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 家計の中で大きな比重を占める光熱費。今、ウクライナ情勢の影響による燃料費の高騰で、光熱費の大幅な値上がりが世界各地で深刻な問題となっている。

上がり続ける光熱費最大は3月

 とはいえ、この寒さの中、暖房を使用せずに過ごすのは、文字どおり“自殺行為”。実際、天然ガスの価格が昨年の4倍に跳ね上がったヨーロッパでは、電気代を払えず、寒さによって死亡する人が多数出ている。

 また、昨年10月から電気・ガス料金が80%も値上がりしたイギリスでは、「暖房をとるか食事をとるか」という言葉があるほど、人々は究極の生きる選択を迫られているのだとか。

「日本でも世界的な燃料費高騰に加えて円安もあり、やはり昨年から電気料金の値上げが相次いでいます。家計への非常に大きな打撃となっています」

 と、節約アドバイザーの丸山晴美さん。

「一般的に、熱を発する家電は、ものを冷やす家電よりも多くの電力を消費します。そのため、1年でもっとも平均気温が低い2月分の請求書が届く3月は光熱費が最高額になります」(丸山さん、以下同)

 ここ最近の上昇で、月に数万円も負担が増えた家庭もあるというから驚きだ。

冬の時季は総じて光熱費が高く、2〜3月が最高額になる 出典:総務省「家計調査(2021年)」

 SNSなどで主婦の視点からおトク情報を発信しているつくもはるさんは、ため息交じりにこう話してくれた。

「冬場に光熱費が上がるのはある程度は仕方ないと覚悟していましたが、最近の値上がりは恐ろしいですね。わが家ではスーパーに行く頻度を減らすなどして、家計を切り詰めています」

恐怖の値上げに主婦の悲鳴も

 節約術や貯金にまつわる著書を出版している主婦、ののこさんも表情を曇らせる。

「電気代の値上げからくる物価上昇もばかになりません。必要のない部分は切り詰めていますが、このまま、さまざまなものの値上げが続くのなら、仕事を増やして、もっと稼ぐしかないかなと……」

 なくてはならない電気やガス。その料金高騰はあらゆる分野に影響するため、サービスや商品への価格転嫁もいよいよ本格的に始まり、2月に値上がりした食品類は5000品目を超えた。

 歴戦の節約主婦たちも悲鳴を上げる緊急事態。まさに負けられない戦いが、ここにある!

 つくもはるさん、ののこさんが実践している節約術は上で解説。すべて実践すれば年10万円節約も可能だ。

「この危機に、政府も負担軽減策を打ち出しています。2月からの電気・ガス代には、国から補助金が出ることになっているんです。このため大手電力10社や大手都市ガス4社では、電気、ガス料金が各社で実質値下げに。

 しかしこれは一時的なことで、全国で多くの電力、ガス会社が4月以降、さらなる値上げを申請しています。地域によっては春から、補助すら吹っ飛ぶほどの料金高騰が家庭を襲うことになるんです」

 しばらくの間、この高騰が落ち着く様子はないとのこと。この事態に立ち向かうためには、やはり少しでも光熱費を抑えていくしかない。

 丸山さんがすすめる冬の光熱費節約術のキーワードは「暖房効率」。一度、暖房で暖めた空気を外に逃さない工夫をすれば、エアコンの設定温度を下げることができ、電気代の大幅な節約につながるという。

プロが実践!冬を生き抜く節約術

「まず注目したいのは、窓まわりです。カーテンは遮熱性のある厚手のものを使用して、室内の暖かい空気を逃さないようにしましょう」

 窓は、熱が一番逃げやすく、冷気が入ってきやすい場所。重点的に対策したい。

「ユザワヤのオーダーカーテンがおすすめ。大型店舗なら生地代だけでカーテンを仕立ててくれるんです。

 手芸専門店だけあって布の品質は良いですし、自分の家の窓にピッタリ合ったカーテンを作ってもらえます。夏も外の熱い空気を遮ってくれるので、一年を通して節電が見込めますよ」

 さらに丸山さんがプッシュする暖房器具は、意外にも、昔ながらのこたつ。

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「部屋全体ではなく、狭い範囲を重点的に暖めるこたつはコスパが良く、非常に優秀な暖房器具。初めは高温に設定しておいて、中が十分暖まったら低温に切り替えましょう。

