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 3月22日、政府は追加の物価高騰対策として、住民税非課税対象などの低所得世帯に一律3万円を支援するとともに、別途、子育て世帯には子ども1人当たり5万円を給付するという方針を検討していると発表。

【最新版】届け出だけでもらえるお金

「電気・ガス・食料品などの価格が高騰する中で、昨年の秋にも住民税非課税世帯などに一律5万円の給付が行われました。多くの自治体でその給付の受け付けは終了しましたがまた近い内容での給付が始まるということですね」

 そう解説してくれたのは、ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さん。知らずに申請をしなかったら損をする。こうした情報を逃さないためにどうすれば?

「給付金には2つの方向性があることを気に留めておくといいでしょう。まずは、住環境、介護など自分に該当しそうな給付金の有無を調べておくこと。

 生活で困っている方に対しての給付制度ですから、調べてみたら、対象となる制度があった、ということは多いはず。

 もうひとつは、行政がこういうまちづくりをしたいという政策に合うもの。子育てなど、自治体として推し進めたいことに補助する制度があります。地域の特性などを知っておくのもいいでしょう」

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額の大きい住宅系は見落とさないように

 普段から自治体の市民だよりや広報紙、LINEのアカウントなどをチェックしておくことも大切。

 だが、いざ給付制度を調べようとすると多種多様にあり、困惑することも。特に押さえておきたいものは何か。

「住宅ローン減税など、住宅系の給付金は額が大きいので要チェックです。例えば最近のものであれば、3月31日から申請受け付けを開始した住宅省エネ2023キャンペーン。

 大きく3つの補助事業があって、『先進的窓リノベ事業』は断熱窓へ改修することに、最大200万円まで補助が受けられ、『給湯省エネ事業』は省エネ効果の高い給湯器を設置する場合に上限5万〜15万円の補助があります」

 あとひとつは『こどもエコすまい支援事業』。これは子育て世代に向けたもののようだが──。

「昨年秋くらいまで類する制度があったのですが、それが継承された形ですね。子育て世帯や若者夫婦を対象にしていますが、リフォームに関してはそれ以外の世帯でも補助上限30万円を受けられるので、対象の工事を行うようであれば申請しましょう」

 補助金は子育て世代だけでなく、介護を要する世帯にも多い。

「バリアフリーのリフォームの工事費は介護保険の適用で最大20万円分の工事ができます。ただ、あまり知られていないのが、自治体によっては介護認定を受ける前から近い金額を助成しているということ。

 ケガを未然に防ぐためにリフォームする場合に制度が利用できるか確認を」

 介護にかかわらず、高齢者向けの助成は各自治体にも多い。

「例えば東京都文京区では『文京すまいるプロジェクト』というものがあり、賃貸住宅などの大家が65歳以上の人を入居させた場合、謝礼金が出ます。

 入居者は希望により、見守り電球・緊急通報装置の設置、およびライフサポートアドバイザーによる支援が受けられます」

 電話詐欺対策としてAIで判別するアダプタの取り付けを補助する事業や、認知症の症状で見られる徘徊を見守るためにGPS機器を配布する自治体もある。

「三世帯同居や近居に必要な費用の一部を助成するものがあります。こうした施策は子育て支援もありますが、高齢のひとり暮らしで、何かあったときに発見できなかったということを防ぎたいという意図も。

 UR賃貸住宅にも近居割が適用されることがあるので、もし近居を考えている場合は確認してみましょう」

 上の表で挙げた医療系の所得控除は確定申告が必要だが、条件付きで対象者は広がる。

「医療費控除は年間10万円を超えないと受けられませんが、所得が200万円未満の人は所得の5%を超えた場合も対象になります。定年後に所得が減った場合など、医療費が10万円に達していなくとも控除を受けられる可能性があることも知っておきたいですね。

 セルフメディケーション税制はドラッグストアなどで対象商品の薬を年間1万2000円超購入すると利用できます。目薬や頭痛薬、花粉症の市販薬も対象なので、多くの人が適用となる可能性があると思います」

 介護や医療の助成金では他にも確認しておくべきことがある。

「介護や医療などは、1か月の自己負担に上限が設定されていますが、合算した年額にも上限額があります(高額医療・高額介護合算療養制度)。1年間の領収書を保管しておいて、手続き漏れがないか見返すのもいいでしょう」

 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金や傷病手当金などに関して、風呂内さんは以前からあった制度にも注視する。

