子どもから大人まで、時代を彩った数々の名雑誌たち

 1月25日、KADOKAWAはテレビ情報誌『週刊ザテレビジョン』が3月1日発売号をもって休刊することを発表。1982年に創刊し、週刊テレビ誌としては最大手だった同誌の終焉が波紋を呼んでいる。

時代を彩った雑誌が次々と休刊

 19日、総合週刊誌『週刊朝日』(朝日新聞出版)の休刊が、昨年末には漫画雑誌『イブニング』(講談社)の休刊が発表されたばかり。

 男性ファッション誌『MENS' KNUCKLE』(太洋図書グループ)や、漫画雑誌『まんがライフ』(竹書房)、といった大型雑誌も2022年に相次いで休刊した。雑誌市場が大幅に縮小するなか、このまま紙の雑誌はなくなってしまうのだろうか。

写真はイメージです

SNSやウェブメディアが台頭する時代において、雑誌の強みは“もの”として実際に所有できること。単行本やコミックス、CDにも通じることですが、スマホで情報自体を享受することはできても、実際に大きな誌面で写真を眺めたり、書棚に並べて所有感を満たしたりといったリアルな感覚を体験できるのは、紙の雑誌とデジタルメディアの大きな違いですね

 そう教えてくれたのは、甲南女子大学の米澤泉教授。そこで、今回は『もう一度紙で読みたい雑誌』について、30~60代の男女1000人にアンケートを実施。寄せられたコメントとともに、懐かしの雑誌を振り返っていこう。

【復活してほしい雑誌〈第1位〉】TokyoWalker(東京ウォーカー)59票1990年〜2020年6月20日発売号(C)KADOKAWA

 1位に輝いたのは『TokyoWalker』。「イベント情報や旬な話題が満載で、ヒマつぶしにはもってこいだった」(54歳・男性・埼玉県)と、首都圏のグルメや行楽情報を集めて人気を博したタウン情報誌だ。

『横浜ウォーカー』『九州ウォーカー』とともに休刊し、現在はウェブメディア『ウォーカープラス』で情報を発信し続けている。

 2位には『ROADSHOW』がランクイン。外国人スター俳優のグラビアを中心とした映画情報誌で、「スター俳優の来日時のオフショットやインタビューが好きで、付録も豪華だった」(53歳・女性・長崎県)との声も。

 雑誌自体は2008年に休刊したが、現在は『集英社オンライン』の映画情報コーナー(https://shueisha.online/roadshow)でレーベル復活を遂げ、映画記事を配信している。

「グルメや行楽、映画などの情報は、出先でも検索できて、そのまま予約までとれるウェブと親和性がとても高いジャンル。やはり紙媒体よりも便利なデジタルに移行するのは、時代の流れとしては仕方ないのかもしれませんね」(米澤教授、以下同)

 3位に挙がったのは『月刊少年ジャンプ』。かつては石ノ森章太郎の『サイボーグ009』や、ちばあきおの『キャプテン』といった名作も掲載しており、「『週刊少年ジャンプ』とはまた異なる魅力のある漫画が多かった」(45歳・男性・広島県)と、少年たちを夢中にさせた少年漫画誌だ。

 続く4位は『コミックボンボン』。ホビー漫画やギャグ漫画がメインコンテンツの小学生向け漫画雑誌で、「ガンプラ(『機動戦士ガンダム』シリーズのプラモデル)の情報が満載で、競合誌の『コロコロコミック』より好きだった。分厚い誌面を夢中で読みあさった」(37歳・男性・神奈川県)といった意見が寄せられた。

一時代を築き上げた数々の女性誌

【復活してほしい雑誌〈第5位〉】主婦の友28票(C)主婦の友社

 5位は『主婦の友』。1917年に『主婦之友』として創刊されて以降、料理や健康、育児などの情報を掲載する婦人雑誌の代表的存在だった。

「新婚時代に参考になる記事が多くよく読んでいた。家計管理がうまくできるようになったのは、付録の家計簿のおかげ」(59歳・女性・京都府)と、同誌は初めて家計簿を付録につけたことでも有名だ。

 また、10位には主婦向けの生活情報誌である『すてきな奥さん』がランクイン。「節約情報が他誌より多く、一般家庭の家計が紹介されていて参考になった」(41歳・女性・兵庫県)など、世の悩める主婦たちに“暮らしの知恵”を提供し続けた。

時代とともに専業主婦が減り、婦人誌もひとつの役割を終えたのだと感じます。休刊は、“主婦”や“奥さん”といった家庭での役割だけに縛られることなく、女性の生き方がより自由で多様なものになった変化の表れかもしれませんね」(米澤教授)

【復活してほしい雑誌〈第6位〉】AneCan(アネキャン)26票(C)小学館

 6位の『AneCan』は、20代後半から30代の独身女性をターゲットに据えたファッション誌。「10代のころは『CanCam』を、その後『AneCan』を読むように。エビちゃんみたいになりたかった」(36歳・女性・愛知県)と、専属モデルを務めた蛯原友里さんや押切もえさんに憧れた女性も多いようだ。

