平成フラミンゴのRIHO(上)とNICO(下)

 NICO(27)とRIHO(28)による幼馴染の2人組女性YouTuber・平成フラミンゴ(以下、平フラ)。チャンネル登録者数は約328万人(2022年12月現在)にのぼり、特にZ世代から強い支持を得ており、先日発表された「2022年ティーンが選ぶトレンドランキング(ヒト部門)」(『マイナビティーンズラボ』調べ)でも1位に輝いている。

 その魅力は一体どこにあるのだろうか?

 YouTube作家の肩書きをもち、ヒカルやヒカキン、東海オンエアなど数多くの大物クリエイターの企画を手がける『株式会社こす.くま』代表取締役のすのはら・たけちまるぽこの両氏が同ユニットを解説・分析する。

TikTokからYouTubeへ。今時な戦略で成功した平成フラミンゴ

《【初投稿】幼なじみコンビの結婚できない女たち!》

そんな自身を皮肉ったタイトルでYouTubeに登場した平フラは、2020年4月3日の初投稿から、たった1年半でチャンネル唐田100万人を達成。いまや300万人超を誇り、『コムドット(391万人)や『ばんばんざい』(247万人)らと共に“新世代YouTuber”を代表する存在だ。

平成フラミンゴの初投稿動画。初期のころはネタ動画で人気を集めた

 YouTubeを始めた当時、NICOは24歳、RIHOは25歳。ふたりは自らを「アラサーババァ」と自称し、“20代後半女性のリアル”というブランディングのもと、さまざまな発信を行ってきた。

一番の特徴は、企画をやっているというよりも、『生きている様子を発信している』ということです。幼馴染という2人の関係性それ自体にファンがついているので、“旅行に行きました”、“喧嘩しました”、“好きな人ができました”、といった日常の中で起きる様々なことを動画にして発信しています。そのあけすけさに女性たちからの支持が集まっている印象です」(たけち)

 平フラの定番企画のなかに『無限ドライブスルー』という人気コンテンツがある。車を運転しながらドライブスルーのある飲食店を見つけるたびに、寄って商品を購入して車中で食べるというだけのシンプルな内容だ。はじめは空腹のふたりだが、次第に注文が少なくなっていき……といった流れになるわけだが、その企画自体は決して斬新というわけではなく、2人の会話や親しげなやりとりが人気を博しているという。

564万回再生された『無限ドライブスルー』動画

「小学1年生のころから大親友の2人ですが、女優を目指していたにこさんに、りほさんが『TikTokであるあるネタを投稿したいから手伝ってほしい』とお願いしたことが結成の理由です。TikTokで発信していたネタ動画でファンを獲得してからYouTubeにファンを流入させることに成功しました。最近活躍しているYouTuberはTikTokやYouTubeショートといった短尺動画を有効に活用している例が多く見られますが、ふたりもその使い分けがとても上手な印象です」(すのはら)

※YouTubeショートとは
日本では2021年7月にリリースされた最大60秒までの縦型の動画を投稿・閲覧できるYouTubeのサービス。スマホと『YouTube ショートカメラ』のアプリがあれば誰でも作成できる。現在は収益化が導入されていないが、2023年初頭からは広告収益が得られる導入されると発表されている

切り抜き需要に応える“編集力”がレベチ!

 すのはら氏によると、近年はショートに特化したクリエイターが増えており、長尺の動画から一部を“切り抜き”してショートにアップする(される)ことも多い。

「TikTokから始まったショート動画の文化が今、盛り上がっています。YouTuberのみならず、テレビ局が番組の切り抜きYouTubeにアップしているのも散見されます。また、視聴者が動画の中で面白い場面を切り抜いて拡散するので、ある種の“PRの役割”を果たしてくれる。そこから本編の再生に繋がるというケースは多いです。特に平フラは動画編集の技術が非常に高く、画面の色味がコロコロ変わったり、テロップの雰囲気も単一でなく、さまざまなBGMがかかったりするので60秒間の切り抜きでも見応えがでる。センスや発想のレベルの高さが頭一つ抜けていますね」(すのはら)

 2022年2月、平フラはビートたけしと国分太一がMCを務める『23時の密着テレビ「レべチな人、見つけた」』(テレビ東京)に出演し、動画編集の様子を公開している。なんと、200種類以上もあるBGMの中からその動画に最適だと思ったBGMをつけている、とこだわりを披露していた。

通常、YouTuberの音源はフリー音源から使用することが多いですが、200種類ものストックを持っているのはなかなかないと思います。1本の動画に対しての編集での盛り具合が違うな、と思わせられて専門的な視点で見ても面白いです」(たけち)

コムドットと平成フラミンゴはZ世代にとってクラスメイト的存在?

