愛知県・ボートレース蒲郡はロケ誘致を行っている

 

 コロナ禍のおこもり需要もあり、ネット投票を中心に売上げを伸ばしている公営ギャンブル。中でもボートレースは神尾楓珠や王林、山之内すずなど若い世代に人気のタレントをイメージキャラクターに起用。イメージアップに成功したこともあり、‘22年度の売上げは過去最高となる2兆4142億4689万1800円を記録した。

「バブル経済の恩恵を受けて、‘91年度に2兆2137億の売上げを記録して以降は売上げが下がっていき、‘10年度には売上げ8434億円まで低迷することに。同年、呼称を競艇からボートレースに変更したのを機に南明奈さんをCMキャラクターに起用するなど、新規ファン獲得に向けた活動に力を注ぐようになったことも、売上げがV字回復した理由です」(スポーツ紙記者)

山田孝之は「宣伝方法として斬新」

 現在はレース場に若い世代や女性ファンの姿も目立つようになったが、愛知県にあるボートレース蒲郡では新たな試みを行っている。4月22日から27日まで前田敦子主演ドラマの協賛レース『連続ドラマW-30「ウツボラ」カップ』を開催。愛知県蒲郡市を中心にロケが行われた同作品では、レース場も登場する。

蒲郡市と幸田町でほぼ全編ロケを実施したご縁で、 ボートレース協賛の件も蒲郡市役所よりご提案いただきました。ドラマ本編についてはBOAT RACE蒲郡さまにもご協力いただき、 第一話でその場面を使用させていただいております。ドラマ撮影時はレース本番ではなかったのですが、レーサーのみなさまのレース前の練習に合わせてロケを行わせていただけたので、素晴らしい撮影となりました」(WOWOWの担当者)

 ボートレース蒲郡は‘21年公開の映画『ゾッキ』、同年放送のドラマ『最高のオバハン 中島ハルコ』でも同様にロケを行った縁で、協賛レースを開催。‘21年3月に開催された『ゾッキカップ』では、監督を務めた山田孝之がレース配信に登場したことも話題に。

「漫画『ゾッキ』の原作者である大橋裕之先生が蒲郡市出身であったため、映画化にあたりオール蒲郡ロケにすることになりました。蒲郡でロケ地を探すにあたりロケハンでボートレース蒲郡に訪れたとき、職員からレースの冠名がどのように決まるのかを説明した際に、映画『ゾッキ』で監督兼プロデューサーという立場であった山田孝之さんが、『ゾッキカップ』ができたら面白いのでは? と。

 全国のボートレース場で『ゾッキ』の名前が呼ばれることになると、映画の宣伝方法として斬新で『ゾッキ』らしいとの考えにいたり、蒲郡のボートレース担当者と詰めて実現に至りました」(蒲郡市役所産業振興部 観光まちづくり課 シティセールス推進室担当者)

 『ゾッキカップ』を開催した際には劇中で使用した小物などを展示。新規来場者促進として活用したという。

ボートレース蒲郡もスタンドのリニューアルを行ない、とても綺麗な施設がありますのでさまざまな場所をご活用いただいております。今後も同様のイベントが実施できたらと考えております」(ボートレース蒲郡)

 ドラマ『最高のオバハン 中島ハルコ』では第6話のロケでボートレース場が使用されたほか、同作品に出演していた俳優・真魚が協賛レースの優勝者表彰式のプレゼンターとして登場。『最高のオバハン 中島ハルコ』と同じプロデューサーだったことで、『ウツボラ』でも協賛カップが行われたようだ。

「特徴ある施設であり映画などの制作者にとって台本にハマる作品の場合、ロケに協力してもらえる施設であるという点が、市全体のロケ誘致の大きな魅力になっています。市としてもボートレース場がロケできることを全面的に打ち出してロケ誘致を行っています。ドラマや映画関係者の間でもボートレース蒲郡でロケが可能という情報が伝わっており、今後のロケ誘致に期待ができます」(蒲郡市役所担当者)

「水上の格闘技」と呼ばれる激しいレースも魅力

蒲郡の認知度アップにも貢献

 蒲郡市ではロケ地マップを配布するなどして作品を盛り上げているが、冠レースを行う効果をこう語る。

ロケ地の作品を冠とすることで、全国のボートレースファンにドラマや映画作品とロケ地・蒲郡を紐づけてPRすることができ、作品と同時に蒲郡の認知度UPにつなげることができています。市民もなじみの場所が作品の中で紹介され、とても喜んでいます」(同・担当者)  

 ドラマや映画とのタイアップは選手の間でも好評だという。

『ウツボラカップ』では優勝した黒井達矢選手が“第5話まで見ましたよ! 次回が楽しみです”とコメントをしてくれたことで、スタッフやキャストの士気が上がりました」(同・担当者)

 現在はボートレース蒲郡のみでの試みだが、ボートレース振興会もこう期待を寄せる。

今後こうしたロケの誘致も必要かと思いますので、検討していきたいと思います」(担当者)

 かつてはおじさまたちの鉄火場のイメージが強かったボートレースだが、今後はドラマや映画のプロモーションの場のひとつとして定着していくかもしれない。