2023年の冬ドラマ、読者が選んだハマった&がっかり作品は?

「幽霊モノ2本にお面モノが2本。人生リセットコメディーに男女逆転時代劇、そして忍者(笑)─よくぞこれだけぶっ飛んだドラマがそろったなという感じ」

斬新な切り口の作品が多い2023冬ドラマ

 とドラマウォッチャーで漫画家のカトリーヌあやこさんも驚くほど斬新な切り口の作品が多い冬ドラマ。そんななか読者から最も多くの支持を得たのは、草なぎ剛6年ぶり主演ドラマ『罠の戦争』(フジテレビ系)だ。

「草なぎくんの圧倒的演技、実力派ぞろいの脇役陣、予想のつかないストーリー展開……すべてにおいて面白い!」(大阪府・46歳)

 など骨太の復讐劇に多くの絶賛の声が届いた。

『罠の戦争』で6年ぶりに主演を飾った草なぎ剛

「トリッキーな設定のドラマが多いなか、王道の人間ドラマで真っ向勝負したのが見応えありました。草なぎさんの戦争シリーズ3作目ですが、やはり復讐ものは強いなと。

 登場人物の名前に動物が入っていて、それがキャラを象徴するなど作り込み方もうまい。主役の草なぎさんはさすがの存在感で、脇を固める共演陣が怪しいキャラを楽しそうに演じているのが印象的でした」(カトリーヌさん)

 2位はバカリズム脚本、安藤サクラが何度も人生をやり直すタイムリープ系コメディーの『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)。

「元同級生たちの女子トークがとにかく自然で、めっちゃいい!」(神奈川県・43歳)

「昔の曲やドラマ、流行りものが実名で出てきて、細かいところまで楽しめる」(北海道・35歳)

 下馬評は高くはなかったが、いざ見始めたらその面白さにハマったという人が多かった。

『ブラッシュアップライフ』に出演した安藤サクラ、夏帆

「バカリズム天才! 主人公が何度も同じ人生を繰り返すという物語で、すごくゲームっぽい作りなんですね。毎回こなさなきゃいけないミッションがあって、死んだら最初からやり直し……セーブポイントがないRPGというかなりのクソゲーなんですけど(笑)、淡々と流れていく日常がとにかく面白い。

 どうでもいい女子トークのリアルさ、そして至るところに転がる平成懐かしネタの数々。安藤サクラさんほか実力派女優陣の会話劇だけで延々と見ていられるのに、そのなかにいろんな伏線がちりばめられていて、びっくり。この物語をどう畳むのか本当に楽しみです」(カトリーヌさん)

大河よりも人気のNHK時代劇

 3位の『100万回 言えばよかった』(TBS系)は、幽霊となった佐藤健が恋人(井上真央)と自分の姿が唯一見える刑事(松山ケンイチ)とともに自らの死の謎を追うファンタジー・ラブミステリー。

「ミステリー要素がいい感じにちりばめられ、純愛要素も筋がしっかりしていてバランスがいい」(東京都・49歳)

 と一見詰め込みすぎにも思える設定をうまく脚本化している。

『大奥』に出演した福士蒼汰、堀田真由

「幽霊と恋人と事件を追う刑事の三角関係というのが斬新だなと。この3人が恋愛軸でも絡みつつ、なぜ殺されたのかというミステリー軸では捜査トリオとして機能しているのが素晴らしいです」(カトリーヌさん)

 4位には大河ドラマを差し置き、男女逆転の架空歴史劇『大奥』(NHK総合)が入った。

「将軍役の女優さんがそれぞれキャラにぴったりでした」(長野県・28歳)

 と家光を堀田真由、綱吉を仲里依紗、徳川吉宗を冨永愛と主人公をリレーしていく贅沢な作りや豪華絢爛な衣装も話題となった。そして、何よりもインパクトを残したのが仲里依紗の大胆な濡れ場シーン。

「まさかNHKのドラマで3Pが見られるなんて(笑)。でも、あのシーンを真っ向から描き切ったからこそ、その後の綱吉の魂の叫びが心に響くんですよ。NHK、攻めてるなって感動しました。

 この原作は10年ほど前にも映像化されましたが、より女性性が意識されている今のほうがテーマがはっきりと浮かび上がる。今秋放送のシーズン2がキャストを含め今から楽しみです」(カトリーヌさん)

 5位は吉高由里子&北村匠海の年の差カップルが可愛いと評判の『星降る夜に』(テレビ朝日系)。

「北村くんが聴覚障害者の役だから『silent』っぽいのかなと思ったけど全然違ってた。一星がとにかく面白い!」(埼玉県・27歳)