 2021年秋、「高校生が選ぶ好きな芸人・タレントランキング(株式会社アイ・エヌ・ジー調べ)」では3位EXIT、2位千鳥と人気芸人を抜き去り、1位にランクインした平フラ。2022年にはマイナビティーンズラボによる「2022年春夏版、10代女子に人気のYouTuberランキング」で1位を獲得し、Z世代からの絶大な支持を得ている。同世代ではなく、20代後半の女性2人組にも関わらず、高校生から人気となっているのはなぜだろうか?

「もともと、TikTokに投稿していて人気だったのが『女子高生あるある』『部活あるある』といった“高校生ネタ”でした。YouTubeでもこれらのネタは200万回ほど再生されており、非常に共感を得ています。あとは同じく高校生から絶大な人気を得ているコムドットとのコラボを積極的にやっていた時期もあり、大変話題になりました。2021年10月に公開されたコムドットと平フラの『編集合宿』の動画は1200万回も再生されています」(すのはら)

※編集合宿とは
普段はみることができないYouTuberの編集風景をそのままコンテンツ化。両グループが泊まり込みで過酷な編集作業に臨み、仲を深めていく姿がまるで「部活のようだ」と人気
コムドットのチャンネルに投稿された「【地獄】平成フラミンゴと編集合宿したら人間の限界突破したwwwwww」

 どちらも飛ぶ鳥落とす勢いで登録者数を伸ばしている平フラとコムドット。2021年10月24日から1週間をコラボウィークとし、お互いのチャンネルで動画を毎日投稿。全部で14本の動画の総再生回数は4000万を超えている。NICOとコムドットのやまとがデートをする企画では、個人人気の高さもあり、880万回再生されているが、あまりに親しげな様子から、やまとのファンから“交際しているのでは?”を疑われ、一時は炎上騒ぎにもなるほどだった。さらに、コムドットと平フラは今年の9月に1年ぶりのコラボウィークを実施。その際の動画も平均再生300〜400万と盛り上がりを見せている。

新世代YouTuberのキーワードは「関係性・絆」

 すのはら氏とたけち氏は、平フラやコムドット新世代YouTuberを語るうえで最も重要なキーワードが“関係性”であると話す。

「視聴者にとって平フラとコムドットのコラボはクラスの“仲の良さそうな男子・女子”を見ている感覚に近いのかな、と思います。新世代といわれるYouTuberの特徴は、企画内容でファンをつけるというよりかは、グループとしての親近感や関係性の“尊さ”でファンをつけているのが特徴です。両グループとも幼馴染という関係性があり、視聴者も“クラスの人気者のわちゃわちゃ”を見ていると錯覚する。それを楽しんだり嫉妬したり噂したり、と親近感を持って楽しんでいるのだと思いますね」(すのはら)

 たけち氏も続ける。

「男性同士のアツい友情を意味する、『ブロマンス』という言葉が近年盛り上がっています。恋愛感情ではなく、男性同士の親密な繋がりを指す言葉で、近年、お笑い芸人を描いたドラマなどが増えているのもこうした感情に“萌える”人が多いからだと思います。コムドットが人気となった理由にも、地元の友達という強い結びつきがあり、その絆に対して羨望や推したい、という感情で絶大な支持を得ていると思います。

『ブロマンス』の対義語には、女性同士の絆や相棒的な関係を意味する『ロマンシス』という言葉があり、それが平フラの関係性に当てはまります。ファンによる平フラの切り抜き動画に『シンクロ集』という人気のまとめコンテンツがあります。NICOとRIHOがちょうど同じ言葉を同時に発している瞬間を集めたもので、そうした仲良しの幼馴染だからこそ起こる共鳴の現象にファンは尊さと憧れを感じています」(たけち)

