山田邦子(2017年)

《山田邦子さんはノーマークだった》

《山田邦子というチョイスに感嘆》

 漫才師の頂点を競う『M-1グランプリ』が、ふたたび変革のときを迎えた。

漫才のイメージ薄い山田邦子がM-1審査員に選ばれたワケ

「昨年まで、決勝の審査員は上沼恵美子さん、松本人志さん、中川礼二さん、立川志らくさん、塙(はなわ)宣之さん、富澤たけしさん、オール巨人さんの7人が務めていましたが、今年は“審査員引退”を表明していた上沼さんとオール巨人さんが抜ける形となり、2人に代わって、山田邦子さんと博多大吉さんが就任。

 大吉さんは'17年以来5年ぶりの『M-1』審査員復帰ですが、山田さんの抜擢は初のこと。ネット上では“天下をとった女芸人”として好意的な意見が寄せられている一方、若い世代からは“誰?”と、いまいちピンと来ていないような反応も見られます」(テレビ誌ライター) 

元祖女ピン芸人で、デビュー前には漫才も経験

『M-1グランプリ』の審査員に就任したことをブログで報告した山田邦子(本人の公式ブログより)

 '80年に芸能界デビューした山田は『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)などでブレークし、バスガイドに扮して軽妙なトークを繰り広げるネタなど“元祖女ピン芸人”として活躍。

『邦ちゃんのやまだかつてないテレビ』をはじめ、ゴールデンタイムに冠番組を持つなど凄まじい人気を誇った。まさに女芸人界の“レジェンド”というべき存在だが、本人は若者の声にこう反応している。

「審査員就任が発表された12月11日の深夜に、自身のYouTubeチャンネルを更新。意気込みを語った動画を投稿し、自分のことを知らない人たちに向け“ググってみ?”と自虐ながらにコメントしつつも、“私が山田邦子です”と自己紹介しました。

 あまり漫才のイメージがないという点については、デビュー前の学生時代に『のりこ・くにこ』という漫才コンビを組んでいたことを明かし、謙遜混じりに説明しました」(同・テレビ誌ライター)

 気になる“採点基準”については、上述の動画内で「前評判は関係ない。そのとき、その日、1番ウケたか、ウケないか。私の審査基準は、その日1番面白かった組」と語っている。しかし一方で、つい漏らした“本音”も話題になっていて……。

「山田さんは、動画の中で決勝進出者を1組ずつ紹介した際に、“真空ジェシカね、好きなんだよね”と発言。直後に、“こういうとこダメよね、贔屓(ひいき)出ちゃうからね。公平、公平”と自分を諭すように語りましたが、一部のお笑いファンの間では、この発言に注目が集まっているんです」(お笑い雑誌ライター) 

山田邦子の審査員加入が真空ジェシカの追い風になる?

 真空ジェシカは、'12年に結成。ツッコミのガクとボケの川北茂澄(しげと)からなる、プロダクション人力舎所属のコンビ。

真空ジェシカ(プロダクション人力舎のWEBサイトより)

 昨年の『M-1グランプリ2021』では決勝戦進出を果たし、審査員たちにワードセンスが抜群だと言わしめた実力者だ。2年連続のファイナリスト入りで山田が高く評価するのも納得だが、お笑いファンが着目したのは彼らへの“追い風”だった。 

真空ジェシカは昨年10組中6位でしたが、決勝戦のファーストラウンドで“89点”“90点”と、比較的厳しめの評価を下していたのが上沼さんとオール巨人さんでした。

 今年は2人が去り、代わりに加わる山田さんが“推し”を公言したことで、ネット上では《優勝マジであるぞ》との声も寄せられています」(お笑い雑誌ライター)

自身も歩んだ“枠にはまらない新しいこと”を評価する期待

『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)に出演していたころの山田邦子

 昨年とは異なる新しい“風”が吹きそうな予感だが、山田の審査員抜擢について、江戸川大学マスコミ学科教授で、お笑い評論家でもある西条昇さんはこう語る。

上沼さんと同じような上方女流漫才のハイヒール・モモコさんなどではなくて、東京の、しかも漫才じゃなくてピン芸でやってこられた女性芸人の山田邦子さんが抜擢されたのは、ある意味納得の人事と言えます。

 山田さん以外の審査員には“ピン芸”である落語家の立川志らくさんがいますし、以前は志らくさんの師匠である立川談志さんが務めたこともありました。“ピン芸人”だからといって、『M-1』の審査員に向いていないということはありません。

 さらに言えば、コント赤信号の渡辺正行さんやラサール石井さんが審査員を務めたこともある。必ずしも、漫才専門の方じゃないとダメということではないんです」

 加えて、山田は“漫才師”と深く関わってきたとも。

「山田さんがデビューした'80年は、ちょうど漫才ブームの真っ只中。ビートたけしさんや島田紳助さんなど、第一線の人たちと一緒に『オレたちひょうきん族』を長くやってきた人。

 漫才ブームをリードした人たちにある種揉まれながらというか、互角に渡り合って笑いを取ってきたわけです。漫才で活躍した人たちをそうやって間近で見てきたことがあるので、専門ではないけれども、漫才に対しても鋭い感性を持っていると思います

 審査員としての姿勢に関しては、こう推測する。 

上沼さんは、ご自身がやられたり見てきたりした漫才の“概念”というか、“漫才とはこういうものだ”という芸についての“哲学”がすごくしっかりしていらっしゃる方ですよね。なので、その哲学にはまらないようなスタイルの芸人さんに関しては、割と厳しめのコメントをされることもありました。

 一方で山田さんは、漫才に対して強い哲学を持っていらっしゃるわけではないでしょうから、上沼さんと比べると、“新しいことをやろうとする姿勢”を高く評価されるんじゃないかなと思います。

 バスガイドのネタでデビューされたときも枠にはまらない新しいことをされていましたし、そういう意味でも、若手芸人の思い切って挑戦をする姿勢に関して理解があると思います

 天下をとったレジェンドの加入で、“かつてない”大会になる!?

 

 

『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)に出演していたころの山田邦子

 

片岡鶴太郎と山田邦子。『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)より

 

山田邦子(2017年「桜を見る会」にて)

 

北京冬季オリンピックの大会公式マスコット『ビンドゥンドゥン』のメイクを披露する山田邦子(本人の公式ブログより)