親友の岸田今日子さん、吉行和子さんと。3人での旅行で飛行機嫌いを克服した冨士眞奈美さん

 女優・冨士眞奈美(85)が語る、古今東西つれづれ話。元気の秘訣を語る。

がんも経験、お酒も飲んだ、冨士眞奈美の“健康法”とは

 ついにこの連載も最終回。毎回、「こんなお話で大丈夫なの?」と不安でいっぱいだったけど、読者の皆さまからの「面白い」といった声を励みに続けることができました。皆さま、本当にありがとうございました。

 それにしても、いろいろなわが身を振り返らさせていただく機会でもあった。自分でも、「そういえば」なんて思い出すことがたくさんあって、いい頭の体操になったかもしれない。自分の人生をひもといてみると、たくさんの出会いと、たくさんの面白おかしい記憶に恵まれていたんだなって、つくづく思う。

 よく、「どうして冨士さんは、そんなに元気なんですか?」と聞かれる。でも、骨折がお家芸なんて言われるくらい何度も骨折しているし、過去には初期の大腸がんの内視鏡手術をしたこともある。姉が56歳のときにがんで亡くなり、自分も長くは生きられないのではないかと不安になったりもしました。

 先の質問に対する答えは、「何にもやっていない」になる。特にこだわりの健康法があるわけでもないし、規則正しい食生活を心がけていたわけでもない。それをいうなら、若いころどれだけ浴びるほどお酒を飲んだか、思い出すだけで頭が痛くなりそうよ(笑)。

 でも、強いて言うなら、ずっと好きなものがあるということかもしれない。夢中になれるもの。

 私は子どものころから野球が大好きで、物心がついたころから田んぼで野球をし、川上哲治さんをはじめ、たくさんの野球選手に夢中になり、長嶋茂雄さんに心酔するまでになった。

 そのあとも、王貞治さん、落合博満さん、松井秀喜さん、野茂英雄さん……野茂さんが大リーグで活躍する姿を見たいからBSに加入した。

 今は、大谷翔平選手に夢中になっている。WBCのオーストラリア戦を見た? ベンチで大あくびをしていたのにその数分後、センターバックスクリーンの自分の看板にスリーランホームラン! 本当にスーパースターだと思う。

 本心は、この誌面いっぱいに大谷翔平選手のことだけ書きたいくらいだけど、最終回だからそういうわけにもいかないじゃない? それに大相撲も大好きだから、できることなら翔猿についても語りたいくらい。

人や出来事と多くの時間を過ごせたからこそ、今の私がある

 そう──。それくらい夢中になって語ってしまいたくなるものが、私の人生にはたくさんあった。

 バカみたいにお酒を飲んだことも、友情を仕事にして(岸田)今日子ちゃん、(吉行)和子っぺと旅行に出かけたことも、山崎努や杉浦直樹といった俳優仲間たちと野球チームを作ったことも、ペコ(大山のぶ代)と銭湯通いの青春を過ごしたことも、全部、楽しかった。

 私はよく「記憶力がすごいですね」と言われるけど、私の記憶力がすごいんじゃなくて、それだけ周りにいた人たち、起こった出来事が鮮明だっただけ。

 山城新伍ちゃんや石立鉄ちゃん(鉄男)、一緒に欧州周遊をした小林千登勢、今でも電話で安否確認をし合う仲の加賀まりこ──。色褪せない人や出来事と多くの時間を過ごせたからこそ、今の私があるのだと思う。

 特別なことなんて必要ないのよ。雀(ずすめ)百まで踊り忘れず。趣味や、ささいな付き合いだって、十分楽しめるもの。

 実際、私は大谷翔平選手の大ファンだから、年もわきまえず、友達にもらったエンゼルスの赤いトレーナーを着て出かけている。テレビやスポーツ紙を通じて、彼の活躍に跳びはねたり、頭を抱えたりしている。どう楽しむか、それは自分次第なのよ。

 もちろん、人生は楽しいことばかりじゃない。この連載でも触れた私の結婚生活などは、決して楽しめるものじゃなかったけれど、思い出すと結構笑えます。

 過ぎてしまえばみんな過去。自分にとって好きなものをたくさん見つけてくださいね。それが、人生の健康法だと思います。

(構成/我妻弘崇)

PROFILE……冨士眞奈美(ふじ・まなみ)●静岡県生まれ。県立三島北高校卒。1956年NHKテレビドラマ『この瞳』で主演デビュー。1957年にはNHKの専属第1号に。俳優座付属養成所卒。俳人、作家としても知られ、句集をはじめ著書多数。