”公認”切り抜き師による「シンクロ集」

 もちろんふたりも常に最高潮に仲が良いというわけではない。時にはモメることもあるが、それすらコンテンツになるのが彼女たちの強みだ。動画投稿を一時的に休んだ理由を「2週間ほどケンカをしていたから」と告白する《最近動画を投稿していなかった理由》といった動画では、ケンカ中のふたりが同じ画角に収まり本音を吐露しつつ、ビジネスの関係ではないため「本当に仲良しにならないと動画が撮れない」と漏らした。正直な想いは反響を呼び、490万回再生されている。

概要欄には「正直に言います。バチバチにケンカをしていました」と書かれているが、「仲が良いからこそぶつかり合う」とも

 YouTuberという関係性以前に親しい友達同士であることが伺え、視聴者に親近感を抱かせた。これまでのYouTuberの歴史を見てもグループYouTuberは男性同士が多く、女性のグループは男性人気も狙って動画を投稿している傾向にあった。女性2人組のユニットで同性にここまで支持を得たケースは今までいなかったのではないか、とたけちは話す。

『ズボラ女子』の姿と重なって

「平フラが人気になりだしたころ、大雑把でルーズな女性を指す『ズボラ女子』という言葉が市民権を得だしていました。直前まで流行していた美魔女や女子力といった『女性として美しくあるべき』といった流れに対するカウンターでもあったと思います。すっぴんに寝巻きで髪もセットしない、自然体な感じで登場した平フラは、ズボラ女子の流れにも乗り、同世代やさらに下の世代から親近感やリアルな女子像を感じ、同性からの支持を得ていると感じています」(たけち)

 同性から支持を得ている彼女たちの息は長い、とたけち氏は予測する。

平フラは人生をコンテンツにしているんですよね。なので今後、『彼氏ができました』とか、『結婚します』ですとかライフステージが変わっても応援してくれるファンがついていると思います。異性人気だと恋愛や結婚によってファンが離れることもありますが、人生を応援したい同性のファンがついているのは強いです。最近では平フラの影響か、そうした女性ユニットのYouTuberも増えてきました。例えば『むくえなちっく』という幼馴染の2人組のチャンネルも登録者64万人とファンを増やしていて、今後も女性受けする女性ユニットの増加はありそうです」(たけち)

チャンネル登録者数90万人超えの「むくえなちっく。」もあるあるネタをアップしている

飾らない姿を意識しているのも感じますね。平フラは今や数億を稼ぐレベルだと思いますが、お金を持ってます感を出さないのも魅力だと思います。人気になったYouTuberだと大金を使って買い物したり、大型企画に使ったりしますが、彼女たちは着ている服もファストファッション寄りだったりと、視聴者にも手が届くものを身につけている印象です。もちろん、ハイブランドを身につけてることもありますが、特に自慢げにしているわけでもないところも同性から支持を得やすいのかな、と思います」(すのはら)

人生にファンをつけた平成フラミンゴの今後

 そんな躍進劇を続けるふたりだが、YouTuber作家が予測する彼女たちの今後は?

「最近はUHA味覚糖のさつまいもチップス『おさつどきっ』の商品CMに出たり、AbemaTVのEXITの番組『青春スチャラカ学園』にレギュラー出演したりとYouTube以外のメディアでの活躍も増えてきました。YouTubeの数字は圧倒的で、Z世代からの支持も強いですが、テレビ層にはまだその影響力が伝わっていません。

 これまではテレビ側もYouTuberの扱い方があまり上手ではなかったですが、冠番組やレギュラー番組となると本領が発揮されるんじゃないかな、と思っています。彼女らもあくまで自分たちのYouTuberとしての活動に繋げるためにテレビやCMといったメディアを活用していると思われるので、今後も主戦場はYouTubeなのかなと」(すのはら)

 いまやテレビのレギュラーは目標ではなく通過点。新世代YouTuberとして躍進を続けるふたりにさらなる注目が集まりそうだ。


こす.くま(Kosu.Kuma)
すのはら・たけちまるぽこによるYouTube作家チーム。個人、企業を問わず、YouTubeチャンネル運営におけるブランディング・企画制作・マーケティング支援を行っている。制作協力した動画に『ウ”ィ”エ” ヒカキンVer.(HikakinTV)』、『この動画は再生回数0回を目指します。(東海オンエア)』、『泥酔したら即帰宅「地獄の48時間」ネクステ初旅行(ヒカル)』などがある。