天海祐希も会計は現金で。「セルフレジは使わない」と番組内で発言

 コロナ禍で非接触の会計方法が普及したこともあり、QRコード決済の利用率が一気に伸びている。経済産業省の発表によるとキャッシュレス決済比率は36%となっている。財布を持たずに済む、ポイントが貯まるなどメリットは多いが、支払い方法は現金のみという考えの人も一定数いる。キャッシュレスが進む中、現金払いを選ぶ理由とは?

天海祐希は「セルフレジを信用してない」

『合理的にあり得ない ~探偵・上水流涼子の解明』(月曜22時〜、フジテレビ系)で主演を務める女優の天海祐希が4月放送の『ぽかぽか』(フジテレビ系)に生出演した。

 あるコーナーでは、「コンビニのセルフレジを使ったことがないっぽい」というイメージについて問われた天海が「できれば現金で、対面でちゃんとお金を払いたい」と発言。理由はセルフレジを「信用してないから」だと語った。

 コロナ禍以降、非接触・非対面のニーズが高まったこともあり、キャッシュレス決済の普及は一気に加速。4月6日に発表された経済産業省のデータによると、2022年のキャッシュレス決済比率は36.0%に達し、決済額は初の100兆円超えとなっている。

 内訳としては「クレジットカード」が30.4%(93.8兆円)で最も多く、スマホアプリのバーコードやQRコードを使った「コード決済」が2.6%(7.9兆円)と続く。さらには、交通系ICなどの「電子マネー」が2.0%(6.1兆円)、「デビットカード」が1.0%(3.2兆円)と、クレジットカード以外のキャッシュレス決済方法も堅調に伸びている。

 一方で、天海のような“現金派”も依然として多い。そこで今回は、全国の30代から50代の女性500人に「会計時の決済手段」についてのアンケート調査を実施。キャッシュレス決済が一気に普及するなかで、なぜ現金払いを続けるのか、“現金派”の主張を見ていきたい。

 今回のアンケートで【現金のみ】と回答したのは117人で、全体の23.4%ほど。一方で【キャッシュレス決済のみ】は41.0%となっており、併用派も合わせるとキャッシュレス決済を活用している人は多い印象だが……。

「キャッシュレス決済の普及が遅れているといわれる日本ですが、コロナ禍以降でずいぶん普及したなという実感もありますね。ただ、海外でもキャッシュレス決済を使わない“現金派”は年齢層が上がるほど多くなる傾向があります。今回のアンケートは50代までの女性が対象ですが、60代、70代とさらに上の世代を含めて調査すると“現金派”はもっと多くなると思いますよ

 そう教えてくれたのは、シンガポールを拠点に活動する1級ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子さん。海外の事例では“現金派”は高齢者だけでなく、意外にも富裕層に多いのだという。

「キャッシュレス決済はすべての記録がデータとして残るため、富裕層の中にはそれを嫌がる人もいるようです。特に著名人などは、情報漏洩のリスクという観点でも、他人に情報を預けたくない、プライベートを知られたくないという人が多いでしょうね」(花輪さん)

キャッシュレス決済も身近になり、無人店舗の増加にひと役買っている

『〇〇Pay』がありすぎて、どれを使えばいいのかわからない

 今回“現金派”の意見として最も多く見られたのは、支出管理のしやすさについて。

「実際に財布の中身が減っていくのがわかるので、使いすぎの予防という意味でも現金払いに」(44歳・東京都)といった声や「キャッシュレスだとお金を使ったという実感がなく、つい使いすぎてしまう」(51歳・京都府)など、浪費予防のための“現金主義者”は多い。

たしかに“現金派”のいちばんのメリットは、使いすぎを抑えられるという点。クレジットカードとは異なり、財布の中身以上の金額は使えないので、節約意識や貯蓄意欲につながるという人は多いと思います。

 ただ、キャッシュレス決済のように記録が自動で残るわけではないので、厳密な支出管理をするためにはこまめに家計簿をつけなければならないといった手間はあるかもしれませんね」(花輪さん)

