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 冬は血管が収縮しやすく、重篤な病や突然死を招く原因にも。特にアブナイのはトイレやお風呂。血管に圧がかかり、クラッとした経験は誰でもあるのでは?予防にはサラサラな血液を保ち、血管に負担をかけないこと。脳卒中、心臓発作で死なないためにレッツ血管ケア!

突然死の原因は急激な温度変化

「去年の年の瀬に70代の親戚が緊急入院したと連絡があったんです。聞けば、夜中にトイレで倒れてそのまま救急車で搬送されたとのこと。幸いなことに一命はとりとめたそうですが、発見が遅れていたら危なかったと医師に言われたそうです」(40代・女性)

 寒い時季は突然死が増えるといわれている。その理由について、サクラクリニック院長の野田泰永先生は次のように解説する。

「突然死にはさまざまな原因がありますが、脳梗塞、心筋梗塞、不整脈といった血管が破れたり詰まったりする病気が非常に多い。厚生労働省の『人口動態統計の概要』によると、現在、日本人の約4人に1人が血管に関わる病気で亡くなっていることがわかります。

 寒い時季に突然死が増えるのは、急激な温度変化に直面したときに血管のアクシデントが起こりやすいからです

 例えば冬の入浴時、血管には次のような変化が生じる。

「寒い脱衣所で衣服を脱いで体表面全体の温度が下がると血管が収縮し、血圧が一気に上昇します。この血圧の急上昇で心筋梗塞や脳卒中を引き起こすことがあります。また、温かい湯船につかると血管が拡張し、今度は血圧が急低下します。その結果、一時的に脳内まで血液がまわらなくなり失神してしまう場合もあります」(野田先生、以下同)

突然死の予兆は見過ごされやすい

 血管に関する突然死に予兆はあるのだろうか。

「心疾患の場合は胸の痛み、脳疾患の場合は手や足に力が入りにくい、といった自覚症状が現れることもありますが、軽い症状は見過ごされることも少なくありません。深刻な症状が現れたときには重症化していて、あっという間に死に至ってしまうというケースは多いといえます」

心筋梗塞発症の季節変動(10年間の累積集計) (公財)循環器病研究振興財団

 冬場の突然死を防ぐためには、日頃からどのようなことに気をつけるべきなのか。

突然死の根底にあるのは血管の劣化です。“人は血管から老いていく”というほど、血管は老化していきます。日常生活のなかで血管への負担を減らし、強くしなやかな血管を保つような生活を送ることが大切。そのうえで急激な温度変化は血管によくないという意識を持つこと。

 “夜中トイレに行くときは上着をはおってスリッパをはく” “入浴前に脱衣所と浴室を暖めておく”など、身体の温度変化を少なく抑えることが冬の突然死を予防する大原則です

 普段、何げなく行っていることが実は血管や心臓に負担をかけているかもしれない。当てはまる生活習慣はすぐに見直して血管死の予防を。

悪習慣1 ストレス解消は食後のスイーツ

 糖質が多く含まれている甘いお菓子をとると血糖値が乱高下して血管に負担をかけてしまう。また、糖質のとりすぎは肥満につながり血圧が高くなって血管にダメージを与えることに。おやつはナッツなど血糖値が上がりにくいものを。

悪習慣2 朝晩、必ずみそ汁を飲む

 発酵食品であるみそを使ったみそ汁にはさまざまな健康効果があるものの、塩分過多は高血圧の原因に。朝晩、必ずみそ汁を飲む場合は、だしをきかせて薄味に。野菜や海藻類をたっぷり入れて摂取する汁の量を少なくするのも一案です。

悪習慣3 お肉や魚をあまり食べなくなった

 肉や魚に含まれているタンパク質は血管や筋肉を作るための材料で、食事からとる量が少なくなると血管が弱くなってしまうおそれがある。また筋肉量が減ると身体能力が低下して将来、寝たきり状態になるおそれも。タンパク質は積極的に摂取したい。

悪習慣4 トイレが近くなったので水分を控えている

 暖房によって知らず知らずのうちに汗をかいている冬は、夏と同様に脱水症状が起きることもある。脱水によって血管の中を流れる血液量が少なくなると、血圧が乱高下しやすくなる。冬場でも起床後から夕食時までの間に食事以外で500mlの水分摂取を意識して。

悪習慣5 シチューやカレー、とろみのある中華をよく食べる

 シチューやカレーのルウ、中華のあんには糖質が多く含まれている。カレーやあんかけ焼きそば、中華丼など主食との相性もいいため糖質の摂取量が多くなりがち。こうしたメニューが続かないように注意を。

悪習慣6 朝食の定番メニューはトーストと野菜サラダとコーヒー

 一見ヘルシーなメニューだが、タンパク質の要素がほぼゼロ。血管はタンパク質から作られており、丈夫な血管を保つためにも欠かせない栄養素。必要量は体重1kgあたり0.8~1.0gで、体重50kgなら50gが目安。肉、魚、卵、大豆食品のいずれかを毎食とりたい。

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悪習慣7 野菜不足を補うため市販の野菜ジュースを飲むようにしている

 市販の野菜ジュースには味をよくするために果物の果汁を多く使っている商品もあり、コップ1杯で角砂糖約4.5~9個分相当の糖質が含まれているものも。野菜ジュースをとりたい場合は、ジューサーやミキサーなどで自作しよう。

