左から風間俊介、川口春奈、千葉雄大、北村匠海

 昨年10月期に放送され、大ヒットとなった『silent』(フジテレビ系)に続き、1月からは『星降る夜に』(テレビ朝日系)がスタート。登場人物が手話を使うドラマが続いているが、その手話の腕前のほどは? ろう者のジャッジは予想以上に辛口だった……!

『silent』に『星降る夜に』演者の手話の腕前は

 話を聞かせてくれたのは『silent』の目黒蓮や『星降る夜に』の北村匠海と同世代の20代男性。生まれたときから耳は聴こえない。かつては演技をした経験もある、子を持つ父親だ。

どちらの作品も頑張って“日本手話”をやっているのは伝わるんですが、聴こえる俳優さんが手話で演じることは、例えるなら、日本人が外国語で演技をしているのと同じで。手の形は上手なんですが、目線や頷きや顔の表情などが……。細かすぎると思われるかもしれませんが、ネイティブが見ると、そういった違和感はどうしても覚えてしまいます

 そもそも手話は2種類に分けられる。先天的に聴こえない人が使うのが“日本手話”。文法は日本語とは異なり、“S(主語)がV(動詞)する”という流れゆえに、どちらかというと英語に近い。もうひとつが“日本語対応手話”で、後天的に聴こえなくなった人に使われることが多い。日本語に手話を当てはめていくスタイルなので、こちらは声を出しながらできる。

「もちろん手話を覚え、そして演技しているすべての俳優さんがすごいと思っています。ただ『silent』は“これは何を言ってるのかな?”“字幕と手話が合ってない”“文法がおかしい”と感じる場面はけっこうありました。俳優さん側の問題ではなく、ドラマの台本の日本語を手話に訳した方の力量の問題だったと思います

 ろう者の間で“あれはないよね”という話は、かなりよく出たという。

ただ、僕の妻もろう者ですが“めめ(目黒蓮)、カッコいい!”と夢中でした(笑)。ろう者もいろんな見方をしているということです。ただ、僕もストーリーはとてもよかったと思っています。『星降る夜に』は現時点では、さほど手話に違和感はないですね

『星降る夜に』のあのシーンに抱いた懸念、夏帆よりも川口春奈

 そんな『星降る夜に』だが、第1話の冒頭に思うところがあったという。

「一星(北村匠海)が初対面の鈴(吉高由里子)の写真を無遠慮に撮り、キスまでしてしまう。“ろう者ってこんなに失礼な行動をするの?”と変な誤解が生まれるんじゃないかと、心配になりました。僕は子どもに習い事をさせているので、聴こえる人との交流もたくさんあります。

 僕がろう者であることをまったく気にしない人もいれば、警戒する人ももちろんいます。警戒心の強い人があの場面を見たら……と思うと、やはり心配です。あと声を文字化するアプリ『UDトーク』が両作品で大活躍していますが、実際に使ってみるとよくわかると思いますが、ドラマほど精度は高くありません」

 出演俳優たちの手話の腕前は、やっぱり気になるところ。

「『silent』の目黒蓮さんは中途失聴の役なので、立場が違う僕がコメントするのも……なので控えておきます」

 『silent』の夏帆の手話はSNSなどで“すごく上手”と話題になっていたが、

夏帆(31)

「夏帆さんの役は、僕にはどうしてもろう者には見えませんでした。手話がオーバーすぎて、しつこかった。おそらく“手話には表情が必要”と知ってくれて、それを一生懸命やった結果、大袈裟になり、違和感になってしまったんだと思います。

 一部では“顔芸”と言われていましたから。努力の結果であることはもちろんですが……。実際のろう者は、楽しいときなどには大きなアクションをしますが、普段の会話はもっと落ち着いています。そういう意味では、川口春奈さんの手話は自然でしたね。川口さんは聴こえる役だったこともあるのかもしれませんが、控えめなのが逆にすごく自然で。“センスあるな”と思いました

 なんと、物語とは真逆の結果に……! さらに『silent』で手話センスを感じたのは、手話講師を演じた風間俊介。

風間さんの手話は自然で、びっくりしました。手話教室の同僚を演じていたのは江副悟史さんなんですが、ろうの俳優として非常に有名な方です。お人柄も素敵で、手話を教えるのもすごく上手。江副さんと一緒のシーンもあった風間さんは、江副さんのいい影響を受けたのかもしれないなと思いました

北村匠海と千葉雄大の下ネタも

左から『星降る夜に』で一星の同僚・佐藤春を演じている千葉雄大(33)、遺品整理士・柊一星を演じている北村匠海(25)

 では現在放送中の『星降る夜に』。北村匠海演じる一星のバッグハグからの“好き”が胸キュンだと話題になっているが、出演者で手話センスがあると感じるのは?

北村匠海さんと千葉雄大さんです。ろう者の役の北村さんは、顔がいい。イケメンだと言いたいのではなく(笑)、表情がすごく文法に合っているなと感じます。千葉さんは聴こえる同僚の役ですが、最初“どっちがろう者なのかな?”と思いました。

 ふたりの手話のレベルは同じくらいですね。そして、このふたりによる手話のおしゃべりはすごくいいですね! ろう者と聴者が、手話で楽しそうに話している様子が描かれているのはうれしいです。でも、ろう者が手話で下ネタばかり話しているって思わないでくださいね(笑)

 手話を扱うドラマが立て続けに放送されていることについて尋ねると、

「やっぱり、聴こえる人の多くが手話を使ってる人を見る機会って、あまりないと思うんですよね。テレビの影響力はすごいなと思っています。子どもの習い事で一緒になるママ友たちはこぞって『UDトーク』を使い始め、“プリン”の手話を僕に見せてきたり(笑)。さらには“じゃあ、ゼリーはどうやるの?”と尋ねられたり。人気の俳優さんが手話を使うことで、聴こえる人の中で手話に興味を持ってくれる人が増えたことが、とてもありがたいです」

 実際、両ドラマの影響で手話講習会の受講生は増えていると微笑む。

「僕はリアルタイムでは知らないんですが、『愛していると言ってくれ』や『星の金貨』(ともに'95年)、『オレンジデイズ』('04年)が放送されたときにも、手話はブームになったと聞いています。もちろんブームですから波があり、それが去っていくのは当然です。今回は第何次かのブームだと思うんですが、それでもみなさんに手話が広まっていく環境が作られたことに感謝しています」

川口春奈、目黒蓮、鈴鹿央士のオフショットは“すてきすぎる”と大反響(番組公式インスタグラムより)

 

『silent』のロケ地・世田谷代田駅はファンの聖地になっており、平日でも多くの女性の姿が

 

タワレコ店内にはスピッツコーナーが(ドラマ『silent』ロケ地)

 

想が腰かけていた駅前のベンチ(ドラマ『silent』ロケ地)