グミ好きの人には、自宅にグミ棚をつくっている人も多い

 食品メーカーの明治が、3月末でガム事業から撤退する。'07年のピーク時には約260億円の売上高を誇るなど、約26年間親しまれてきた明治の『キシリッシュ』シリーズの販売も終了。代わって4月から発売されるのが、『キシリッシュ』グミ。ガムと同じようにキシリトールが配合されている商品だ。

 ガム市場が縮小していくなか、売り上げを伸ばしているのが“グミ”。明治の推計によると'21年のグミ市場規模は約600億円超となり、この10年で約2倍に増加。かつては追いつけなかったガム市場を'20年に超え、昨年は230億円超の差をつけグミがリードしていると発表している調査会社もある。

グミは「時代にハマっている」

 それほどまでにグミが愛されるようになったのはなぜか、Twitterのフォロワー数が16.5万人の日本グミ協会・名誉会長、武者慶佑(むしゃ・けいすけ)氏に聞くと、

「Googleのキーワード検索の推移を見ると、'21年にグッとグミの検索数が伸びているんです。ちょうどこのころ、“地球グミ(『トローリ プラネット グミ』:地球に見たてたブルーの球体のグミを、大陸の模様がプリントされた透明のプラスティックケースで包装したもの)”が注目され、このグミを使ったショート動画(TikTokやInstagramのリール、YouTubeのショート)が多く流れました。同じころに“TikTok売れ”という言葉をよく聞くようになりましたので、地球グミがSNSでバズッたことが、グミ人気に拍車をかけた原因のひとつだと思います

グミ人気のきっかけとなる商品のひとつ、『トローリプラネットグミ』

 武者さんが日本グミ協会を立ち上げたのは10年前。当時は、まだInstagramやTikTokが普及していなかったのだが、“映え”という観点から見てソーシャルメディアとの相性がいい商品だと感じていたという。

「グミは、ほかのお菓子に比べ、グミ本体の色や形、触感(食感)が多様で、パッケージに関してもひとつの商品で20種類がつくられたこともあるほど、バリエーションが幅広くあります。(ポケットに入る小さめ食べきりサイズの)ポケット菓子で、持ち歩きもできる。“推し活”という言葉があると思いますが、数多くある商品の中から“自分の推しを探す”楽しみがある点で、グミは時代にハマっているように思います。純粋に自分好みの味や食感という観点で推しグミを選ぶ人もいますが、自分の好きなアイドルグループのメンバーのメンバーカラーのグミを集めるという方もいるんですよ」(武者さん、以下同)

“グミ化”する商品が続出

 先日報道された『キシリッシュ』がガムからグミへ転換することについて聞くと、

「コロナ禍の自粛生活とマスク生活で、ガムを手にする人が少なくなったという記事を拝見することもありますが、ガム市場はコロナ禍以前から縮小していました。これは、僕個人の考えですが、ガムは“暇つぶし”の要素が強かったんだと思います。一度、口に入れると30分ほどかむことに集中する。その集中=暇つぶしの役割が、いまはスマートフォンに移行している。

 実は、先日、報道された『キシリッシュ』より早く、 '18年にロッテがチューインガム『Fit's(フィッツ)』のグミを販売しています。継続してガムも発売していますが、グミへの転向を考えたガムは『Fit's』が先ですね」

主演映画『ハケンアニメ!』完成披露試写会でグミ愛を熱く語った吉岡里帆

 グミ人気に目をつけ、グミ化される商品も増えてきていると語る。

「最近だと、明治の『ヨーグレット』が『ヨーグレットグミ』を発表したり、森永製菓の『チョコボール』がグミを融合させた『チョコボール 桔梗信玄餅』『大玉チョコボール 桔梗信玄餅』を発売しています」

 これまでにない注目が集まるグミ。このグミを愛する人たちが集う『日本グミ協会』の中で、協会側が「この人は」と選んだ名誉会員には、芸能人も多数いる。

「吉岡里帆さんは、テレビ番組で共演させていただいたことをきっかけに、吉岡さんのラジオにゲストで呼んでいただいて1対1でグミの魅力を語り合い、“ガチでグミが好きな方だな”と思いました(笑)」

 小さいころから、ほぼ毎日グミを食べていると公言している吉岡には、食感やビジュアルが似ている数種類の中から、ひとつを当てるなどする“利きグミ”に挑戦してもらい、その知識とグミ愛から名誉会員に任命したという。ほかに、最近、朝の情報番組『あさイチ』(NHK)に出演した際、グミ愛があふれだしNGである企業名を口にしてしまった前田公輝も名誉会員。

あの有名人も『グミ協会』メンバー

前田さんは、出演されたラジオ番組で日本グミ協会の話をしてくださったり、前田さんのファンの方から私たちに“本当のグミ好きです”という情報をいただいたことをきっかけに名誉会員になっていただきたいとお声がけしました。NHKの番組で着てくださっていた“レッツ! グミニケーション”という文字が書かれたTシャツは協会からプレゼントさせていただいたものです(笑)。

 ほかにも、(お笑い芸人の)パンサーの向井慧さんや、テレビアニメの『ラブライブ! サンシャイン!!』などで活躍されている人気声優で歌手の小林愛香さん、15歳の女の子なんですが、チャンネル登録者が60万人以上いる『HIMA HIMA CHANNEL』のひまりちゃんなど10人ほどの名誉会員がいらっしゃいます」

 現在、日本グミ協会が発行している会員証は2万5000枚ほど。偶然、会った芸能人から「実は会員です」と告白されることもあるそう。もしかしたら、グミ好きを公言しているSnow Manの渡辺翔太や、ジャニーズWESTの神山智洋。また、長くノーベル製菓『SOURS(サワーズ)』のテレビCMに出演している亀梨和也などもメンバーかもしれない。

大人気グループ、SnowManの渡辺翔太もグミ好きのひとり

 現在、年間200種類ほどの商品が発売されているというグミ。

「“今、グミがきている!”と言われますが、僕たち愛好家からすると、1980年に日本で初めて誕生した明治の『コーラアップ』以降、ずっと存在しているもの。以前は、子どもの咀嚼機能をサポートするものという印象が強かったですが、いまは“子ども向け”というイメージはなくなりつつあると思います。

 僕らは、グミを文化にしたいと考えているので、一過性のブームで終わってしまってほしくないというのが本音です。グミは究めると奥が深い。日々、SNSなどで新商品のレビューやトークイベントなどの発信をしていますので、注目していただけるとうれしいです

武者慶佑(むしゃ・けいすけ)
〇プロフィール〇
日本グミ協会名誉会長 /'13年に日本グミ協会を設立。TwitterやInstagramなどのSNSを介してグミの普及活動を続けるほか、テレビ番組『マツコの知らない世界』や『KinKi Kidsのブンブブーン』などにも出演している

日本グミ協会ホームページhttps://93gummy.jp