 次いで多かったのは「現金払いのほうがラク」という意見。なかには「クレジットカードやコード決済が使えない店舗なども多く、支払い時にスマホを開いてQRコードを提示したり、暗証番号を入力したり、キャッシュレス決済も意外と煩雑でストレスが多い」(33歳・埼玉県)という声も。

 また、「世の中に『〇〇Pay』というのがありすぎて、どれを使えばいいのかよくわからない」(56歳・岡山県)など、新しい決済方法を取り入れるよりも慣れ親しんだ“ニコニコ現金払い”をしたいという意見が目立った。

「デジタルネイティブの若い世代と異なり、スマホを使った決済よりも現金のほうが安心できるという声はやはり高齢層ほど増えます。小銭を数えたり、お釣りの受け渡しをしたりという煩雑さはもちろんありますが、ある意味で単純明快な現金払いのほうがスムーズに買い物できるという人はいまだに多いですね」(花輪さん)

 キャッシュレス決済に不安感を抱く“現金派”も多い。

「不正利用をされてしまう可能性が拭えず、カードは持ってはいるけど極力使いたくない」(40歳・東京都)

クレジットカードは翌月決算で、ある意味で借金のように感じて使いにくい」(39歳・福岡県)という人も。

「特にネット上でクレジットカード情報を入力したくないという人は一定数いるようです。私自身もかつて不正利用の被害に遭ったことがあるので、セキュリティー上の不安感はよくわかります。

 カード会社の保険でカバーされることがほとんどですが、きちんと明細をチェックしていないと気づかないということもあり得ます。もちろん現金でも盗難や財布を紛失するリスクがあるのでどちらが安全というわけではないですが、利便性より安心感を求める人がいるのは当然かもしれませんね」(花輪さん、以下同)

 一方で、“キャッシュレス派”の理由として最も多かったのが「ポイントがどんどん貯まる」というメリットだ。

ポイント還元キャンペーンを積極的に行っているサービスも多くあり、そういったお得感がキャッシュレス決済の普及を後押ししているようです。もちろん財布を持たずに出かけられるといった利便性もあり、一度使い始めるとキャッシュレス決済のほうが楽だと感じる人はこの先さらに増えていくと思います」

4月24日、全国の30代から50代の女性500人に インターネットアンケートFreeasyで調査した結果

 

現金を手に持って使ってみてお金の管理を学ぶことも大切

 海外の事例を見ると、日本よりさらに急速にキャッシュレス社会は広がっている。

各国のキャッシュレス決済比率を見ると、韓国では93.6%、中国は83.0%と、日本より大幅にキャッシュレス化が進んでいる国は多くあります。もちろん統計方法が異なるので数字だけでは比較できませんが、私が住んでいるシンガポールでもキャッシュレス決済はかなり普及しています。

 旧正月には紅包(ホンパオ)というお年玉を渡す風習があるのですが、近年は「e―紅包」という“キャッシュレスお年玉”が推奨されるほどで、決済方法にも文化の違いがあり、おもしろいですね」

 日本でも現金を取り巻く環境は少しずつ変化している。2021年からは新500円硬貨が流通し、2024年の上半期には新紙幣も発行される。

 一方、特に自販機や駐車場の精算機などでは新500円玉や1万円札などの高額紙幣に未対応のものもいまだにある。キャッシュレス決済の利便性はこれまで以上に高まりそうだ。

「もちろん旧紙幣が一切使えなくなるということはないですが、この機会に現金からキャッシュレスへという流れはさらに加速するのではないかと思います。お金の扱い方に慣れていない子どもにとっては、実際に現金を手に持って使ってみてお金の管理を学ぶことはとても大切です。

 ただ、キャッシュレス化が進む現代においては、キャッシュレス決済の使い方に慣れておくというのもマネーリテラシーのひとつ。大人にも子どもにも重要になっていくと思います

 来年には1万円札、5千円札、千円札の顔がそれぞれ渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎にかわる。キャッシュレス決済の導入も含め、お金のリテラシーを改めて考えるいい機会になりそうだ。

取材・文/吉信 武

花輪陽子 外資系投資銀行を経てファイナンシャル・プランナーとして独立。2015年よりシンガポール在住。『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』(講談社+α新書)など著作多数