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 昨年末、お笑いコンビ・フォーリンラブのバービー(39)が旅行で訪れたベトナムでトラブルに遭遇し、その内容をSNSに投稿して話題になった。クレジットカードで8000円のネックレスを買ったつもりが、桁を読み違えて実際には90万円の商品だったそう。

 彼女のように、海外で思わぬ“お金の失敗やトラブル”に見舞われた、という人も少なくないはず。そこで今回は、全国の男女1000人にアンケートを行い、海外旅行で体験した金銭トラブルのエピソードを聞いた。

海外でのスリ・盗難被害には要注意

多数派ではないものの、約2割の人が海外旅行中にお金のトラブルを経験しているという結果。スリや窃盗などのほか、タクシーや飲食店でのぼったくり被害も多数。さらに、「ホテルのレストランでクロークに預けたジャケットの財布からお金を抜き取られた」や「ホテルの両替所で偽札をつかまされた」など、ホテルでの被害もちらほら。

 アンケートでもっとも多く挙がったのは、スリ・窃盗の被害。「南アフリカで、購入したお土産と財布を置き引きされた。それ以降は貴重品を身につけた状態で過ごした」(女性・40代)、「中国旅行中、人混みの中で子どもを抱っこしていて両手がふさがっているときにウエストポーチから財布を盗まれた」(女性・50代)などの被害報告が多数。一瞬の隙をつかれてしまうようだ。

「スリなどの手口は巧妙化していて、一度狙われたら回避するのは困難なケースが多い」

 そう話すのは、旅行ジャーナリストの村田和子さん。彼女自身も家族でベルギーに行った際、スリ被害に遭ったという。

大きなトランクを持って地下鉄のホームに向かうエスカレーターに乗りました。すると、エスカレーターが急停止。近くにいた12歳くらいの女の子が“大丈夫?”と話しかけてきて、ネズミの死骸を指さし、「原因はあれ」と説明され、その間に、何者かによって私の財布から現金が抜かれていたんです。エスカレーターを止めた人物も犯行グループのメンバーだったようです

現地の人との交流に注意する

 実際に被害に遭い、より一層防犯に努めるようになった、と村田さん。

「トランクを持っていると“旅行者”とバレて標的にされてしまうので、短い距離でも大きな荷物があるときは、タクシーに乗るようになりました。さらに、万一に備えて手持ちの現金は最小限に抑え、財布を分散させています」

 また、現地の人との交流にも注意を払わなければならない。アンケートでは「ポーランドの広場でバラを渡され、プレゼントだと思ったら“お返しに寄付をしろ”と言われた」(女性・40代)、「アメリカで路上パフォーマーの写真を撮影したら、10ドルの支払いを要求された」(女性・30代)などの事例も。なかには、有名な観光地でトラブルに遭ったという声も。

アフリカ旅行でマサイ人の村に立ち寄った際、現地の人に話しかけられて暗いテントに招かれた。“あなたたちは大切な友達だから、これをあげたい”と言われ、土産物のネックレスを売りつけられた。密室だし、断れば何をされるかわからなかったので、仕方なく購入しました」(女性・40代)

トラブル回避のための必要な心構え

 村田さんは、こうした現地でのトラブルについて「海外では、日本での“普通”は忘れてほしい」と話す。

「日本の路上ではポケットティッシュが無料で配られたり、写真撮影も比較的自由に行えますよね。しかし海外では“ありえない状況”と考えるのがベター。まず、知らない人からモノを受け取るのは絶対にNG。また、日本語で“日本語の勉強をしているので話をしたい”などと話しかけてくる人もいますが、先方には何か思惑がある可能性もあるので、警戒しましょう。人を疑うのは寂しいですが、トラブルを回避するためには必要な心構えでもあります」

 滞在中の対策だけでなく、事前の情報収集も重要、と村田さん。

「海外安全ホームページ」外務省の情報サイト。最新の犯罪の手口や危険情報、緊急連絡先が国別に掲載されている。(https://www.anzen.mofa.go.jp/

海外旅行が決まったら、外務省が運営している『海外安全ホームページ』を活用して、渡航先の情報を集めましょう。このサイトには、現地で多発している犯罪の手口や感染症、紛争の危険情報などが国ごとに掲載されています。犯罪の手口は国ごとに異なるので、渡航前に把握しておくと、対策がしやすくなります。行き先の情報収集は防犯の第一歩です

「たびレジ」外務省提供の無料サービス。滞在先の状況やトラブル時の連絡先などをリアルタイムで通知。(https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/index.html

クレカ活用でトラブル回避

 そのほか、クレジットカード(クレカ)関連のトラブルも寄せられている。「ブルネイでホテルのチェックアウト時にVISAのクレカで支払おうとしたら決済ができなかった」(男性・60代)、「グアムのショッピングモールで買い物をしたときにカードで一括払いしたつもりが、勝手にリボ払いにされていた」(女性・40代)など、犯罪以外のトラブルも見受けられた。

海外では多額の現金を持ち歩くと盗難や紛失のリスクがあるので、クレカの使用がおすすめです。ただし、決済後のレシートは必ず取っておきましょう。帰国後に利用明細の内容とつき合わせると、購入した覚えのない品物が含まれていたり、個数を間違えていたりすることがあるんです。そうした場合も、カード会社に連絡すれば補償してもらえることが多いです

 また、村田さんがカード払いをすすめる理由はほかにも。

「カードは非接触で支払いができるため、コロナ禍を機に各国で“キャッシュレス化”が急速に進んでいます。先日ニュージーランドに行った際も、滞在中は一度も現地で両替えをせずに過ごせました。最近では、現金不可でクレジットカード・電子マネー支払いのみのお店も増えています。今後はさらに現金での支払いが難しくなるかもしれません」

 日本でもキャッシュレス化は進んでいるが、海外旅行で現金派のままでは旅が楽しめなくなる時代が来るかもしれない。最後に村田さんは「久しぶりの海外でも、羽目を外さないように注意してほしい」とアドバイス。

“深夜に出歩かない”“知らない人についていかない”など、常識的な行動を心がけるだけでもトラブルに巻き込まれにくくなります。久々に海外に行く方は、安全に配慮しつつ存分に楽しんでくださいね

お話を伺ったのは旅行ジャーナリスト・村田和子さん

旅行ジャーナリストの村田和子さん

旅行ジャーナリスト。「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」をモットーに、旅の魅力や楽しみ方をさまざまなメディアで発信。著書に『家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ〜旅育BOOK』(日本実業出版)

<取材・文/大貫未来(清談社) アンケート/Freeasy>