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 わいせつ目的とも思える形でわが子を撮影する親たちがいる。SNSにアップされているのは、10歳未満の子の裸画像や性的な行為をしている動画、または、小学生の登下校の写真。誰でも簡単に閲覧でき、写真や動画を売買するアカウントもある。

 大事なわが子が性的対象にも……一体、どういうことなのか。事例を見ていこう。

娘を売る毒親

 2月某日、女児の撮影会が行われていた都内某所にある一軒家風のスタジオ。カーテンが開いており、離れたところからでも室内を確認できる。

 防犯活動をしている、フナイムさん(仮名)は、撮影会の参加者から「中1の女の子にセクシーサンタのコスプレをさせて、胸をギリギリのところまではだけさせて撮影をしていた」と聞き、抗議活動のために訪れた。

「二段ベッドの上にミニスカートの幼女を乗せ、ローアングルから撮影をしている様子がうかがえました。時折、女の子が外の通路に現れる姿も確認できました。明らかに小学生くらいの女児が、大人びた化粧と衣装で走り回っていて、なんともいえない違和感がありましたね」

 別の日の2月某日。都内の公園で撮影会が開かれていた。10代半ばの女の子が、20〜30代と思われる男性カメラマンに取り囲まれている。シャッター音がするたびに、女の子はポーズを変えた。他にも10代前半の女の子がおり、鉄棒などの遊具で遊んでいる。

 参加者によると、「セッション撮影会(複数の児童によるグループでの撮影)」と、「個人撮影」があるという。この日は「セッション撮影会」だった。

「ジュニアアイドルを応援したい」。そう語る参加者も多く、実際にモデルの女児がプロデビューにつながるケースもある。そのため、「デビューするのを応援している」と話す主催者もいる。

 こうした18歳未満の児童の撮影会は時折、批判を浴びる。SNSでは、親が主導で集客したうえで、コスプレやプールでの動画を撮影し、公開していたアカウントがあったが、批判の声が多く上がった。謝罪後、アカウントが消えた。

 逮捕者が出たこともある。卒園記念の撮影会の企画だとして、女児(5)にわいせつな行為をしたケースでは、千葉県内の自営業の男が強制わいせつの疑いで逮捕された。

「男は撮影会を企画し、集まった女児にわいせつ行為をした。待ち時間に『かくれんぼをしよう』と声をかけ、誰もいない部屋に連れ込み、いたずらをしました」(警察関係者)

 あからさまではないものの、見ようによっては性的な、あるいは不快な画像や動画も撮影できる「撮影会」も開かれる。冒頭の会場でもそのリスクはある。

「撮影する男性参加者は純粋にそのアイドルの卵を応援しているのか疑問です。児童写真をコレクションして性の対象として見ているにすぎないのではないか」(フナイムさん)

 撮影会にかこつけて、わいせつ行為をしたり児童ポルノ写真を撮影する者がいるのだから、撮影対象が「ジュニアアイドル」ともなれば、より過激なことを求める者が現れてしまう。

撮影される女の子は何を思うのか

 撮影される女の子はどのような心情なのだろうか。「ネットアイドル」と称して、個人でも撮影会モデルをするユンさん(仮名、16)は、アニメのキャラクターのコスプレをして撮影されることを趣味としている。ホテルの一室で着替えもある個人撮影にも対応している。

「イベントでコスプレをしていたときに撮影されたことがきっかけで、事務所に入り、何度か撮影会に参加しました。撮影者が喜んでくれるので、サービスが過剰になったことも。会の後、写真をもらうことが多いですが、全部を見るわけではないので、どんな写真を撮っているかはわかりません」

 こうした撮影会に対する法規制の必要性が叫ばれている。東京都では2017年、「特定異性接客営業等の規制に関する条例」(JKビジネス規制条例)が施行された。女子高生ら18歳未満の青少年を利用したビジネスを規制することが目的だ。都では、ジュニアアイドルであっても、青少年を利用した撮影会をする業者は、あらかじめ公安委員会に届け出が必要になる。

 '21年6月には、都内で撮影会をした業者が無届け営業で逮捕された。

 東京以外でも、愛知県、神奈川県、大阪府、兵庫県などは「青少年健全育成条例」などの改正で対応している。

「明確には、児童虐待とはいえないでしょうけれど、グレーゾーンだと思います。何かしらの規制をするなど、メスを入れてほしいです」(フナイムさん)

「個人撮影会からアイドルが生まれる時代!」

 子どもに撮影会のモデルをさせている親はどのように考えているのだろうか。SNS上で4歳の娘にTバックをはかせた写真を公開していたアカウントに連絡をとった。Tバックの他にも水あめのようなものを舐めさせているもの、上半身裸でビニールプールに入っているものなどがあり、リプ欄にはロリコンと思わしき男性からの卑猥なメッセージも届いている。DMを送ったところ、母親を名乗る女性が電話取材に応じた。

──なぜこのような写真を公開するのか、個人撮影会や動画販売をしているのか。

「女の子って小さいころ“かわいい”って褒められた数だけかわいくなるんですよ。アイドルだってみんなそう。カメラマンから“かわいいよ、かわいいよ”って言われてかわいくなっている。娘は赤ちゃんのころからテレビっ子で、うたのおねえさんに憧れていました。だから夢を手助けしているんです」

──撮影会にわいせつ目的で来ている中高年が多いように思えるが。

「そういう人もいるかもしれないけど、私が見守っていますから。タッチ禁止ですし。娘はいつも“楽しかった、またやりたい”と言っています」

──それはまだ状況がわからないからじゃないですか? 大人になってからどう思うと考えていますか?

「感謝してくれると思いますよ。もともと個人撮影会をしていた子がその後、有名グループのアイドルになったりします。今は個人撮影会からアイドルが生まれる時代なんです。娘の夢を叶えるのが親の仕事でしょう」

 夢を叶えるといいながら、1回30分、1人5000円を徴収しているのが気になった。

──撮影会の参加費用は1回5000円ですよね?

「それは取りますよ。無料で大切な娘を撮らせるはずがない」

──そのお金は何に使っているのですか?

「娘のために使っていますよ」

──Tバックをはかせる必要はありますか?

「4歳だからまだ卑猥なものにならない。これが小学生になったら私だってはかせませんよ」

 最後まで会話はかみ合うことなく、約束していた時間が過ぎた。

 10歳に満たない児童が、どのように撮影会を認識しているのか。多くは親の主導で参加しており、本人の意思であることはほとんどない。人気のためには、リクエストに応える必要があり、性的にも見えるポーズを要求する撮影者はゼロではない。

 見て見ぬふりをする親もいる。そのため、何かしらのルールづくりが必要になる。

(取材・文/渋井哲也)