日本で進化を続ける“中華まん”

 寒〜いこの季節になると食べたくなる中華まん。コンビニでも安く手軽に買えて、小腹が空いたときに思わずパクリなんて人も多いのでは。そんな中華まんが全国各地で進化中。“ご当地中華まん”として年々盛り上がりを見せているのをご存知だろうか?

ラーメンと同様に日本で独自進化を遂げた“中華まん”

「ご当地食材、郷土料理も含むご当地グルメ、そこに行かないと食べられないご当地の名店のメニュー。そういったものが中華まんの具になっているのがご当地まんの定義となります」

 そう教えてくれたのは、2003年より中華まんのグルメフェス『中華まん博覧会』を開催している『ご当地グルメ研究会』代表の松本学さん。全国各地の中華まんを食べ尽くしてきたスペシャリストだ。

 そんな中華まんの歴史を紐解くと、室町時代に中国から伝わったものだと言われている。

1838年の書物『職人歌合画本』に、塩瀬総本家の始祖が成立した室町時代の饅頭売りの姿が描かれている(左側)。同書では「さたうまんぢう(砂糖饅頭)、さいまんぢう(菜饅頭)、いづれもよくむして候」と歌われている(国立国会図書館デジタルコレクションより)

いま本店は東京にあるんですが、当時は奈良にあった『塩瀬総本家』の始祖が中国伝来の肉を詰めて食べる饅頭(マントゥ)にヒントを得て作ったと言われています。

 でも、当時は仏教の教えで肉が食べられなかったので、代わりにあんこを詰めて提供していたそうなんです。それが評判となり各地に広まっていった。中華まんはあんこの入った“おまんじゅう”の元祖でもあるんです」(松本さん、以下同)

 時代が流れ中国スタイルのいわゆる“豚まん”が日本に初めて登場したのは大正時代になってから。神戸、そして新宿で産声を上げた。

エビチリ、牛たん、松坂牛…増える“ご当地中華まん”

神戸の南京町の中華街に、いまでもあります『老祥記』が1915年に日本で初めて豚まん専門店として開業しました。時を同じくして1927年。新宿の『中村屋』の創業者が中国で豚まんを食べて、日本人向けにアレンジした“天下一品支那饅頭”を発売。

 これまでごく一部の中華料理店でしか食べられなかった中華まんは、一般の人にも親しまれるようになっていきました」

 その後、ご当地中華まんのアイデアのルーツとなった商品が誕生する。

昭和30年代のころに東京のある有名中華料理店が、エビチリまんとか中華料理のさまざまな具材を中華饅頭に入れて売り出したんです。

 それに刺激された全国各地の中華まんを作る職人や企業がさまざまな具材を入れるようになり、その文化が発展。片手で食べられる手軽さもあり、高速道路のサービスエリアや道の駅などでも販売され全国に広まっていきました。

 これと同時に、例えば仙台だったら牛タン、三重だったら松坂牛と他との差別をはかるために地元の名産などが使われるようになり、これは商売になるということでご当地中華まんが一気に増えて行きました

こんなものまで具材に!? 驚きの“変わり種”中華まん

 いまでは毎年、全国で新たな商品が続々と誕生。そんなご当地中華まんの中から、松本さんも驚いた変わり種の中華まんを教えてもらった。

「びっくりしたのは東京・浅草の“もんじゃまん”。紅生姜とかベビースターラーメンみたいな麺も入っていて、間違いなくもんじゃなんです。味はソース味で中華まんの皮とマッチするのが非常に面白いですね。

 それと山形で『アイデアのおもちゃ箱』という会社が“馬肉ラーメン肉まん”、“辛みそラーメン豚まん”、“鳥中華まん”という地元のラーメンシリーズを作っているんです。というのも、山形は消費量日本一になったくらいのラーメン王国。麺もチャーシューもめんまも入っていて、これも驚きました

(左上から)山形の“鳥中華まん”、“辛みそラーメン豚まん”、“馬肉ラーメン肉まん”。(右下)中の具材は完全にラーメン

 京都、栃木からは、地元で人気のこんな中華まんが。

「いつも行列ができている京都で有名な『きらり』というつけ麺屋さんが中華まん専門店を作ったんです。つけ麺の魚介豚骨スープを活かした中華まんなんですけど、うまみが凝縮されていてめちゃくちゃうまいんです。

 あと栃木に『ツルミ食堂』という人気店があって、そこの名物がカツ丼なんです。そのカツを卵でとじた部分を中華まんに入れた“カツ煮まん”を作ったんですが、皮に米粉を使っているんですよ。まさにカツ丼を食べている感じで、旨味がぎゅっと詰まってて、そのアイデアが面白いです

京都のつけ麺屋『きらり』が作った“魚介豚骨肉まん(きらりの肉まん)”

芸能人も絶賛する名店の中華まん

 芸能人もとりこになった名店のご当地中華まんも紹介してくれた。

長崎にある地元の人は知らない人がいない『桃太呂』の豚まん。ひと口大の豚まんで、使っているのは地元産を中心とした豚肉と玉ねぎのみですが、味が凝縮していてすごい。秋元康さんが日本一の手土産として選んだり、大仁田厚さんは1回の来店で100個くらい食べるという逸話が残っているほど。

 あとは銀座にある『ギンザマン』の五目まんは巨大なのにあっさりしていて、年配の方でもペロリと食べられちゃう。昔、銀座によく通っていたみのもんたさんが、夜中もやっているので飲んだ後に立ち寄って食べていたという話もあります

長崎にある名店『桃太呂』の豚まん。秋元康が日本一の手土産と絶賛

日本全国の中華まんが埼玉県・川越に集結!

 そんなご当地中華まんが一堂に会する『中華まん博覧会』が2月4日より14日まで埼玉県越谷市の『イオンレイクタウン』で開催。昨年まではコロナで中止となり開催は3年ぶりだそう。

『中華まん博覧会』2023年2月4日より14日まで、埼玉県越谷市の『イオンレイクタウン』で開催

「今回は初めてゲスト店舗として、北海道釧路の『よしやすのぶたまん』と富山県富山市『越中まん』が参加されます。横浜中華街の元祖パンダまんシリーズなどかわいいキャラクターのものもあったりと、“映え映え”な中華まんもありますので、ご当地中華まんを味わいに来てください」

魅惑のご当地中華まんの世界を、家族と友達と楽しんでみては?

お話を伺ったのは…松本学さん 『ご当地グルメ研究会』代表。『ご当地フードグランプリ』などグルメイベントの企画運営や、各種メディアでご当地グルメ識者としても活躍。