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「鼻づまりで市販の点鼻薬を使用した場合、直後は鼻が通ってもなかなか治らず、症状がひどくなっているように感じる、そんな人は市販の点鼻薬の選び方を間違っているかもしれません」

即効性のある点鼻薬は常用に注意!

 そう注意喚起するのは耳鼻咽喉科サージクリニック老木医院理事長の老木浩之医師。

 点鼻薬は鼻腔内の患部に直接作用させるための薬剤で、ステロイド薬のもの、抗アレルギー薬のもの、血管収縮剤のものと3種類に分類される。

耳鼻科のガイドラインで推奨されているのは、ベクロメタゾンプロピオン酸エステルなどのステロイド薬の(副腎皮質ホルモン)点鼻薬です。軽症から重症まで、アレルギー性鼻炎を含め、鼻水鼻づまりの症状に幅広く効果が期待できる薬だといえます。

 ステロイドというと一般の方は副作用が怖いというイメージをお持ちかもしれませんが、鼻の粘膜から吸収されるのは微量なので、点鼻では用法どおりに使用すると副作用はほぼ心配ありません」(老木医師、以下同)

 ケトチフェンやクロモグリク酸ナトリウムなど、抗ヒスタミン剤を使った抗アレルギー薬タイプの点鼻薬もアレルギー性鼻炎に効果が見込まれる。

 抗ヒスタミン薬は内服薬としても使用されているが、それを液状や粉末状にして鼻腔内に噴霧する点鼻薬が製品化されている。

抗ヒスタミン剤が入った抗アレルギー薬の点鼻薬は安全性が高く、妊娠期でもほとんどの方が使用できる薬です。ただ、他の点鼻薬や内服薬に比べるとやや効果が乏しい場合があります。

 指示された回数や量を根気強く守って使用してもらうことが大切です。また内服薬と同じように、眠気などの副作用が起こったり、集中力の低下が起こることもあります」

血管収縮剤の点鼻薬は常用すると悪化の可能性

 血管収縮剤を使った点鼻薬に関しては、使う状況を限定しているという。「ナファゾリン塩酸塩などの血管収縮剤が配合された点鼻薬の最大のメリットは即効性です。スプレーすると毛細血管がキュッと収縮して、鼻の粘膜の体積も小さくなります。

 鼻腔内の通り道が広がるので鼻づまりが解消しますから、スプレーした瞬間に爽快感が得られるでしょう」

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 症状をすぐに和らげてくれる反面、注意点もある。

「すぐに効き目が出ますし、使った際の気持ちよさもあるので、常用しがちです。実は血管収縮剤入りの点鼻薬は使用しすぎると鼻の粘膜が逆に腫れてしまい鼻づまりが悪化。

 その結果、また使用を繰り返すという悪循環になり、いわゆる『薬剤性鼻炎』の原因につながります。3日間くらい使用しても症状がよくならない場合は、使用を中止し専門医に相談しましょう」

 鼻づまりの原因を知ることが第一。

「自己判断で市販の点鼻薬ばかりに頼らないことが賢明です。鼻づまりの原因に応じた治療を行うことが最も重要。鼻の粘膜を焼くレーザー治療などもあります。

 20年以上前から広く利用されているもので、患者の8割が手術により症状が以前の半分以下になったことが確認されています。スギをはじめとする花粉症に関しても、ステロイド点鼻薬以上の効果が期待できます」

 レーザーでの治療が効かないといった場合には他にも方法がある。

「当院ではくしゃみと鼻水を引き起こす神経を鼻の中で切断する後鼻神経切除術と、鼻腔の拡大と鼻づまり緩和の高い効果がある粘膜下下鼻甲介骨切除術を組み合わせた手術なども行っています。

 また、新しい治療法としてはゾレア(R)(オマリズマブ)を皮下注射する方法があり、高い効果が得られています。頑固な鼻づまりには、深刻な原因が隠れていることもあるので、症状がひどいようであれば医師の診察を受けてください」

 まずは耳鼻咽喉科を受診し、自分に合う最適な治療法を見つけたい。

老木浩之(おいき ひろゆき)●医療法人hi-mex理事長、耳鼻咽喉科サージクリニック老木医院理事長。近畿大学病院講師、生長会府中病院耳鼻咽喉科部長を経て2001年、本院を開設。耳鼻咽喉科の短期滞在手術を行うクリニックとして、全国・海外から患者が来院。現在、医療法人理事長として3院を運営

(取材・文/諸橋久美子)