ランドセルのサブスク『RandS』のプランは3種類。一番人気は月額990円のVプラン。同2750円のBプランは最新モデルも選べる。同3850円のSプランは材質もデザインも最高クラス

 音楽や動画配信、洋服など、さまざまな分野で広がる「サブスクリプション」、通称「サブスク」。一定額を支払うことで利用できる仕組みのサービスだ。暮らしに定着しつつある中、ここへきて新たな波が生まれている。子どもの利用を対象にしたサブスクが続々と登場しているのだ。

制服と体操着のサブスクで割安に

「選択肢を増やして、保護者に選ばれる幼稚園を目指したい」と渕園長

「この4月から、制服と体操着のサブスクを始めました。保護者の要望を受けた取り組みです」

 こう語るのは、大分県日田市の認定こども園『三隈幼稚園』の渕健一園長だ。

 もともと同園には、保護者の転勤等で途中入園する園児のために、定価の9割引きで制服を再利用(リユース)して提供するシステムがあった。

在園児童の保護者から“私たちにも何か(支援は)ありませんか?”という声が出たのです。また、当園では国連が掲げる持続可能な開発目標『SDGs』に取り組んでいたこともあり、サブスクならば環境保全、多様性の尊重といったSDGsの理念にも合致する。そうした経緯で導入を決めました」(渕園長、以下同)

 同園の制服と体操着は、一式3万400円。それがサブスクを利用すれば毎月500円で借りられる。3年間、利用すると合計は1万8000円になるので、購入した場合の6割ほどに抑えられる計算だ。子どもの成長とともにサイズが合わなくなったり、破れたりしたら無料で交換可能。4月から入園する園児のうち、「10名の保護者がサブスクの利用を申し出た」と渕園長は語る。

「制服を入手する際、入園時に購入するだけでなく、園で行っているバザーでお下がりを購入していた保護者も以前から多くいました。そのせいか、リユースに抵抗がある人は意外と少ない。まずはバザーで手に入れ、サイズが合わなくなったらサブスクを検討したいという声も聞きます」

 現在のところ、靴下など直接身に着けるものは対象外。これらも利用できるよう、サブスクの拡充を希望する保護者も少なくないそうだ。

「ラン活」が活発化

庄山理恵専務は「サブスクをギフトにできるサービスも検討中」と明かす

「ラン活」という言葉が生まれるほど過熱するランドセルにも、サブスクが誕生している。サービスを手がけるのは、大阪の老舗かばんメーカー・コクホー。今年2月からランドセルのサブスク『RandS』をスタートさせた。

 庄山理恵専務が説明する。

「入学する前年の5月ごろからランドセルを探し始めるなど、ラン活は早期化しています。また地域によっては、教科書だけでなく体操着やタブレットもランドセルに入れて持ち帰らなければならない学校もある。“どんなランドセルを選べばいいのかわからない”という保護者の声を聞くことが多くなりました。

 こうした事情やお子さんの成長に合わせた選択肢を増やせないかと考え、サブスクの取り組みを始めました」

 月額料金は税込み990円から3850円と、3種あるプランごとに異なる。どれも250種類のランドセルの中から選ぶことが可能だ。またプランに応じて1か月~3か月に1度、ほかのランドセルに交換できる。気に入れば途中で買い取ることもできるうえ、3年間同じプランを継続利用すると、そのランドセルがプレゼントされるという。

「すでに300件以上の契約をいただいています。一番人気は月額990円のVプラン。お申し込みされた約6割の方に選ばれています」
(庄山専務、以下同)

 興味深いのは、海外赴任から帰国予定というケースや、ランドセルを使わない地域から他県へ転入する人など、さまざまな保護者が実に賢くサブスクを利用している点だ。

「小3でランドセルを買うとしたら、使用するのは残りわずか3年。とはいえ“3年間のために何万円も支払うのは迷うけれど、いいものを持たせてやりたい”というのが親心。そうした潜在的必要層にもサブスクは人気です」

 子ども向けのサブスクはこれだけにとどまらない。受験生の3人に1人が利用しているという学習管理アプリ『スタディプラス』では、月額980円で電子版の学習参考書200冊以上が読み放題となるサービスを実施。重たい参考書を持ち歩くことなく勉強できるとあって、好評だ。さらには少年野球にもサブスクが進出。千葉県鎌ヶ谷市の『超野球専門店CV』では子どもの体格に合わせて、高騰するバットを月額2750円から利用できるサブスクを導入、話題を集めている。

 なぜ今、子ども向けのサブスクが相次いで登場しているのだろうか。

コロナ禍を経て物価高が深刻化する中、子育て世帯の家計ダメージが広く報じられるようになりました。

 とりわけ保護者からは制服や学校指定品が高すぎるという声を頻繁に聞きますし、リユースの取り組みも拡大している。こうした社会状況に対応する動きとして、サブスクが子ども関連の分野でも広がってきているのではないでしょうか

 そう指摘するのは、教育学者で千葉工業大学准教授の福嶋尚子さんだ。

サブスク登場の陰に「隠れ教育費」が

「隠れ教育費にいくらかかるのか学校側も把握していない」と福嶋さん

 日本鞄協会ランドセル工業会の2022年調査によれば、ランドセルの最多販売価格帯は6万5000円以上。購入者の55%は祖父母が占めているという。制服や体操着などの学用品も、同様に高額化が指摘されている。

埼玉県の公立中学では、制服と体操着を一式買うだけで8万円はかかっていました。材料費値上がりの影響もありますが、シャツにベスト、靴下など、学校指定品のアイテムが増えている問題は大きい。市販のシャツでよかったものが、校章が入った学校指定のシャツになるだけで、価格がはね上がります」(福嶋さん、以下同)

 '18年に東京・銀座の公立小学校で、アルマーニが監修した制服を導入し物議を醸したが、「ブランドものを取り入れることも制服の高額化につながっています

 制服やランドセルだけでなく、上履きに絵の具セット、鍵盤ハーモニカ等々、子どもの学校でかかる出費に驚いた保護者は多いことだろう。こうした学用品や教材費などの負担は『隠れ教育費』と呼ばれている。文部科学省の統計によれば、1年間に公立小学校で約10万円、同中学校で約17万円の隠れ教育費が発生している。本来、義務教育は無償であるにもかかわらずだ。

「そもそも日本は、教育にかける政府の予算が世界的に見ても少ない国。サブスクを利用して費用を抑えられるなら、保護者の負担を減らす一助になると思います」

 ただし、「サブスクで解消できない問題もある」と福嶋さんは強調する。

「価格を見直すきっかけにはなるかもしれませんが、たとえサブスクを導入しても、制服を着なければならない状況は変わらない。実は、制服もランドセルも、法的に言うと学校側が強制できるものではありません。しかし実際には購入が当たり前になっていたり、学校側も着用するよう子どもたちに指導していたりする。そうした結果、学校指定品が増え続け、それにつれて保護者の負担も増したというのが現実です」

 隠れ教育費を減らすにはどうすればいいだろうか。

「学校指定品の数を減らすことです。例えば、制服であればジャケットとスラックスやスカートだけに限定し、シャツや靴下は市販品でもかまわないとする。制服業者と価格交渉をするより、そちらのほうが早いし、全体としてかかる費用も下げられます」

<取材・文/千羽ひとみ>