「企業の都合で休業した労働者のうち、その間に賃金がなかった方のための新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金は、コロナ禍の終焉とともに減っていくと思われます。

 ただ、コロナとは関係なく、何らかの企業の都合で休業した場合、会社側は平均賃金の60%を支払わなくてはならないという休業手当はもともとあったもの。

 傷病手当金もそうですが、コロナ禍でなくとも、本来もらえるものがある、ということは労働者側も認識しておくべきです」

 コロナ禍の影響が薄らいでも、困っている人のための制度がなくなるわけではない。どの制度についても、申請しないことには給付や助成は受けられない。まずは自分に該当する制度は何かをチェックしておこう。

中高年世代が知っておきたいもらえるお金

〔住まい〕

・住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)

 最大控除額は5000万円の0.7%で年間35万円

 住宅ローン等を利用して住宅を新築や購入または増改築等をした場合、各年分の所得税等から控除する特例で控除期間は13年

・住宅省エネ2023キャンペーン

 先進的窓リノベの場合、1戸あたり最大200万円

 先進的な断熱性能の窓に交換するリフォーム、省エネ性能の高効率給湯器の設置などに対する補助

・UIJターン給付金

 移住、起業で最大300万円

 東京23区に在住または通勤する人が、東京圏外へ移住し、起業や就業等を行う場合、都道府県・市町村が共同で交付金を支給する事業

・三世代同居・近居支援事業

 引っ越し費用等の2分の1、上限10万円(広島市)

 小学生以下の子ども(出産予定の子どもを含む)がいる世帯が、親元近くに住み替えて同居または近居を始める際の補助

・住居確保給付金

 自治体によって異なる(東京都一級地単身で5万円程度)

 住まいを失わないための家賃補助で、原則3か月、最大9か月まで支給。お金は申請した人ではなく直接大家さんなどに振り込み

〔医療〕

・医療費控除

 最大200万円まで所得控除

 医師や歯科医師による治療費・入院費、入院時の食事代や通院費も医療費控除の対象。基本的には医療費10万円超から申請可能

・セルフメディケーション税制

 最大8万8000円まで所得控除

 実際に支払った特定一般用医薬品等購入費の合計額(保険金などで補填される部分を除く)から1万2000円を差し引いた金額

〔介護〕

・特殊詐欺対策アダプタ取付費用補助事業

 取付費上限8800円(千葉県野田市の例)

 高齢者が特殊詐欺の被害にあうことを防止するため、居宅電話機に特殊詐欺対策アダプタを取り付ける費用を補助

・認知症の症状で見られる徘徊を見守るためにGPS機器を配布

 加入料金等の初期費用7000円(吹田市の例)

 在宅の認知症高齢者が徘徊した場合に、位置情報を検索できるGPSで認知症高齢者の居場所を早期発見し、事故の防止を図る

・介護保険における住宅改修

 最大18万円

 介護のため、自宅に手すりを取り付けたり、バリアフリー化などに改修する際に補助が出るが、介護認定前にもらえることも

・介護休業給付金

 賃金の67%

 家族にケガ人や病人が出て、一時的に職場を休まなければならなくなったときの制度。93日を限度に3回まで支給される

〔仕事〕

・新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金

 休業前賃金日額の6割

 休業させられた労働者のうち、休業中に賃金(休業手当)を受けることができなかった人に対し支給される

・傷病手当金

 給与の約3分の2×通算1年6か月

 病気やケガで4日以上仕事を休み、その分の給与が払われないときに受け取れる。休んだ日数を通算でもらえるようになった

・教育訓練給付制度

 上限年40万円

 キャリアアップや能力の開発を支援する給付金。資格の種類に応じて、一般、特定一般、専門実践などの区分があり給付額も異なる

・高年齢求職者給付金

 上限日額6835円(令和4年度)

 65歳以上の失業者で働く意欲のある人に向けた失業手当の一種。年金を受け取っていても大丈夫で退職の翌日から1年間

※掲載している情報は2023年3月29日現在の情報です。変更・廃止になる場合があるので、詳しくは関係機関や自治体などでご確認ください。

教えてくれたのは……風呂内亜矢(ふろうち・あや)●1級ファイナンシャル・プランニング技能士。著書は『「定年」からでも間に合う老後の資産運用』(講談社+α新書)、『つみたてNISAの教科書』(ナツメ社)など多数。YouTubeチャンネルFUROUCHI vlog【ファイナンシャルプランナー風呂内亜矢】も好評