吉沢悠 撮影/伊藤和幸

「SNSを見ていると“クズ”と“クソ”が多いですね。“(主人公・陽子役の)稲森さんが、かわいそう”“旦那クズ”“早く復讐してほしい”みたいな感じで、合間に“クズ”が入ってくる(笑)。でも、これが、僕が演じている昂太に対する評価の正解だと思っています」

 放送中のドラマ『夫婦が壊れるとき』で、映画製作会社の社長で、映画監督でもある真壁昂太を演じているのが吉沢悠。稲森いずみ演じる、クリニックの副院長であり内科医の妻・陽子にとって、自分と息子だけを特別に愛してくれる理想的な夫に見えていた昂太だが、若い佐倉理央(優希美青)と不倫し、理央は妊娠。また、不倫が陽子にバレないよう、共通の友人たちに協力してもらっていたことがわかるなど、次々と昂太の裏切りが明らかになっていく。

男性から「頑張って」の声

吉沢悠 撮影/伊藤和幸

「オンエアが始まってから何話か見てくれた身近な人たちが、感想を聞かせてくれました。でも、女性からは、ほぼなかったですね。そりゃ、ネットで“クズ”って書かれている役ですから(笑)。男性の何人かから“先の展開はなんとなくわかるし、もがいている昂太を見ていると胃が痛くなるけど、とにかく頑張ってほしい”という言葉をいただきまして(苦笑)。

 妻も不倫相手も同じように好きで、嘘をついたり、ごまかしたりすることも下手な昂太のような男性が本当にいるものなのか、僕自身は疑っていたんです。でも、男性からの声を聞いて、もしかしたら似たような人物が存在するのかもしれないという発見がありました(笑)

 演じるうえで理解することが難しかったという昂太。自身については「もしも自分が不倫をしていて、“携帯を見せて”と言われたことを想像するだけでドキドキする(苦笑)」と語る。

 無料動画配信サービスTVerのドラマ部門で何度もランキング1位となり、再生回数(全話合算)が1200万回を突破するなど、注目を集めている“フウ壊”。原作は '15年、 '17年とイギリスのBBCで放送され、各ドラマ賞を総なめにした『女医フォスター夫の情事、私の決断』。韓国でもリメイクされ大ヒットし、満を持して日本版が制作された。

どの国でも大事に扱われている作品ですので、僕も全力集中で撮影に臨みました。こんなことは初めてですが、家に帰った瞬間に電池が切れたような状態になることが数日、ありましたね。我慢できないくらい眠くなって、寝てしまったことが。感情の起伏が激しかったり、強い思いを込めないといけないシーンを演じることは、面白い反面、かなりエネルギーを使うものなんだと感じました

 すでに最終回まで撮り終えているが、まだ身体に昂太が残っているという。それほどまでに没頭した撮影では、眠れない夜もあった。

俳優仲間からの“アドバイス”

「よくあるドラマの撮影ですと、当日のリハーサルで共演者の方や監督と話をしながらシーンを作り上げていくことが多いのですが、このドラマでは、数日前からその作業をしていました。それは、臨場感や美しさを追求するために。そうすると、シーンのことが気になって、夜、眠れなくなるんです。ベッドに入って、なるべく考えないようにしようとは思うんですが……」

 いい方法がないか考えていた吉沢を救ってくれたのが、俳優仲間だった。

吉沢悠 撮影/伊藤和幸

「話したわけではないのに、伊藤英明くんが、どこかで見つけた動画を突然、送ってきてくれて。“感謝”することがすごく大事だという内容をまとめたものでした。朝、起きたときに感謝を口にし、寝る前にも感謝する。そうすると、今日がどれだけすばらしい一日だったかがわかる。この行動が副交感神経にいいらしくて、リラックスすることで眠れるんです。なので、ドラマの撮影と同じくらい、寝る前に感謝することにも集中していましたね。僕には、とても効果がありました」

 実は、朝“感謝すること”は4年ほど前からのルーティン。当時、映画の現場で知り合った人からすすめられ自宅に神棚を祀ってから続けているという。

「一日の始まりにいろいろと考えることができるし、リセットにもなっていいんです。それこそ、このドラマの撮影で本当に集中しないといけなかったシーンの朝は“今日も一日(を迎えられて)ありがとうございます”から始まって“妻がいてくれて、ありがとう”“愛犬が元気でいてくれて、ありがとう”と感謝を伝えていました。気分転換にどこかへ行くこともできなかったし、脱がないといけないシーンもあってお酒を飲まないようにもしていたので、気持ちを切り替えるためにも実践していましたね。そのくらい全力で取り組んだドラマ。“早く、陽子に復讐を始めてほしい”と思われているみなさん、期待していただいていいですよ(笑)

●共演の稲森に言われて驚いたこと

 撮影中に稲森さんから「昂太って、陽子のお金が目当てだったり、いまの生活を壊したくないから彼女と一緒にいるんだよね?」と言われて。そういう理由ではなく、純粋に陽子と一緒にいたい思いで昂太を演じていることを伝えたら、「ほんと……」と稲森さんがすごく寂しそうな顔をされていたのに驚かされました。

●今年で結婚10周年 円満な結婚生活を続ける秘訣とは?

 コミュニケーションを取るって、本当に大事だと思っています。だから、僕は妻と話をする時間を意識的に持つようにしていますね。たまに、「眠いな」と思いながら聞き始めるときもあるのですが、聞いているうちにだんだん理解が深まってくると、興味が湧いてきて。それと、正解を求めていないなと感じたときは、ただ受け止めるようにしています。

日本テレビ金曜ドラマDEEP枠『夫婦が壊れるとき』
日本テレビ金曜ドラマDEEP枠『夫婦が壊れるとき』

日本テレビ金曜ドラマDEEP枠
『夫婦が壊れるとき』
(毎週金曜、深夜24時30分~)
出演:稲森いずみ、吉沢悠、優希美青ほか


撮影/伊藤和幸