『スシロー』での迷惑行為後にドヤ顔(滝沢ガレソツイッターより)

 連日各メディアで報道が続いている回転寿司チェーンを始めとする飲食店での迷惑行為。中でも大騒動となっているのが、回転寿司『スシロー』の岐阜県内の店舗で、高校生の男性客が醤油ボトルの注ぎ口や、未使用の湯飲みをペロペロと舐め回して元の場所に戻したり、回転レーン上の寿司ネタに自身の唾液をつけた指で触れたりする行為を収めた動画だ。

迷惑行為、動画撮影者と投稿者の違法性は?

「男性の向かいに座っている友人と思われる動画撮影者は、男性の行為に対し、『えっきもっ!』『お前マジで~。ハッハッハ。ヤバ!』と、笑いも交え楽しそうにしており、男性を止める素振りはありませんでした。

 また、その動画撮影者と同一人物かは不明ですが、男性とは別の人物が動画をインスタグラムに投稿したようです。動画には男性へのメッセージか、『もっと大人になれよ』というテロップに、男性のものらしきインスタグラムアカウントへ『@』付きのメンションも載せられています」(スポーツ新聞記者)

 この動画は1月末、瞬く間に、多くの一般市民やインフルエンサーなどによりネット上で拡散され、男性への批判が殺到する事態に。男性の本名や通っていた高校名までもが晒されることになった。

 動画拡散後、ネット上では『スシロー』がいつになく閑散としているとの報告が多数あがり、また因果関係は不明ながらもスシローの親会社である『FOOD & LIFE COMPANIES』の株価は一時暴落。時価総額約168億円も下落したとみられる。

 被害を受けたスシローの運営元『株式会社あきんどスシロー』は、『迷惑行為の当事者と保護者から連絡があり、お会いして謝罪を受けました』としながらも、『刑事、民事の両面から厳正に対処してまいります』との声明を発表。警察への被害届も取り下げていないようだ。

 また、男性が通っていた高校には苦情の電話が殺到するなどし、男性は“これ以上、学校に迷惑はかけられない”との理由で高校を自主退学したと『NEWSポストセブン』(2023年2月9日配信)が報じている。

 ただ、一連の報道を受け、ネット上では、

《スシローさんは被害届提出して犯人特定出来たら実行者、撮影者、投稿者、同席者グループ全員に刑事と民事で裁きを受けさせるべき》

《『撮影者』と『SNSへの投稿者』も同様に罰されるようにするのが、事件を防ぐのに1番効果的だと思う》

《張本人はもちろんだけど、配信サイト側が投稿者にも重い罰を与えても良いのでは》

 と、類似の迷惑行為抑止のため、男性だけでなく、動画の撮影者・投稿者にも厳罰を与えるべきだとの声が多い。

 それどころか、

《最近飲食店のテロ動画が出回ってるけど、投稿者の心情が一切分からん。スシローの件で訴訟起こしてるのに自分は大丈夫とでも思ってんのかよ》

《個人的な意見だけど。スシロー事件で1番悪いのはこれをネットに投稿した人だと思う》

《知らなくていい情報を上げられた結果、不快になったわけで、不適切行為をしていた子よりも動画を上げた人に対する怒りのほうが強い》

 と、不快な動画を日本中に知らしめることとなった動画投稿者への強い憤りを抱いている人も少なくない。

弁護士の法律的見解

 今回の『スシロー』騒動以降も、迷惑行為動画の拡散が後を絶たない状況だが、実際に動画投稿者・撮影者はどんな場合に罪に問われるのだろうか。

ベリーベスト法律事務所杉山大介弁護士は以下のように解説する。

――迷惑行為を実行した男性だけでなく、動画の撮影者・投稿者は罪に当たらないのか?

「法的責任を問う場合、違法行為があったのかが当然の前提になります。

 唾液をつける行為が器物損壊なりで違法だとしても、動画で撮影する行為そのものは違法ではないです。

 違法な行為によって生じた結果は法的な損害ですが、そうではない損害は、法律の関知するところではありません。

 まず、どこが違法行為なのかという点から考えないと、法律の話においては判断を誤ります」

――どのような場合、動画撮影者・投稿者も共犯となるのか?

「撮影者も違法行為をしていたと言えるのは、元々一緒にこういう行為をしようと打ち合わせていたりと、唾液をつける行為を共同して行ったと評価できる時です。

 この場合、刑法上は共犯という形で、民法上は共同不法行為という形で、法的責任が生じます」

――ネット上で迷惑動画を拡散した場合はどうか?

「拡散した人間などに、そこまでの共同性は認められません。事実を他人に伝えること自体は、本来は適法な行為であり、違法な行為が起きること自体に関与があったという前提がないと、法的な責任を問うことはできません」

 本日10日、『スシロー』騒動での動画の撮影者と、SNS上で最初に動画を拡散させた知人とみられる関係者も含め、計数人を月内に書類送検する方針と共同通信が報じているが、刑法上の共犯、民法上の共同不法行為は認められることになるのだろうか。今後の捜査が待たれる。

お話しを伺ったのは……杉山大介●弁護士。ベルギー育ち。刑事事件を中心に扱う法律事務所を経て、ベリーベスト法律事務所に入所。学生時代には200単位近くを取得するなど知的関心が広く、当事者や問題状況にあわせた、アラカルトなサービスを提供している。趣味はZUMBA、太極拳、ミュージカルなどのステージ観賞。

杉山弁護士のプロフィール:https://www.vbest.jp/member/detail/526/

ベリーベスト法律事務所:https://www.vbest.jp/
 

 

甘だれの容器に醤油を入れる女性(SNSより一部加工、以下同)

 

甘だれの容器に醤油を入れる女性(SNSより一部加工、以下同)

 

甘だれの容器に醤油を入れる女性(SNSより一部加工、以下同)