 さらに熱を逃さないよう上掛けを二重にしたり、下に断熱マットや保温シートを敷いたりといった工夫をすれば完璧です」

 断熱マットや保温シートは滑って事故につながることもあるので、滑り止めを敷くのがポイントだ。

 日常生活の些細な習慣も、見直せば大きな節約になる。

「例えば、毎日使うお風呂。給湯パネルをずっとオンにしていませんか? 給湯が自動運転になっていると、浴槽のお湯が勝手に追い焚きされてしまいます。

 追い焚きはガスを結構使いますし、パネル電源を維持する待機電力もムダのもと。こまめなオンオフを心がけましょう」

 少しの工夫と生活の見直しで、節電、省エネは大きく捗る。今日からできる節約術を駆使して“光熱費最大の3月”を賢く乗り越えよう。

昔ながらの節約術で大幅ダウン!

 つくもはるさん流 3月はこうして乗り切る!

トイレでも熱を逃さない工夫を/月278円OFF

 便座や温水洗浄便座の温度を低めに設定。その分、トイレのふたは毎回きちんと閉める。こうすれば熱が逃げないので、低温でも座った時のヒヤッと感はありません。

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《丸山さんアドバイス》
 
習慣化しやすく、いい方法です!ふたを閉める習慣がついたら暖房便座は切って、100円ショップでも買える便座シートを使ってみて。寒さを防ぎつつ、さらなる節電が見込めますよ。

リビングに全員集合!/月769円OFF

 夜は、家族全員なるべくリビングに集まって、 “ウオームシェア”を実践。一緒にテレビを見たり、ゲームをしたり、家族の会話も増えて一石二鳥♪

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《丸山さんアドバイス》
 特に一軒家だと、それぞれが自室で過ごしがちで、各部屋の暖房費がかかることに。みんなでひと部屋に集まって暖房や電気を共有しながら、節約ついでにコミュニケーションも深めちゃいましょう。

鍋料理で暖房効果!/月1227円OFF

 この季節は、鍋料理をよく作ります。テーブルの上にカセットコンロを置いて、湯気をたくさん出しながら鍋を囲めば、身体の外からも内からも温まること間違いなし。

《丸山さんアドバイス》
 ガスの炎で室内の温度もアップ!扉を閉めるなどして部屋を仕切り、暖める範囲を減らすとさらに効果的です。もちろん、たまの換気は忘れずに。

加湿器で乾燥対策

 湿度計を部屋に置いて、乾燥のしすぎに注意しています。加湿器がない部屋には、湿らせたタオルや洗濯物を干して、冬の適正湿度である55%〜65%前後を意識。

《丸山さんアドバイス》
 湿度が上がると体感温度も上がる。乾燥対策で暖房の設定温度を下げる効果アリ。加熱式の加湿器はタンクのお手入れが楽ですが、電気代がかかるので要注意。

つくもはるさん●兵庫県在住。夫、長男、長女、次男の5人家族。さまざまなメディアでプチプラグッズやおトク情報を紹介するライターとしても活動中。

最新節約術でムリせずしっかり防衛

 ののこさん流 3月はこうして乗り切る!

消し忘れ防止にセンサーライト/月25円OFF

 廊下や玄関、トイレなど、長く滞在しない場所の照明をセンサー式に付け替え。つけっぱなしを防げるし、家族にいちいち注意する手間も省けます。

《丸山さんアドバイス》
 こまめに電気を消す習慣をつけることは大事ですが、小さなお子さんがいたりするとなかなかうまくいかないもの。LEDのセンサーライトにすれば楽に節電ができるので、ぜひ活用してみてください。

電力会社の見直し/月4000円OFF

 電力自由化で新電力会社にかえましたが、知らないうちにプランが改定されていて、もはやおトクではなかったことが明らかに! このタイミングでしっかり見直す必要あり。

《丸山さんアドバイス》
 大手の電力会社から新電力に乗り換えた人は要注意!実は今、燃料費の高騰と連動して、大手以上に料金を値上げしている会社が多いんです。クセモノは、「燃料費調整額」と「電源調達調整費」。とにかく一度、明細を見てみましょう!

