お金で損するだけじゃない!「永代供養墓」トラブル(※写真はイメージです)

 お墓の情報サイト「いいお墓」が2022年1月に実施した「第13回お墓の消費者全国実態調査(2022年)」によると、購入したお墓の種類は、樹木葬が41・5%で最多、次いで一般墓が25・8%、納骨堂が23・4%という結果に。また、同サイトの調査によると2018年までは一般的な石のお墓が最も多く、2019年以降は逆転して樹木葬が最多となっている。

樹木葬が選ばれる背景

 一般墓は、維持費や管理費が必要だが、樹木葬の場合、永代供養料を支払うことで管理費等の経費が発生しないことが多い。

 樹木葬、一般墓、納骨堂、それぞれ永代供養墓として購入した場合、契約後にトラブルが生じることも。どのようなポイントに気をつければよいのか。

「樹木葬とは、墓石の代わりに樹木をシンボルとするお墓のこと。基本的に、墓守を必要としない永代供養墓です。近年は少子化を背景に、亡くなった後にお墓を管理する人がいないというケースが増えています。生前墓として永代供養墓の樹木葬を選ぶ人もいます」(霊園事業関係者、以下同)

 自然に返りたいという考えも樹木葬を選ぶ理由のひとつ。

「緑が豊かなど景観の良い場所が多いのも選ばれる理由だと思います。また、『宗教不問』の霊園が多いことも人気の高まった背景として挙げられます」

自然の樹木だけに枯れてしまうことも

 お墓を継ぐ人がいなくても選択しやすい樹木葬だが、気をつけたいポイントが。

「自然が多い郊外にある樹木葬は、交通アクセスが悪くなることがあります。また、シンボルが樹木であるという特徴上、季節の移ろいによって景観が変わったり、購入時と違う印象を受けることも。ごくまれに木が枯れることもありますが、そういった場合には新しい樹木を植えるといった管理がなされるようです」

 また、コストについても気をつけたい点がある。

「墓石代がかからないので、初期投資こそ安く済みますが、アクセスの良い場所にある個別に埋葬する樹木葬に、さまざまなオプションをつけると、従来の一般的な石のお墓と同程度の費用が発生することもあります」

 家族にしても、合祀型の樹木葬で名前のプレートがないと手を合わせる対象として違和感を感じることも。

「例えば他の方の遺骨と完全に混ぜてしまう合祀型の樹木葬では、個別で定められた指定の場所ではなく、まとめて納骨されます。家族間でもそれぞれ価値観が違うので、やっぱり個別の墓石が良かったという人が出てくるケースもありえます」

 また、個々の区画に埋葬する樹木葬でも、一定の期間が過ぎると合祀される場合もあり、その際は遺骨を取り出すことは難しい。

 永代供養墓は樹木葬以外にもさまざまなものがある。

「例えば、見た目は一般的なお墓と似ていて、違う点は、先祖代々で入るのではなく、故人ひとり、もしくは夫婦だけなど小さい単位で入ることです。永代供養をしてもらいたいけれど、他人と一緒のお墓に抵抗がある方に選ばれています。こちらも継承はできず、一定期間を過ぎると他の遺骨と合祀されるのが一般的です」

 樹木葬と同じく、こちらにも気をつけるポイントが。

「永代で個別の区画にご遺骨を埋葬する場合、スペースが小さいことが多いです。スペースが埋まっていたらご家族でも近くの場所に入れないこともあります。また、期間が過ぎて合祀されると、後からご遺骨を取り出すのは難しいです」

CMでよく見る納骨堂

(※写真はイメージです)

 テレビCM等も行われている納骨堂も、永代供養墓の一種。

「一般的なお墓と比べるとスペースは狭いですが、その分、費用を抑えることができます。都市部で人気が高く、お参りもしやすいのも良い点。ただ、3年、13年、33年など利用期間が決まっている場合が一般的で、その後は合祀されます」

 何年間利用できるのか確認しておくことが重要。他にも気をつけておきたい点がある。

「納骨堂の場合は、建物の老朽化の心配があります。管理費の一部に修繕費用として含まれているケースも。さらに、極めて稀なケースですが、経営破綻や、お寺などの運営母体の継承者がいなくなり、トラブルとなるケースもあります」

 やはり事前に経営状況や契約の確認はしっかりとしておきたい。

 費用面が魅力の永代供養墓だが、一般墓とどれほど違うのか。

「独身や夫婦だけなど、人数が限られていれば一般墓よりも費用が抑えられることも多いです」

 '22年の一般墓の平均購入価格は158・7万円。他の遺骨と一緒に埋葬される合葬型の永代供養墓は3万から10万円くらいとかなり費用は抑えられる。納骨堂はタイプによって違うが、'22年の平均購入額で83・6万円、樹木葬では69・6万円というデータがある。

 樹木葬、納骨堂、いずれにしても、永代供養墓ではやはり契約段階でしっかり事前確認したい。

「永代使用料は土地を取得するときのお金です。すべて払ったとしても、管理費は必要だったなど購入後に気づく人もいます。

 それに、あくまで使用料なので、その土地の所有権が手に入るわけではない点に注意しましょう」

生前に家族間での話し合いが大切

 霊園事業関係者は、トラブルの原因で多いのは家族間での意見の食い違いだと言う。

「合祀型のお墓に納骨した後で『なんでここに入れちゃったんだ!』と後から親戚に言われるというトラブルは聞いたことがあります。

 本人が望んでいたとしても、最初から合祀に入るケースなどは、一般墓に入るものと思っていた親戚から非難されることもありますね」

 永代供養墓の需要は増えているが、先祖代々のお墓に入るべきという従来の考えの人も多い。

 親戚がいる場合は事前に相談するのが無難だろう。

「お世話になっているお寺があることを知らずに別のお墓を買ってしまい、親戚から『なぜ檀家になっているお寺でお墓を買わないのか』と言われたという人もいます。そうしたトラブルから、その後、親戚間で疎遠になったと聞くこともあります」

 永代供養のお墓は想像以上に多種多様。

「海洋散骨、さらにはバルーン葬、宇宙葬というのもあります。火葬場から骨を引き取らずに置いていく『ゼロ葬』というものが一時、話題になりました」

 “終活”という言葉が定着し、著名人が散骨を選ぶといった報道もあることから、注目度が上がっている。

「永代供養墓についても、種別に関して明確な線引きが難しくなってきているのが実情です。ご家族が何を叶えたいかを生前にはっきりさせておくのが大切です」

 直面してみないとなかなか考えることがない問題だが、どのような形があるかを調べたり、情報収集しておくのが重要といえる。

「家族や親戚間でのトラブルを未然に防ぐためにも、本人(自分)が何を重視するのか、希望を明確にし、しっかり家族や親戚と話し合っておくことが大切です」

<取材・文/竹腰奈生>