上皇・上皇后両陛下

 4月10日、結婚64周年をお迎えになる上皇ご夫妻。この日を赤坂御用地で過ごされるのは、実に30年ぶりだ。

「お代替わりに伴い、昨年4月に赤坂御用地へ引っ越されました。赤坂御用地は、上皇ご夫妻が'60年から'93年まで住まわれ、3人のお子さまを育てられた“思い出の地”。感慨もひとしおでしょう」(皇室ジャーナリスト)

上皇ご夫妻が京都三大祭へ

 住み慣れた環境で、穏やかな日々をお過ごしになっている上皇ご夫妻。3月20日には、展覧会『佐伯祐三 自画像としての風景』をお忍びで鑑賞された。

「美智子さまは過去にも佐伯作品を鑑賞なさったことがあり、興味がおありだったそうです」(皇室担当記者)

 会場は東京駅に直結する東京ステーションギャラリー。平日だったが、春休み中とあり、駅頭や駅構内には多くの人が集まっていた。

「会場へ向かわれる車の中で、美智子さまはマスクを顎まで下げて、沿道の人々に柔らかな表情を見せてくださいました。また、お帰りの際は、上皇さまとしっかり手をつなぎ、駅構内をゆっくりと歩きながら、集まった人々との時間を楽しんでいらっしゃいました」(居合わせた女性)

 長引くコロナ禍においては、外出すらままならない状況が続いたが、皇室も国民も、元の姿を取り戻しつつある。

 5月8日に新型コロナが感染症法上の5類に引き下げられれば、活動はさらに活発になるだろう。こうした中、上皇ご夫妻が待ち望まれる一大行事がある。

「京都三大祭の1つに数えられる『葵祭』です。毎年5月15日に行われていますが、コロナ禍の影響で'20年から中止に。4年ぶりの開催となる今年、上皇ご夫妻が招待されたようです」(宮内庁関係者)

 約1500年前に起源をもつ葵祭は、『枕草子』や『源氏物語』に登場することでも知られる。

「メインイベントは『路頭の儀』。宮廷装束姿の約500人と、牛や馬などからなる行列が、都大路を練り歩きます。京都御所を出発し、世界遺産の下鴨神社と上賀茂神社まで、約8キロの道のりを歩む様子は、“現代に蘇る平安絵巻”と称されています」(観光情報誌ライター)

地方訪問で直接国民とご交流

 この行事に合わせ、上皇ご夫妻は京都と奈良を巡られるという。

「京都は東京遷都までの1000年以上、天皇が住んだ地ですし、京都や奈良には歴代天皇の御陵も多く、皇室の“父祖の地”といえます」(皇室解説者の山下晋司さん)

 上皇ご夫妻は'19年6月、退位後初の地方訪問として京都へお出かけに。その際は、孝明天皇陵と明治天皇陵を訪れ、退位を報告された。

平安建都1200年を祝う式典のため京都を訪れ、上賀茂神社を巡られた上皇ご夫妻('94年11月)

「下鴨神社と上賀茂神社には、'94年と'16年に参拝されたことがあるため、懐かしく思われるでしょうね。ご高齢なこともあり、地方訪問は少なからず、心身の負担や感染リスクもありますが、それ以上に、お出かけになりたいお気持ちが、強かったのだとお見受けします」(前出・宮内庁関係者)

 地方訪問は、皇室の方々と国民が直接交流することができる貴重な機会でもある。

「訪問先で多くの国民に歓迎されることは、上皇、上皇后両陛下にとっても励みになるでしょう」(山下さん)

 88歳の春、美智子さまは覚悟を胸に、京都路を歩まれる。


山下晋司 皇室解説者。23年間の宮内庁勤務の後、出版社役員を経て独立。書籍やテレビ番組の監修、執筆、講演などを行っている