「多様な競合誌が多いなかで、『AneCan』にはキラキラとした“合コンファッション”も多かった気がします。女性ファッション誌は雑誌の世界観や服装、専属モデルなどを通して、キャリア志向なのか、マダム路線なのか、コンサバティブに生きるのか、ある意味で女性の生き方のロールモデルを提示していた側面もありました。

 誰もがアクセスできるウェブの情報と異なり、ターゲットを絞り込める紙の雑誌は“これは私のための雑誌だ”と思わせる力も強く、読者たちの生き方を肯定し、勇気づけるパワーを持っていたように思います

 7位は、写真週刊誌の草分け的存在である『FOCUS』だ。有名人の密会写真から政治事件、社会的な災害までを記録し、「今の『週刊文春』のように衝撃的なスクープを連発して、とてもスリリングな雑誌だった」(49歳・男性・埼玉県)との声も。

「スキャンダルから政治、経済、社会まで、さまざまな情報がごった煮でパッケージされているのも、雑誌の面白いところかもしれません。誰もがスマホを持ち、SNSなどにもリアルタイムで事件や事故の現場写真や動画がアップされる時代。週刊誌が持っていた影響力や役割も、少しずつ変化しているのでしょうね

【復活してほしい雑誌〈第8位〉】別冊花とゆめ22票(C)白泉社

 8位に挙がったのは、少女漫画誌『別冊花とゆめ』。かつては美内すずえの『ガラスの仮面』や魔夜峰央の『パタリロ!』といった名作も連載されており、「菅野文先生の『オトメン(乙男)』など、恋愛漫画の連載も多く、毎月キュンキュンしながら読んでいました」(35歳・女性・大阪府)といった声が寄せられた。

 9位はファッション誌『egg』「素人読者モデルがいっぱい登場して、プリクラやポラ写真もたくさんあって楽しかった」(37歳・女性・東京都)と、渋谷女子高生のリアルを切り取る誌面で、厚底ブーツやルーズソックス、ガングロメイクといった平成ギャル文化を牽引した。現在はウェブ版eggのほか、刊行形態を変えて年2回の紙媒体での復刊も実現している。

「素人読者モデルというのも面白い文化で、今でいうSNSのインフルエンサーのようなものだったように思います。新しい文化の発信地として“雑誌文化”というのは紙からウェブに引き継がれていったのかもしれませんね」

 現在進行形で失われつつある“雑誌のページをめくる”というリアルな体験。あなたがもう一度、紙で読みたい雑誌はなんですか?

米澤 泉○甲南女子大学人間科学部文化社会学科教授。専門はファッション文化論、化粧文化論で、扱うテーマはコスメから雑誌まで幅広い。『おしゃれ嫌い 私たちがユニクロを選ぶ本当の理由』(幻冬舎新書)など著書多数

「もう一度、読みたい雑誌は?」アンケート結果

 2022年12月28日、全国の30代から60代の男女1000人を対象に、インターネットアンケートFreeasyにて調査。休刊したものの、もう一度読みたい雑誌は何か? 1人につき2冊まで回答した結果を集計。

《1位》 TokyoWalker(東京ウォーカー)……59票

KADOKAWA/1990年〜2020年6月20日発売号

《2位》ROADSHOW(ロードショー)……47票

【復活してほしい雑誌〈第2位〉】ROADSHOW(ロードショー)47票1972年〜2008年11月21日発売号(C)集英社

集英社/1972年〜2008年11月21日発売号

《3位》月刊少年ジャンプ……40票

【復活してほしい雑誌〈第3位〉】月刊少年ジャンプ40票(C)集英社

集英社/1969年〜2007年6月6日発売号

《4位》コミックボンボン……32票

【復活してほしい雑誌〈第4位〉】コミックボンボン32票(C)講談社

講談社/1981年〜2007年11月15日発売号

《5位》主婦の友……28票

主婦の友社/1917年〜2008年5月2日発売号

《6位》AneCan(アネキャン)……26票

小学館/2007年〜2016年11月7日発売号

《7位》FOCUS(フォーカス) ……25票

【復活してほしい雑誌〈第7位〉】FOCUS(フォーカス)25票(C)新潮社

新潮社/1981年〜2001年8月7日発売号

《8位》別冊花とゆめ……22票

白泉社/1977年〜2018年5月26日発売号

《9位》eɡɡ(エッグ)……18票

【復活してほしい雑誌〈第9位〉】egg(エッグ)18票(C)ミリオン出版(C)大洋図書

ミリオン出版→大洋図書/1995年〜2014年5月31日発売号

《10位》すてきな奥さん……15票

【復活してほしい雑誌〈第10位〉】すてきな奥さん15票(C)主婦と生活社

主婦と生活社/1990年~2014年4月2日発売号


取材・文/吉信 武

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【出演】
TK(芸能記者)
あっきー(芸能記者)

【パーソナリティ】
八木志芳(ラジオDJ)

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