煮立ったらラー油を回し入れる。

炒りかつお湯豆腐

 ごま油で炒った削り節の風味が上品。

炒りかつお湯豆腐(撮影/廣瀬靖士)

材料/2人分
・木綿豆腐……1丁
・大根……10cm
・まいたけ……1パック
・切り餅……2個
・削り節……15g
 A〔水……2カップ、酒・しょうゆ……各大さじ1、塩……少々〕
・ごま油……大さじ1
・水菜(4~5cm長さに切る)……適宜

【作り方】

(1)豆腐は食べやすい大きさに切る。大根はピーラーでリボン状に薄く削る。まいたけは食べやすい大きさにほぐす。切り餅は4等分に切る。

(2)鍋にごま油を弱火で熱し、削り節をサッと炒める。A、大根を加えて2~3分間煮る。大根がやわらかくなったらまいたけ、餅、豆腐を加え、弱火にして2~3分間煮る。好みで水菜を散らす。

基本の湯豆腐&薬味・たれバリエ

 慣れた料理だからついテキトーになりがちだけど、ポイントを押さえてきちんと作ると味わいが段違い

基本の湯豆腐

 グラグラ煮すぎず中まで温める程度に

基本の湯豆腐(撮影/廣瀬靖士)

材料/2人分
・豆腐(好みのもの)……1丁(300~350g)
・昆布(10cm四方)……1枚
・ポン酢しょうゆ……適量
・しょうが(すりおろす)・細ねぎ(小口切り)・柚子の皮(刻む)……各適宜

【作り方】

(1)鍋に昆布と水2~2と1/2カップ(分量外)を入れ、30~40分間おく。豆腐はペーパータオルで包んで軽く水けをきり、食べやすい大きさに切る。

(2)(1)の鍋を中火にかけ、煮立ったら弱火にして豆腐を入れて温める。器にポン酢しょうゆ(または好みのたれ)を入れ、好みでしょうが、細ねぎ、柚子の皮(または好みの薬味)を添える。

シメもおいしく!
「基本の湯豆腐」の豆腐、昆布を除いて中火にかけ、煮立ったらご飯、茶碗1杯分を加える。再び煮立ったら溶き卵1個分を回し入れる。器に盛り、細ねぎ(小口切り)適量をのせる。

基本の湯豆腐「シメもおいしく!」(撮影/廣瀬靖士)

シンプル湯豆腐と相性バッチリ 薬味バリエ

 薬味しだいで湯豆腐は別モノに! 冷蔵庫で1週間保存OK、ご飯のふりかけにも。

カレーねぎ

 スパイシーであとひく

カレーねぎ(撮影/廣瀬靖士)

材料(作りやすい分量)【作り方】

 長ねぎ1/4本はみじん切りにし、カレー粉小さじ1と混ぜる。

ごましそ

 好みで黒ごまにかえてもおいしい

ごましそ(撮影/廣瀬靖士)

材料(作りやすい分量)【作り方】

 青じそ10枚はみじん切りにし、すりごま(白)大さじ1/2と混ぜる。

玉ねぎラー油

 オトナ好みの辛みを楽しんで

玉ねぎラー油(撮影/廣瀬靖士)

材料(作りやすい分量)【作り方】

 玉ねぎ1/4個はみじん切りにし、ラー油適量と混ぜる。

 他にもさっぱり味で箸が進む赤じそ細ねぎ、ポリポリ食感がクセになるザーサイしょうがもいかが?

赤じそ細ねぎ(左)とザーサイしょうが(右)(撮影/廣瀬靖士)

毎日食べても飽きない かけだれバリエ

 ポン酢やだししょうゆに適量溶いて味わう、新しいおいしさ。

卵黄おかかだれ

 トロリと濃厚、青のりが香ばしい

卵黄おかかだれ(撮影/廣瀬靖士)

材料/2人分【作り方】

 卵黄2個分、しょうゆ小さじ1~1と1/2、青のり大さじ1/2、削り節(細かいもの)1袋(2~3g)を混ぜる。

韓国風甘辛だれ

 ごま油の風味で食欲アップ

韓国風甘辛だれ(撮影/廣瀬靖士)

材料/2人分【作り方】

 酢・すりごま(白)各大さじ1と1/2、しょうゆ・コチュジャン各大さじ1、砂糖小さじ2、ごま油大さじ1/2を混ぜる。

わさびのりだれ

 ツンと鼻を抜ける香りがイイ

わさびのりだれ(撮影/廣瀬靖士)

材料/2人分【作り方】

 焼きのり(全形)1/2枚は小さくちぎる。みりん大さじ1はラップをかけずに電子レンジに10秒間かける。のり、みりん、しょうゆ大さじ1、練りわさび(チューブ)2~3cm分を混ぜる。

ポン酢豆乳だれ

 酸味がマイルドで食べやすい

ポン酢豆乳だれ(撮影/廣瀬靖士)

材料/2人分【作り方】

 ポン酢しょうゆ1/4カップ、豆乳(無調整)1/2カップを混ぜる。

はちみつしょうがのレンジ温やっこ

 湯豆腐が進化してデザートに!

はちみつしょうがのレンジ温やっこ(撮影/廣瀬靖士)

材料/1人分
・木綿豆腐……1/2丁(150g)
 A〔はちみつ……大さじ1、しょうが汁……大さじ1/2、しょうゆ……小さじ1〕

【作り方】

(1)豆腐はペーパータオルで包んで10分間ほどおいて水けをきる。Aは混ぜ合わせておく。

(2)(1)の豆腐をスプーンで大きめにすくって耐熱皿にのせる。ふんわりとラップをし、電子レンジに1分間かけ、熱いうちにAをかける。

 他にも、湯豆腐が和洋折衷な味わいになる明太マヨだれ、酸味爽やか・さっぱり後味が特徴のレモンねぎ塩だれ、うまみたっぷりで後引くおいしさのキムチだれ、こっくりと深い味わいで田楽風な長ねぎたっぷりみそだれもあります♪

明太マヨだれ(右上)、キムチだれ(右下)、レモンネギ塩だれ(左上)、長ねぎたっぷりみそだれ(左下)(撮影/廣瀬靖士)
武蔵裕子さん●料理研究家。食材の持ち味を生かした、和食を基本とした料理が得意。3世代家族の食卓を切り盛りしてきた経験から生まれた、簡単でおいしいレシピが人気。(撮影/廣瀬靖士)
教えてくれた人……武蔵裕子さん●料理研究家。食材の持ち味を生かした、和食を基本とした料理が得意。3世代家族の食卓を切り盛りしてきた経験から生まれた、簡単でおいしいレシピが人気。
調理/武蔵裕子 取材・文/松家寛子 撮影/廣瀬靖士 スタイリング/宮沢ゆか ※電子レンジは600Wを使用。はちみつを使用しているものは1歳未満の乳児には与えないでください。