矢沢永吉

 高校野球の『センバツ』では、声を出しての応援が解禁に。春夏の甲子園としては3年半ぶり。サッカー・Jリーグも2月の開幕以来、解禁されている。アーティストでは星野源、Dragon Ashも現在は声出しOK。音楽フェスでは2月に開催された『BLARE FEST.2023』において、声出し以外にも観客席でのモッシュ(ファン同士で身体をぶつけ合ったり飛び跳ねたりする行為)も解禁されている。

矢沢永吉のロックな禁止事項

 新型コロナウイルスのために禁止されていたことが解禁となり、徐々にコロナ以前の日常が戻ってきている。一方で、声出しや客席で騒ぐことをコロナ以前から禁止していたアーティストがいる。

 御年73歳のロックミュージシャン・矢沢永吉だ。

「ロックのライブというと、自由だったり、客は酔って暴れたり、騒ぐことを楽しむみたいなイメージがありますが、永ちゃんのコンサートは実は“禁止事項”が非常に多い。まずお酒を飲んでいる人は会場に入れません。入場前に飲酒チェックされる人もいます。また、声援もNGですし、一緒に歌うことも禁止となってます」(矢沢ファンの男性、以下同)

 ファンは愛すべき矢沢を、親しみを込めて“永ちゃん”と呼ぶ。

「昔のコンサートでは“永ちゃん! 永ちゃん!”というようなコールが定番でしたが、現在は永ちゃんコール禁止となっています」

禁止事項は声援だけでなく、服装も。

「永ちゃんファンは“元ヤン”の人も多いので、いかつい格好の人が目立つのですが、周囲に威圧的な印象を与える格好はもれなく入場禁止となっています。以前はスーツに永ちゃん関連の刺繍を入れている人や、いわゆる暴走族の“特攻服”みたいな人も結構いましたが、今は禁止になっています。

 永ちゃんになりきるためのファンの定番ファッションである“白スーツ”にリーゼント、パナマ帽もわりと威圧感があるとは思いますし、ライブ会場周辺で複数人でいるとかなり驚かれますが、これは禁止に当たらないようです(苦笑)

 他のベテランアーティストの長年のファンも、世代的に青春時代がそういったブームに当たるのか、刺繍の入ったお手製のコンサート着の人が散見される。

「ヤンキー系、不良系にウケたアーティストのライブでは結構見かけます。長渕剛さんだったり、サザンオールスターズだったり、意外なところでTUBEでも見ますね」

服装がきっかけで「出入り禁止」「ファンクラブ強制退会」の過去

 過去に矢沢永吉のコンサートでは服装に関して、私設応援団や団体を示す刺繍、もしくは日の丸などが入っていることからトラブルに発展した事態が多々あり、その反省からNGになったよう。

 このような人たちによって「コンサートに行きたいけど怖くて行けない」という声が多数あり、事実、一部ファンが「コンサート出入り禁止」「ファンクラブ強制退会」に至っている。一方、声援についてはコロナ以前から設けられていたルールでもある。

「完全にNGだったわけではなくて、“過剰な声援”という表現でしたが、コロナ以前から禁止事項となっていましたね」

矢沢永吉がファンに「永ちゃん」と呼ばせない

 永ちゃんが“永ちゃん”と呼ばせない理由は――。

永ちゃんがコンサートでも話したりしていますが、“歌を楽しみたい人のため”という理由ですね。確かに大声で一緒に歌うファンもいましたが、みんな永ちゃんの歌を聞きに来ているわけで、ファンの歌を聞きに行っているわけではない。永ちゃんはコンサートの演出を重要視しています。しかし、コンサートでは演出を妨げるような声援も少なからずあった。

 また、“応援団”の一部は、なかば強制的に周囲に一緒に歌わせたり、コールさせるような人もいたりしたので、迷惑に思っていた人も多かった。コロナも理由の1つではありますが、声援や歌うことを迷惑に思っていた人、永ちゃんの歌を楽しみたい人のためを思った禁止事項なんです」

 矢沢の“名言(迷言?)”として知られる「俺はいいけど、YAZAWAが何て言うかな?」(地方でのコンサートにおいて、スタッフの手違いによりスイートルームではなく、ツインルームが用意されてしまった際、謝るスタッフに対し「いいよ、部屋がない訳じゃないんだから、気にしないでよ。俺は別にいいから」。に続いての発言)。

 ファンはコンサートでの行為について、「YAZAWAが何て言うか」考えなくてはならないのかもしれない。

 
矢沢永吉の福岡コンサートに参加したファンと思われるSNS。満席の会場が映し出されて(一部、編集部加工)

 

矢沢永吉の福岡コンサートに参加したファンと思われるSNS。満席の会場が映し出されて(一部、編集部加工)

 

矢沢永吉のコンサート開催のお知らせ(公式HPより)

 

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