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「人は基本的に自分の話を聞いてもらいたいもの。会話で大事なのは、相手にうまい質問を投げかけ、話を引き出す“聞き上手”になることです」

相手から話題を引き出す質問テク

 と、かつて保険会社のトップセールスマンで“メンタリズム”日本一の大久保雅士さん。メンタリズムとは言葉や立ち居振る舞いだけで相手を誘導していく技術のこと。現在は「心理誘導」のプロとして多くの人を指導している。

「口下手な人に意外に多いのが、沈黙が怖くてひとりで話し続けるケース。一方的に会話を進めているように相手には受け取られてしまって損です。

 それより聞くほうに徹したり、もしくは質問で相手が心地よく話せる状況をつくったほうが好印象。質問されると相手は『自分に興味を持ってくれている』と、ポジティブに感じます」(大久保さん、以下同)

 そこで、相手との距離を縮めるのにぴったりな質問が、次の3つだ。

『褒めちぎり質問』はこの3つの質問の中でも相手との距離感が遠い関係性の場合に有効。人は褒められると否定できないという心理を利用したもので、自分のいいところに気づいてくれたあなたに好意を持つようになり、心を開きやすいのです。

 悩みや不安を引き出す『心配質問』は、さらに相手との信頼関係を築きたいときにおすすめ。誰しも悩みや不安を抱えており、それを共有するだけで親密な関係に持ち込めます。CIAの諜報員も相手から情報を得るために使っていたと語っています」

 相手をちょっと驚かせ、あなたを印象づける質問が「まぐれ当て質問」だ。

「知り合いでも、さほど親しくない人と仲良くなりたいときに最適。『もしかして東北出身?』『肌が白いからそうかと』など、外れることを前提に相手のポジティブな面に言及するのがポイントです。

 タレントの高田純次さんのトークや立ち居振る舞いのような“テキトーさ”が、この質問のわかりやすいイメージ。当たればラッキーぐらいの軽い気持ちで問いかければ、『なぜわかったの?』『やっぱりね』などと、話が弾みます」

承認欲求を満たすと好感度が爆上がり

 質問を投げかけるときは、リラックスした雰囲気づくりも重要だと、大久保さん。

「プライベートに土足で入り込むようなモノ言いや、質問の仕方は慎むべき。相手の立場で考え、“私はあなたの味方で仲良くなりたい”という空気感をつくること。

 相手は自分のことを話したいと思うと同時に『承認欲求』が満たされ、心を開きます」

 相づちの「なるほど」「そうですね」「確かに」「本当ですね」は、会話をスムーズにする言葉なので覚えておきたい。

 ただ、それらも単純に繰り返すと相手は「本当に聞いているの?」という気になってしまうのでご注意を。

「そんなときは、相手の言葉尻のひと言を引用し『◯◯なんですね』と返してみて。相手の言葉を借りることで、『しっかり理解しながら聞いてくれている』という納得感が生まれます。

 また、相手が会話を終えたら、ひと呼吸おくのもポイント。間を置いたうえでこちらから話し出すと『あなたの話をしっかり受け止めた』と理解されます」

 電話というツールも使わなくなり、用事はラインで、というケースが増える昨今。

「だからこそ、対面で会話する機会には、自分の話を聞いてほしい人が多いんです。そのときに『質問力』があれば、間違いなく相手との距離を縮められますよ」

会話上手のたった3つの質問

「メンタリズム日本一」が実践する話し方

褒めちぎり質問

 うれしさから好感度がジワジワ上がる。

会話上手のたった3つの質問「褒めちぎり質問」(イラスト/TORU)

 会話のテクで「相手を褒める」のは基本。好感度を上げるポイントは「褒めちぎる」ことだ。

 例えば、「やさしすぎるんじゃないんですか?」など「◯◯すぎる」というキーワードをうまく使うのがおすすめ。また、言葉だけでなく、表情や身ぶり、態度にも感情移入するのが効果的。

 ちょっと大げさなぐらいでちょうどいい。いくら言葉で「すごい!」と連発しても、表情や態度に表れていなければ、相手は褒められたと感じない。

 また、褒め質問に対して、相手は必ず謙遜してくるので、その謙遜を「そんなことないですよ」と「再否定」することも“褒めちぎる”テクだ。

心配質問

 悩みの共有であなたを「味方」だと認識!

会話上手のたった3つの質問「心配質問」(イラスト/TORU)

 誰しも持っている不安や悩みを引き出すことで、心の距離がぐんと近くなるテク。ただし、突然「◯◯で悩んでいますよね」と言うのは唐突で不自然すぎ。

 そこで使えるのが、心配な気持ちを会話に添えるテクだ。現代人なら誰しもが当てはまるような、外見から判断できる質問をまずは投げかけて。

 例えば、「前に会ったときよりも顔色が悪いですね?」「雰囲気がいつもと違うけど、どうしたの?」「疲れていそうですね?」など。自分のことを日頃から気にかけてくれていると思い、心を開いてくれるきっかけになる。

まぐれ当て質問

 テキトー質問で会話が盛り上がる。

会話上手のたった3つの質問「まぐれ当て質問」(イラスト/TORU)

 意外な質問をすると、相手はあなたに強い印象を持つ。答えが当たらなくてもいい、と割り切って質問を。外れたときに、相手のポジティブな面に切り替えて伝えることが大事。

 例えば、「アナウンサーの勉強をしていましたか?」と聞き、否定されたら「話し方がすごくきれいだから」という具合。「お仕事はアパレルですか?」と聞き、否定されたら「おしゃれだからアパレル関係かと」と答えるのも理想的。

 思いもよらない自分の側面を指摘されることで承認欲求が満たされ、同時に会話を楽しいと感じるように。

質問後に会話を盛り上げる3大ポイント
・相手の反応を気にしすぎない

 相手の反応が薄いと、つい焦って一方的に話をしがち。無理にその場を取り繕おうとせず、そのときはそのときと、ドーンと構えておくのが正解。

・トーンやテンポを相手にそろえる
 相づちをうつときはトーンやテンポを相手にそろえるだけで、あなたを“話が合う仲間”と感じさせることができる。話下手な人は、丁寧な相づちだけでも心がけて。

・「会話ドロボウ」にならない
 話の主役の座を盗む「会話ドロボウ」を無意識にしている人は多い。相手と自分で話す順番を分ける、あまり余計なことを言わず「わかる、わかる」と言うことで、相手の話を奪わないようにしよう。

大久保雅士さん●メンタリスト/ビジネス心理コンサルタント。生命保険会社勤務を経て、プロのメンタリストに。2016年の「メンタリズム・バトル・ロワイヤル」で優勝。著書に『「8秒」で人の心をつかむ技術』(ダイヤモンド社)。
教えてくれた人……大久保雅士さん●メンタリスト/ビジネス心理コンサルタント。生命保険会社勤務を経て、プロのメンタリストに。2016年の「メンタリズム・バトル・ロワイヤル」で優勝。著書に『「8秒」で人の心をつかむ技術』(ダイヤモンド社)。
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(取材・文/工藤千秋)