東日本大震災の被災地の様子

 地震大国といわれる日本において、2022年は大きな地震が例年以上に頻発した1年だった。7月と9月を除いて、震度5以上の地震が毎月日本のどこかで発生。12月15日の時点では13件に上り、過去5年の間でも最多となった。

 なかでも、今年3月に発生した福島県沖地震(マグニチュード7.3)では震度6強を記録し、3名の死亡者も出ている。これらの地震の時期・場所・規模を的確に予測し、警戒を呼びかけていたのが『MEGA地震予測』だ。

1月、地震の警戒ゾーンは?

「私たちはリモートセンシング(遠隔探査)という技術をもとに、地震の前に現れる多種多様な前兆現象を総合的に分析し、地震予測を行っています。

 2022年の7月からは、地震発生の切迫度がより高いものに限って、時期と場所、規模を明示した『ピンポイント予測』も発表しています。今年起こった震度5以上の地震13件のうち10件を的中させており、その精度は年々高まってきています」

 そう語るのは、『MEGA地震予測』を運営する地震科学探査機構(JESEA)の取締役会長・村井俊治さん。暮れも押し迫るなか、12月末〜1月に震度5以上の地震が発生する可能性がある警戒エリアを教えてもらった。

 まず、警戒度第1位といえるのが、地震の常襲地帯でもある「東北地方」。東日本大震災から丸12年がたとうとしている現在も、主に高さ方向の変動が顕著に現れている最警戒ゾーンだという。

「現在もピンポイント予測を発出中で、2023年1月5日までにマグニチュード6・0規模の地震が起こる可能性があるエリアです。東日本大震災以降は、奥羽山脈を境界にして、太平洋側は隆起を続け、日本海側は沈降を続けている状況。こういう高さ変動が異なるエリアは、地震を誘発しやすいといえます」(村井さん、以下同)

 さらには、三陸沖の海底でも気になる動きが見られる。

「海上保安庁の海底地殻変動データによると、宮城沖は西北西への変移が、福島沖では南東への変移が見られます。異なる方向への動きがある場所の中間地点にはひずみがたまりやすく、地震発生の可能性も高まります。直近では12月11日に福島県沖でM4・7、震度3の地震が起きましたが、引き続き警戒を怠らないようにしてください」

 警戒度第2位は「北海道」ゾーンだ。道北・道東と、道央・道南・青森県北部までが警戒エリアとなり、広範囲にわたって地震の危険性が高い。

「利尻、長沼、鹿追、陸別、津別など多数のポイントで異常水平変動が現れました。こういった他と向きの異なる動きがある場所は不安定なため、地震が生じやすい。また、根室・釧路周辺と胆振周辺に沈降地域が現れています。沈降地域周辺ではひずみがたまりやすく、地震のリスクが高いといえるため、北海道全域にわたって注意が必要です」

 第3位は「茨城県・千葉県」ゾーン。茨城県も東北地方に並ぶ地震常襲地帯だが、関東平野でも主に高さ変動で気になる数値が見られるという。

「東北地方と同じような理由で、福島県と茨城県北部の境界で高さ変動の差が大きく出ていて、不安定な状態です。福島県の日本海側が大きく隆起を続けていて、茨城県北部との境目あたりでひずみが生じやすくなっています」

 また、千葉県の一部にも沈降地帯が現れている。

「千葉県全体は2020年1月を基点とすると隆起をしているなかで、北西部には沈降地帯が現れています。このあたりは構造として沈降の数値が継続して現れやすいエリアで、昔から小さな地震が頻発しています。以上のことからも、茨城県・千葉県周辺では地震が非常に起こりやすくなっているでしょうね」