床暖房で省エネ

 床が暖かいだけで、体感温度は段違い。エアコンや石油ストーブなど、風が出る暖房と違って乾燥もしないから湿度が保てるところも◎。

《丸山さんアドバイス》
 家庭によって節約効果に差がありますが、エアコンよりも安くなることが多いです。暖かい空気は上にのぼる性質があるので、床暖房は部屋全体を効率よく暖めてくれます。
 ヒートショック対策にもバッチリ。リフォームなどの際には検討してみて。

基本料金のかからない新電力会社「おてがるでんき」を契約していたが、「電源調達調整費」の項目が高く「東京ガス」に乗り換えた。それに加えて節約を徹底したところ、4000円減に。値上がり時代にこれはすごい!

ののこさん●神奈川県在住。夫、長女、長男の4人家族。3年間で500万円の貯金をした節約主婦。著書に『スッキリ家事でお金を貯める』(小学館)など。

節電のプロがオススメ!100均節電グッズ

 費用は100円、効果は絶大! 丸山さんイチオシの節電グッズであったかな冬を過ごそう。

ソフト湯たんぽ/セリア

 お湯を入れたらぽっかぽか

ソフト湯たんぽ/セリア

 手先やお腹をじんわり温めてくれる湯たんぽ。縦16.5cmと持ち運びしやすいサイズで、家でも出先でも使いやすいのがうれしい。お湯を沸かすだけの、繰り返し使える節約の強い味方だ。

つなげて使えるアルミ断冷カーテン/ダイソー

 窓からの冷気を遮断でお部屋あったか

つなげて使えるアルミ断冷カーテン/ダイソー

 窓からの冷気をシャットアウトするにはこれ。窓とカーテンの間につるすだけで保温性が大幅アップ。窓の大きさや形に合わせて自由にカスタマイズできる。

アルミ保温シート/キャン★ドゥ

 浴槽にかぶせるだけで、追い焚きとはおさらば

アルミ保温シート/キャン★ドゥ

 浴槽のサイズに切ってお風呂の内ぶたにすれば、お湯を冷めにくくすることが可能。さらに、こたつの下に敷けば床からの放熱をカットして暖房効率のアップも。ガスや電気を使わず保温して、ムダなエネルギー消費を減らそう。

実は都市伝説!節電の誤解

 その意識、もう古いかも……。今すぐ常識をアップデートしてムダを省こう!

「電気はこまめに消すよりつけっぱなしのほうがお得」!?

「電気はつけるときに一番電力を消費するので、短時間でのオンオフは電気代のムダ」という、大昔からささやかれている噂。

 でも、それは白熱電球時代の話。性能の上がったLEDであればこまめに消すべき。1分以上離席するなら潔く電気を消してしまったほうがおトク!

「電気料金は深夜が安い」!?

 多くの主婦に今も根付くこのイメージ、実は、原子力発電が主流だったころの名残なのだとか。電力需要に合わせて出力を調整するのが難しい原発では、深夜に余剰電力が発生してしまう。

 そのため、夜に多く電気を利用してもらうために、深夜に電気料金を割引く制度があったのだ。現在はプランにもよるが、時間帯によって電気代が変わることはほぼない。「夜は安い」は幻想なのだ!

「冬の冷蔵庫の設定は“弱”で十分」!?

 よほど古いものを使っているならともかく、最新家電の“自動”設定を信じるべし! 今の冷蔵庫の多くには、家族の生活パターンを勝手に読み取り、時間帯や内容量によって温度や冷やし方を変えるという機能がついている。

※画像はイメージです

 節電を考えるなら、10年以上前の冷蔵庫は買い替えて、自動で楽に節電しよう。

丸山晴美さん●節約アドバイザー、ファイナンシャルプランナー。身の回りの節約術やライフプランを見据えたお金の管理運用アドバイスなどをメディアで発信している。近著に『節約家計ノート2023』(東京新聞出版)など。
教えてくれた人……丸山晴美さん●節約アドバイザー、ファイナンシャルプランナー。身の回りの節約術やライフプランを見据えたお金の管理運用アドバイスなどをメディアで発信している。近著に『節約家計ノート2023』(東京新聞出版)など。

(取材・文/大野瑞紀)

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【出演】
あっきー(芸能記者)

【パーソナリティ】
八木志芳(ラジオDJ)

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