悪習慣8 健康を気にしてサラダにはノンオイルドレッシングを使う

 ヘルシーな印象があるノンオイルドレッシングだが、例えばノンオイルの和風ドレッシングは油を使う代わりに果糖やブドウ糖でコクを補っている。健康に配慮しているつもりで実は知らぬ間に糖質をとりすぎていることも。

悪習慣9 美容のためにおやつはドライフルーツに

 栄養分が凝縮されているドライフルーツは生の果物に比べて多くの栄養素が数倍に増えはするが糖質量も多い。例えば100g当たりの糖質量はマンゴーが78.5g、レーズンが76.2g、いちじくが64.3g。食べすぎると確実に糖質過多に。

悪習慣10 イソフラボン摂取のため調製豆乳をよく飲む

 無調整豆乳は比較的糖質が少なめだが、調製豆乳は砂糖が多く含まれている。砂糖は糖そのものであり、多くとれば血糖値の乱高下の原因に。イソフラボンは無調整豆乳や納豆、豆腐、きな粉などで糖質に配慮しながら摂取したい。

悪習慣11 丼もの、ラーメンを食べることが多い

 丼ものやラーメンは糖質が多く、食後に血糖値が急上昇。その結果、血管に負担がかかり動脈硬化につながってしまう。食後の高血糖を防ぐために、主食を半分に減らしておかずをしっかり食べるゆるい糖質制限がおすすめ。

悪習慣12 晩酌にはビールや日本酒が欠かせない

 アルコールの中で糖質を多く含んでいるのは、ビールや日本酒、甘みの強いワインなどの醸造酒で、例えばビール中ジョッキ1杯(約500ml)の糖質量は約15.5g。お酒を飲むなら焼酎やウイスキーなどの蒸留酒や辛口のワインがベター。

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悪習慣13 お酒はやめたがタバコをやめられない

 ニコチンの作用で交感神経が興奮し、収縮した血管に多くの血液が送られることで血管内皮が傷つく。さらに血糖値上昇や脂質異常に関与し、血栓ができやすくなったりと、タバコは血管を猛スピードで老化させる大きな要因となる。

悪習慣14 コロナがきっかけで運動不足に

 人の身体には“使わない機能は衰える”という性質がある。血管も同じで、運動不足で血流が少ない状態が続くと血管は弱って細くなる。また、筋肉は血管から糖を取り込んでエネルギーとして使用するが、運動不足で筋肉量が減ると糖の取り込みも少なくなり、血液中に糖があふれて血糖値が上昇してしまう。

悪習慣15 寝る前スマホで、つい睡眠不足に

 睡眠と心臓の働きは密接に関係しており、睡眠不足だと不整脈が起きやすく血圧も上がりやすい。できれば1日7時間は質のいい睡眠をとりたいもの。寝る直前までスマホなどを見ていると交感神経が興奮し、眠りの質が下がる。

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悪習慣16 イライラしやすいせっかちな性格だ

 すぐにイライラしたり、ささいなことで怒りっぽかったり、いつも時間に追われていたりするせっかちな性格は、ストレスに弱くて交感神経が緊張しやすい。気づかない間に血管と心臓に負担をかけやすくなっている。

悪習慣17 最近サウナに通うようになった

 急激に身体を温めて発汗を促すため、サウナは心臓にある程度の負担をかける行為でもある。サウナに入る場合は、時間をかけて少しずつ身体を順応させていくことが大切。サウナ初心者が短めの時間で切り上げている場合は問題ないが、長時間入るのは避けたほうが賢明。

悪習慣18 歯磨きは歯ブラシだけで行う

 歯周病にかかっている人はそうでない人と比べて、1.5倍から2.8倍も心臓病などの循環器疾患になりやすいとも。また血中に入り込んだ歯周病菌が動脈硬化の原因になることも。歯間ブラシやデンタルフロスの使用で歯周病の予防を。

悪習慣19 夜中にトイレに行くときははだしだ

 急激な温度変化は心臓や血管に負担をかける。夜中に暖かい布団から出てパジャマ姿に、はだしでトイレに行くと、寒さで血管が収縮して血流が悪くなってしまう。身体を冷やしすぎないよう上着を羽織りスリッパをはくこと。

悪習慣20 熱めのお風呂につかるのが好き

 脱衣所で服を脱いで身体が冷えた状態で熱いお湯につかると血管が拡張して血圧が下がりやすくなってしまう。場合によっては意識が遠のくことも。冬場の入浴時は脱衣所を暖め、熱すぎない適温のお湯に入るべき。

冬の血管を守る生活習慣ベスト5

ベスト1 睡眠時間を確保する

 1日7時間が理想的。できれば寝る2時間前にはスマホなどの電源をオフ。

ベスト2 暴飲暴食、塩分を控える

 規則正しくバランスがよく、塩分控えめの食生活は健康の基本。

ベスト3 日々に軽い運動を取り入れる

 毎日、血流を適度に促進させて血管を鍛えよう。

ベスト4 激しい寒暖差に注意する

 夜中のトイレ時には上着を着てスリッパをはく、風呂場は暖めるなど工夫をして。

ベスト5 タンパク質をしっかりとる

 丈夫な血管を作る材料となるタンパク質は食事のたびに摂取する。

 教えてくれたのは……サクラクリニック院長 野田泰永先生 ●筑波大学卒業後、東京女子医大病院、筑波大学附属病院などを経て1998年から現職。日本循環器学会認定専門医。著書に『怖い「血管死」を防ぐ 食事&トレーニングメソッド』など。

〈取材・文/熊谷あづさ〉