東山紀之

 3月にBBCが故・ジャニー喜多川前社長による性加害問題を報じて以降、揺れるジャニーズ事務所。5月14日に藤島ジュリー景子社長(56)が「世の中を大きくお騒がせしておりますこと心よりおわび申し上げます」などと謝罪すると、同21日には幹部タレント・東山紀之(56)が、MCを務めるテレビ朝日『サンデーLIVE!』(テレビ朝日系)内で「心を痛めた全ての方々、本当に申し訳ありませんでした」と詫びた。

 同業の芸能プロダクション関係者たちは問題の発覚当初から「社名からジャニーさんの名前を外したほうがいい」と指摘しているが、東山も社名変更の可能性に踏み込んだ。

「ジャニーズという名前を存続させるべきなのか。(それも含めて)外部の方とともに全て透明性をもってこの問題に取り組んでいかなければならない」(東山)。

 社名が変わることもあり得ると示唆した。

「外部の方」とは1年前、ジャニーズ事務所に顧問として招かれたNHK元理事や大手広告代理店幹部、同レコード会社幹部らも含む。ジュリー氏は社長に就いた2019年以降、外部の血を積極的に入れ、会社の近代化を図ろうとしてきた。皮肉にもそんな中での問題発覚だった。

ジャニーズ事務所は今後どうなる?

 同社は今後どうなるのか。まず、テレビ界の動向を聞くと、同社の所属タレントを排除する動きはない。所属タレントが問題を起こしたわけではないからだ。

 2000年から同社所属タレントが大きな役割を担っている日本テレビ系『24時間テレビ46』(8月26~27日)の場合、メインMCをなにわ男子が務める。4月17日に発表された通りだ。

「見直そうとする声はない。スポンサーへの影響もない」(日テレ関係者)

 半面、ジャニーズ事務所の内部は大きく変わりそうだ。性加害問題を調べ、公表をすることを迫られる一方、退所者やほかの事務所に所属する男性アイドルとの協調路線が進むのは間違いない。これは問題の発覚前から既に始まっていた。それが加速する。

 他局やほかの事務所が驚いたのは日テレが中継した『エックスゲームズCHIBA2023』(5月12~14日)に山下智久(38)がアンバサダーとして出演したこと。山下は2020年の退所者である。アンバサダー就任は問題の発覚前から決まっていた。

 エックスゲームズとはスケートボードなどアクションスポーツの祭典で、若者らの間で人気が高まっている。日テレは社を挙げて応援している。

 放送が深夜だったことから山下の出演に気が付かなかった人もいるだろうが、退所後は民放への出演から遠ざかっていた山下にとって大きな一歩だった。

 山下は2005年の第1シリーズに出演したTBS系ドラマ『ドラゴン桜』の第2シリーズ(2021年)にも登場したものの、メールを読む声だけ。そうなった理由については諸説あったが、同局がジャニーズ事務所に忖度したという見方が最有力だった。

 山下が主演した2022年のNHKドラマ『正直不動産』の場合、同局がジャニーズ事務所にほとんど気兼ねしないから実現したと見られた。2017年に退所し、新たな所属事務所・CULENに移った元SMAPの香取慎吾(46)稲垣吾郎(49)、草なぎ剛(48)もNHK-Eテレの『ワルイコあつまれ』などには出演してきた。 

 一方、日テレは20年以上もジャニーズ勢が『24時間テレビ』のメイン級を務めるなど同社と関係が濃密。民放随一と言われる。それなのに山下がエックスゲームズのアンバサダーを務めたのだから、他局やほかの事務所は衝撃を受けたのだ。

「退所者らとの融和を勧めてするのは主に外部から招いた人たち。世間の人がジャニーズ事務所に悪感情を抱くことを懸念しているのだろう。このため、各局から退所者の出演話を聞かされても鷹揚(おうよう)に構えるようになった。芸能関係者すら“絶対にあり得ない”と思われていたことも実現した」(大手芸能事務所幹部)

解散したSMAPの共演、ジャニーズ愛を貫くファンたちの心情

 元SMAPの中居正広(50)と香取慎吾が4月30日放送のフジテレビ系バラエティー番組『まつもtoなかい』で共演した件である。中居も2020年に退所し、個人事務所を設立したが、マネージメント面などで今もジャニーズ事務所と関係が深い。

 だから、昨年12月に中居がTBS系のバラエティー番組『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』を体調不良で休んだ際には、嵐の二宮和也(39)による代打MCが実現した。このため、ジャニーズ事務所との関係が良好ではないCULENの香取が中居と共演したのは画期的だった。

 その上、これまでだったらフジテレビ側が特に慎重になる時期に2人は共演した。ジャニーズ事務所が筆頭タレントと考える同じ元SMAPの木村拓哉(50)がドラマ『風間公親 -教場0-』に主演中だからである。

 6月22日から世界配信されるNetflixのドラマ『離婚しようよ』には2019年に退社した元・関ジャニ∞の錦戸亮(38)が準主演級で出演する。制作会社がつくった配信ドラマではなく、制作はTBSで、プロデューサーも同局スタッフ。錦戸が次に出るのは同局のドラマではないか。

 この流れが止まることはない。今の状況で同社は世間の目を無視できないからだ。特にファンクラブの動向は気にせざるを得ない。

 ファンクラブは同社を経済面で支えているからである。グループや個人ごとに別れているが、いずれも入会費1000円で年会費4000円。嵐だけでも会員数は推定で300万人を超えており、その年会費は年間合計約120億円に達する。Snow manは同113万人なので、45億2000万である。

 複数のファンクラブに入っている人もいるため、会員数は延べ約1000万人。同社の資産は不動産だけでも1000億円は下らないとされるものの、会費収入は大きい。

 また、経済面より重いのは会員が同社の岩盤支持層であること。自分が会員ではないタレントたちも応援し、CDを買い、ドラマを観てきた。ベテランを支え、新人を押し上げてきた。同社のファンの核なのだ。

 なにより、会員たちは何があってもジャニーズ愛を貫いてきた。その活動や方針を支持してきた。もしも一斉に離反されたら、同社の屋台骨が揺らぐ。

 会員の声に応えるためにも改革が求められる。待ったなしである。

取材・文/高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)放送コラムニスト、ジャーナリスト。1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立。

 

TOKIOに今井翼、東山紀之に囲まれたメリー喜多川さん

 

黒のジャケットに身を包み、深々と頭を下げた藤島ジュリー景子社長(公式ホームページより)

 

テレビ朝日系『サンデーLIVE!!』に出演する東山紀之のコメントについて、ジャニーズ事務所が代理店に一斉送信したメールの文面

 

ジャニー喜多川さん