 と明るい世界観に驚いた視聴者も多かった。

『星降る夜に』に出演した吉高由里子、北村匠海

「同じ音のない世界を描いているけど、ベテラン脚本家の大石静さんの筆はもっと生々しくて赤裸々です。微笑ましいイチャイチャシーンのいっぽうで、吉高さんは産婦人科医で北村さんは遺品整理士だから、生と死の物語も絡んでくる。

 シンプルなラブストーリーだった『silent』と比べるとすごく多彩なテーマが組み込まれています」(カトリーヌさん)

人気俳優を起用するもまさかのがっかりに

 さて、がっかりドラマのほうに目を向けると、1位は『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS系)。広瀬すずが初の恋愛ヒロインを演じ、相手役はking & Princeの永瀬廉。しかも脚本はあの北川悦吏子ときたらヒット間違いなしと思いきや、まさかのがっかりNo1ドラマに。

「いろいろと既視感のある設定とありえない昭和な展開についていけなかった」(岩手県・30歳)

「広瀬すずちゃんの九州弁が……」(東京都・36歳)

 等々、がっかりの理由はいくつもあげられた。

『星降る夜に』に出演した吉高由里子、北村匠海

「結婚目前で男に逃げられたヒロインが音楽家志望の男と出会い、ひょんなことから同居する─これ、フォーマットが完全にロンバケ(『ロングバケーション』)なんですよ。人生のモラトリアム期の出来事なのでふたりとも恋にも一歩踏み出せないみたいな。

 じゃあ、あの名作と何が違ったのかというと広瀬すずちゃんの訛り。どうして一人称が『おい』なのか(笑)。エキセントリックなキャラに加え、あの妙な九州弁が気になって、イマイチ物語に入り込めない」(カトリーヌさん)

 がっかり2位と3位にはカトリーヌさんいわく“お面モノ”の2本がランクイン。

『大病院占拠』に出演した櫻井翔、比嘉愛未

『大病院占拠』(日本テレビ系)は個人的に大好きで、がっかり2位は“ウソだろ……”って感じですが (笑)。このドラマはありえないに終始しているので、ツッコみながら楽しむのが正しい見方。櫻井翔くんがなぜ死なないんだと疑問に思ったら負けなんですよ。

 そこがお面ドクターズが活躍する『Get Ready!』(TBS系)との大きな違いで、こっちはそのツッコミどころが中途半端。天才闇医者がどんな難病でも近未来的な医療技術で治すっていう荒唐無稽な設定なのに、1話で町工場と土下座が出てきたりするなど日曜劇場色がかなりある。その食い合わせが悪いんですよね。

 せっかく妻夫木聡さんと藤原竜也さんが共演するなら、正直普通の日曜劇場が見たかったかも」(カトリーヌさん)

『GetReady!』に出演した妻夫木聡、松下奈緒

 全体を通して見ると、奇妙な設定や正体不明な登場人物などさまざまな謎をちりばめることで視聴者に考察を求める系の作品が多く、SNSとともに盛り上がりたいという制作陣の思惑が垣間見えた冬ドラマだったが……。

「その点は今のトレンドだし、それをオリジナルでという制作側の気概が伝わってきたのはよかったです。『ブラッシュアップライフ』のような斬新な作品も出てきたし、春以降のドラマにも期待できそうです」(カトリーヌさん)

ハマった! 冬ドラマTOP5

(全国の20代〜60代の女性1000人にアンケート)

【第1位】罠の戦争 151票

 フジテレビ系 月曜夜10時 出演/草なぎ剛、井川遥ほか

【第2位】ブラッシュアップライフ 142票

 日本テレビ系 日曜夜10時30分 出演/安藤サクラ、夏帆ほか

【第3位】100万回 言えばよかった 108票

 TBS系 金曜夜10時 出演/井上真央、佐藤健ほか

【第4位】大奥 87票

 NHK総合 火曜夜10時 出演/福士蒼汰、堀田真由ほか

【第5位】星降る夜に 82票

 テレビ朝日系 火曜夜9時 出演/吉高由里子、北村匠海ほか

がっかり冬ドラマTOP5

(全国の20代〜60代の女性1000人にアンケート)

【第1位】夕暮れに、手をつなぐ 120票

 TBS系 火曜夜10時 出演/広瀬すず、永瀬廉ほか

【第2位】大病院占拠 78票

 日本テレビ系 土曜夜10時 出演/櫻井翔、比嘉愛未ほか

【第3位】Get Ready! 73票

 TBS系 日曜夜10時 出演/妻夫木聡、松下奈緒ほか

お話を伺ったのは…

カトリーヌあやこ 漫画家&テレビウォッチャー。著書にフィギュアスケートルポ漫画『フィギュアおばかさん』(新書館)など

取材・文/蒔田陽平

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【出演】
TK(芸能記者)
あっきー(芸能記者)

【パーソナリティ】
木村彩乃(フリーアナウンサー)

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