 第4位は「九州・南西諸島」ゾーン。九州全体で高さ変動の動きが活発化している。

「2022年の後半は特に、九州全域にわたって隆起と沈降の動きを繰り返して乱高下しており、地殻が不安定な状態にあります。また、鹿児島県の口永良部島と屋久島は高さ変動・水平変動のふたつで異常が頻繁に見られます。人工知能を使ったわれわれの『ダイナミックAI解析』では、九州南部と九州北部が危険度ランク1位、2位となっており、特に宮崎県・鹿児島県の九州南部エリアは要警戒ですね」

 さらに沖縄寄りの南西諸島でも大きな水平変動がある。

「南西諸島の水平変動は東北地方と並んで大きく現れており、直近では12月13日に奄美大島近海でマグニチュード6、震度4の地震が起きました。同様に、マグニチュード6規模の地震が最近多く発生している台湾に近い先島諸島では、さらに大きな水平移動が見られます。地盤が強固とはいえ、不安定な状態が続く九州・南西諸島はどちらも細心の注意が必要です」

冬場の地震は火災のリスクにも注意

 地球規模で見ると、マグニチュード6以上の地震の2割が日本で起こっているが、地震の予測技術はさらに進化していると村井さんは語る。

「地震予測は、既存の学問や常識に縛られず、あらゆる可能性を排除しないことが重要です。地殻変動だけでなく、太陽活動の異変解析、特殊な天体現象に至るまで、科学的観測に基づく地震の前兆現象を幅広く検証し、予測精度を日々向上させています」

 地震予測は前兆現象に基づくため、中長期の予測はとても難しい。しかし、最後に1月の地震発生の可能性が高い日について尋ねると……。

「1月7日は満月で水星との惑星直列が重なる日でもあるため、磁気嵐が連動すれば大きな地震が地球のどこかで起こる可能性は高い。また、1月22日の新月前後も地震発生のリスクは高いですね。

 地震には季節性があるわけではなく、冬だから地震が起きやすいということはありません。ただし、冬場の地震では、ストーブなどの暖房器具による火災リスクや、非難時の防寒対策など、注意すべき点もあります。いま一度、家族で防災対策について準備・確認をしておくことは重要です」

 北海道から沖縄まで、2023年も日本全域にわたって地震への警戒が必要だ。

地震警戒エリアピンポイント予測マップ

 人工衛星を使用し、さまざまな地震の前兆現象を捉えて解析する『MEGA地震予測』。直近のデータに基づき、12月末~1月に大きな地震が起こる可能性があるのは以下の4エリアだ。

地震警戒エリアピンポイント予測マップ

北海道ゾーン

 釧路・根室周辺と、胆振・石狩地方の一部に沈降エリアが出現。また、道内各地で検出されている異常水平移動により、北海道全域が警戒エリアに。東北地方とエリアが重なる道南および青森県北部は特に注意が必要。

東北地方ゾーン

 岩手、宮城、福島の沿岸は隆起し、秋田、山形の日本海側は沈降。東西で高さ変動の動きが異なり、ひずみが生じている。2011年の東日本大震災で大変動した地殻が、今なお戻るために変動し続けている最警戒エリア。

茨城県・千葉県ゾーン

 11月9日には茨城県南部でマグニチュード4.9、最大震度5強の地震が発生している関東地方。隆起する福島県との境となる茨城県北部や、継続して沈降が見られる千葉県では特に大きな地震に備えたい。

九州・南西諸島ゾーン

 九州全域にわたって、沈降隆起が乱高下して不安定な状態。特に九州南部では桜島や屋久島周辺で水平方向の大きな変動も見られ、ひずみがたまっている。沖縄を含む南西諸島も大きな水平変動があるため、要注意。

お話しを伺ったのは……村井俊治さん●JESEA取締役会長、東京大学名誉教授。国際写真測量・リモートセンシング学会会長を務めるなど、リモートセンシング(遠隔探査)の第一人者。2013年に地震科学探査機構(JESEA)を設立。JESEAではスマホアプリ『MEGA地震予測』(月額380円/初月無料)にて、毎週水曜日に地震予測の情報を提供中。

(取材・文/吉信 武)