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 日本人の死因として最も多い病気は男女ともに「がん」だが、女性の死因第2位の「心疾患」と第4位の「脳血管疾患」は、いずれも血管が硬くなる動脈硬化が主な原因。

血管力チェックリスト

 血管のダメージが最終的に脳に出るか心臓にくるかが違うだけで、いわば同じ「血管病」と捉えることができる。そして女性の場合、この血管病が、がんを抜いて死因第1位になるのだ。

日本女性の4人に1人は血管病で亡くなっている!(厚生労働省『令和3年人口動態統計』より作成)

 脳血管疾患には脳梗塞や脳出血、心疾患には心筋梗塞や狭心症が含まれるが、いずれも突然死だけでなく寝たきりに陥るリスクも高く、健康寿命を縮める原因にもなっている。

 まずは「血管力チェックリスト」で自分の危険度の確認を。たばこや肥満、高血圧などは血管のダメージに直結するが、食事や運動も血管力アップにつながる。

 ラクに続けられる血管若返りワザで“オンナの危機”を乗り切ろう。

血管力チェックリスト
□体重が増えてきた
□たばこを吸う
□運動の習慣がない
□魚より肉を多く食べている
□牛乳、チーズ、バターなど乳製品が好き
□血圧が高くなってきた
□血糖値が高め
上記の内、2つ以上当てはまったら要注意!

 血管病予防には歩く・走るなどの有酸素運動を……といわれてもやるのは面倒。実は手を開閉するだけでも効果があることが最新研究で判明。“魔法のガス”NO(エヌオー【一酸化窒素】)の働きと、実践のコツを一挙紹介!

硬くなった血管は古いゴムホース

「動脈硬化を起こした血管は、まさに古くなったゴムホースのようなものです」と警告するのは、血管の働きと運動の関係が専門の岡本孝信教授だ。

「健康な血管は指で押しても簡単にへこむほど柔軟性がありますが、動脈硬化が進むとまったくへこまないほど硬くなります。そして、古いゴムホースにひびが入るように傷みやすくなってしまうのです」(岡本教授、以下同)

 硬くなった血管は、心臓の拍動で勢いよく送り出される血流の勢いを、クッションをきかせて受け止めることができない。すると血流の勢いが血管壁を直撃。

 このことが血圧を上げたり、血管を傷つけたりするため、血管病のリスクが高まってしまうのだ。

「でも、人の身体にはもともと血管をやわらかくする仕組みが備わっています。その仕組みは、血流をよくすることで活性化します。そして、国内外の研究から、とてもラクな運動でその効果が得られることがわかってきたのです」

 その「ラクな運動」として岡本教授がすすめるのが、1日に1〜2分、手を握ったり開いたりするだけの「ニギニギワザ」だ。

「身体の末端にある手のひらを開閉すると、筋肉が縮んだり緩んだりすることでポンプのような働きをするため、全身の血流がよくなります。

 この血流の刺激を血管の内側にあるセンサーが感じると、血管からNO(一酸化窒素)が出てきます。このガスが、血管をやわらかくする働きをするのです」

血流がよくなると、その刺激によって、血管をやわらかくする「魔法のガス」NO(一酸化窒素)が血管内に出てくる(イラスト/上田英津子)

 血管がやわらかくなると、血管が広がりやすくなるため血圧が下がる。実際に高血圧の人にこのワザを行ってもらった岡本教授の研究でも効果が確認されている。

 ニギニギワザは、特に血管病のリスクが増す更年期以降の女性が予防として行うのもおすすめとか。血流がよくなれば冷え性の改善も期待できるというオマケ付きだ。

 自分の血管を古いゴムホースにしないために、日々の習慣にしてみてはいかが?

血流アップ!1分間のニギニギで血管若返り

 NO(一酸化窒素)というガスを血管内に出すと血管がやわらかくなる。この簡単な運動でもガスが出ることが研究でわかっている。

1. 手を心臓より下の位置に置く。

《ポイント》
・姿勢は立っていても、座って行ってもOK。
・手を心臓より上にすると、血液を上げるために心臓に負担がかかるので避ける。

2. 1秒1回のペースで片手を軽く握る。

《ポイント》
・右手、左手どちらから始めてもよい。
・両手で行うと血流が急に増えすぎ、血圧が急上昇するおそれがある。
・息を止めて行うと血圧が上がることがあるので、自然な呼吸を続けるようにする。

3. 60秒間、無理せず続けられる力でニギニギを続ける。

4.少し休憩したら、もう片方の手で60秒間、1~3の動作を行う。

血流アップ!1分間のニギニギで血管若返り(イラスト/上田英津子)

※毎日行うと身体がその刺激に慣れてしまうため、週に2回ほど休みを入れるとより効果がアップ

[注意]
※高血圧や心臓病の人は、必ず医師と相談して行ってください。
※補助的な高血圧対策です。適切な食事や運動・治療の代替にはなりません。
※朝起きてすぐなど、血圧が高いときを避けて実施してください。
※効果には個人差があります。ニギニギ直後、効果が出るまでには60~90秒かかることがあります。また、長期的な効果が出るまでには4週間ほどかかります。

実録「ニギニギワザで血管がよみがえりました!」

 高血圧の人にニギニギワザを4週間続けてもらったところ、多くの人に高血圧改善効果が見られた。ここでは動脈硬化のリスクが高い女性の各年代で特徴的なケースを紹介。

A美さん(49歳)の場合

血圧:189/99 mmHg→157/96 mmHg

 更年期まっただなかのA美さん。「仕事のストレスや運動不足も加わり、血圧が上がっていましたが、ニギニギワザを始めて4週間で最高血圧を大きく改善できました」

B子さん(76歳)の場合

血圧:153/77 mmHg→131/77 mmHg

「血管は加齢で硬くなるため、B子さんのように高齢になると血圧も上昇傾向に」。運動も難しくなってくるが、簡単なニギニギワザなら継続でき、血圧を下げることができた。

教えてくれたのは……岡本孝信教授●日本体育大学体育学部健康学科教授。健康増進に資する運動と動脈伸展性の関係を研究。
取材・文/志賀桂子 イラスト/上田英津子