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Q. 笑っているように見えるのはどっち?
(A)(^_・)
(B)(・_^)

 Aを選んだ人が多いはず。

 人間はひとつの物体の左側を重視して判断するという脳の仕組みがあるためだ。これをシュードネグレクト効果という。

気合を入れるべきは自分の右顔!

「人間の脳は右にあるものよりも左にあるものを強く認識する傾向があります」

 教えてくれたのは、元首相をはじめ政治家や財界人、企業の役員など3000人以上の「見た目」をサポートしてきたパーソナルプロデューサーの唐沢理恵さん。

 職業柄、人の印象に関わる要因や見た目に関する研究を学び、それにまつわる著書も多い。

「左側を強く認識する」と言われてもピンとこないかもしれないが、例えば、魚の絵を描いてみるとたいていの人は頭を左にして描くという。

 チラシの作成では、目玉商品は左上に配置することが多く、スーパーの目玉商品も左側の棚に陳列したほうがよく売れるという実験結果もある。

「この左側の視野を重視する認知傾向のことを『シュードネグレクト効果』といいます。脳と身体の支配は左右逆転しているといわれ、右側の視野で見たものは左脳に、左側の視野で見たものは右脳に伝わります。

 右脳は“イメージ脳”と呼ばれ、私たちが見たもの(イメージ)を判断する際には左側の視野が中心となります。そのため、物体の左側を重視する傾向があるのではないかといわれています。

 すべての人間に当てはまるわけではありませんが、多くの人が該当する“脳のクセ”といえます」(唐沢さん、以下同)

 そしてこの左を重視する傾向は、初対面のときほど発揮されやすい。

「はじめまして」の場面ではその人への事前情報がないので、見た目から無意識のうちにいろいろなことを感じとるが、脳において無意識領域を司るのは右脳。

 加えて第一印象の決め手の55%は視覚に訴えるといわれており、この点でも映像判断を担当する右脳が働く。よって、右脳が優位になり、左側を重視しやすくなる。

 相手から見て左側の顔から「優しそう」「怖そう」「楽しそう」といった情報を探っていることが多いのだ。

「相手に見られる左側とは、自分にとっては右側の顔。そう、気合の入れがいがあるのは右側なのです。

 注意したいのは前髪で、前髪で右側が隠れているような場合は暗い印象を持たれやすいので注意を。前髪は右から左へ流し、右をより見せたほうが好印象になりやすいです」

 気になる異性がいる場合、相手の左側に位置して、自分の右側(相手にとっての左側)の顔を目に焼きつけてもらうと好意を持ってもらえる確率がアップしそうだ。

「面倒な上司や苦手なママ友がいる場合は、その人の左側に座るなどするといいですね。左側のほうが安心感を与えやすいし、左耳に向かって話しかけると、その人の右脳に届きやすく、言葉が相手の心に伝わりやすくなるそうです」

左側は素の顔、右側はよそ行きの顔

 自分の右側の顔が相手により意識されやすいことがわかった。けれども、自分の左側の顔も実は要注意!

 というのも、人間の顔は右側と左側が違っていることが多く、アンバランスであればあるほど、相手に不信感を与えてしまうことも。

「無難なのは、左右対称の顔。左右対称のものは正当な印象を与えるので、相手に好意を抱かれやすいのです。でも、人の顔はたいてい左右で違っています」

 実は自分の左側の顔は、幼いころの顔が、そのまま老けていくことが多いが、右側の顔はその人の人生=生きざまが現れやすいのだという。

右と左の顔ではこれだけ印象が違う!唐沢さんの左の顔を合成した写真(左)と右の顔を合成した写真(右)、16歳の頃の唐沢さん(中央)

 右側の顔は社会的な顔ともいえると話す唐沢さん。愛想笑いをするときは、右側の顔のほうが笑っていて、左はあまり笑っていないことが多いそう。

 微妙な違いではあるが、他人がそれを見たとき、どこかアンバランスさを感じて「この人、本当に笑っているのかな?」と不信感を抱かせかねないのだ。

「左側には“素”の自分が出るんです。左側は正直者ともいえますね。例えば、人見知りで壁を作ってしまいがちな人は、右側で愛想笑いをしても、左側の顔はこわばっていることが多い。

 すると相手にそれが伝わってコミュニケーションがうまくできなくなってしまう可能性があるんです」

 ではどうしたらいいのだろう? 

「心から思ったことが左の顔に現れるので、心底、相手に好意を持つことが大事。人見知りの方におすすめなのは、相手と会話しているときは、2人が優しい真綿に包まれてぽかぽかの空気の中で会話しているイメージを持って話すことです。

 イメージは無意識の領域なので右脳が働きます。ほぐれていく心と連動して、左の顔も温かく、優しい表情になるはず。すると相手もスッと会話をしてくれると思います」

第一印象はわずか7秒で決まる

 また右の顔は社交の顔なので筋肉をよく動かしているが、左側はあまり動かさない傾向もあり、それにより左右の顔のバランスが崩れるという面もある。

「口を閉じて舌をぐるぐると回す“舌回し”をやってみてください。左回りがやりにくい人が多いのでは?

 その場合は左回りをたくさんやって、左の表情筋をより鍛えて、バランスをとってあげるといいですね」

 人間は視覚で判断する能力にたけた動物。相手がどんな人間かを判断する第一印象は、わずか2~7秒で決まるという。

 相手が無意識に感じ取る左右の顔の特徴を押さえて、春からの新しい人間関係を、ぜひスムーズにスタートさせてほしい。

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舌回しで左右均等の顔を目指そう

 左右でバランスがとれている顔ほど、初対面では好印象を与えやすい。左右それぞれ舌回しをして、やりにくいほうがあれば、そちらをより多くの回数やることを習慣に。 均整のとれた顔を目指して。

舌回しで左右均等の顔を目指そう
唐沢理恵さん●早稲田大学経営学修士、学術博士(コミュニケーション学)。(株)ノエビアでは32歳で最年少女性取締役に就任。38歳で服装や話し方を指南する(株)パーソナルデザインを設立。著書も多く、早稲田大学や九州大学などでの非常勤講師の実績も。
教えてくれたのは……唐沢理恵さん●早稲田大学経営学修士、学術博士(コミュニケーション学)。(株)ノエビアでは32歳で最年少女性取締役に就任。38歳で服装や話し方を指南する(株)パーソナルデザインを設立。著書も多く、早稲田大学や九州大学などでの非常勤講師の実績も。

(取材・文/樫野早苗)