妻42歳、夫22歳の年の差カップル。その自然体の生活とは?(イラスト:堀江篤史)

<夫22歳 大学生、この3月に卒業、院試に合格すれば大学院に進む予定、初婚。妻42歳 社会人歴22年以上、転職は何度も経験、今の仕事はもうすぐ丸3年、決して多くない年収、初婚。
 2021年秋に出会い系サイトで知り合い、授かり婚。割と早い段階から子供ができたらいいねと話していたこともあり、歳の差や夫の学生結婚に対するハードルは当人同士はほぼ感じなかった>

 今年のはじめに、本連載の出演申し込みフォームにこんな文面のメッセージが入った。簡潔にして客観的。知性を感じるとともに、新婦のほうが20歳年上というところがユニークだと思った。

当記事は「東洋経済オンライン」(運営:東洋経済新報社)の提供記事です

 結婚後、松本真紀さん(仮名、42歳)と健太さん(仮名、22歳)は東北地方の3LDKのマンションで暮らしている。真紀さんの母親が所有している物件なので管理費の支払いのみ。福祉関係の仕事をしている真紀さんの年収は300万円弱なので、大いに助かっているらしい。なお、健太さんの学費は両親が支払ってくれている。

見た目では判断されない出会い系サイトに救われた

 Zoom画面の向こう側に並んでニコニコしている2人は、それぞれ年相応の外見である。特に健太さんは丸首のざっくりニットとメガネ姿はお洒落な学生そのものだ。妊娠中の真紀さんは自分の外見で思春期は「かなり悩んだ」と明かすが、出会い系サイトに救われたという。

「顔写真を載せないことで、見た目では判断されない出会いができます。大学時代にやはりネットで知り合った最初の恋人は私の内面をしっかり評価してくれました」

 以来、主にネットを使って様々な男性と知り合って交際したと振り返る真紀さん。ただし、交際期間は長くても2年半で、自分から別れを告げることが多かった。

「一緒に生活をすることが想像できなくて、1週間ぐらい一緒にいると嫌になってしまっていました」

 健太さんとの出会いもあるサイトだが、登録したのはコロナ禍が始まる前。その後、真紀さんは現在の職場に転職をし、仕事に慣れるためにサイトは放置していた。登録したことすら忘れていた頃、健太さんからのメッセージが送られてきた。

「数打てば当たるを狙ったような内容ではなく、しっかりした文章だったので返事をしてみようかなと思いました。あと、性的嗜好が一致していたからです。どんな嗜好なのかは言えません」

 大いに気になることを言う真紀さん。当時、かなりぶっちゃけたプロフィール文をサイトに載せていたのだろう。それを読み、「しっかりとした文章」を書いて送る健太さんもなかなかの若者だ。

「コロナで大学の授業がオンラインになり、生活が単調になっていました。新しい刺激は新しい人から来るものだと思っています。メッセージのやり取りでも会ってからも真紀さんはちゃんと会話ができると感じました。会話のテンポが近いんです」

 高校時代に2人ほどと交際した経験があるという健太さん。いつか結婚したいというよりも「一緒に長く過ごせる人がいたらいい」というぼんやりした気持ちはあったと明かす。人や知識には触れていたいけれど、ビジネスには興味を持てないので大学院に進学。今後も会社勤めはしないつもりだ。

「計画性のない人間なので……。でも、子どもが生まれるのはすごく楽しみです。一人では得られない経験ですから。真紀さんと『どういう風に育っていくんだろうね』と話しながら赤ちゃんグッズを買ったりしています。かわいいだろうな~」

世間体を整えるための無理はしない

 なりゆき任せなところは真紀さんも似ている。健太さんと出会うまでは結婚をあえて意識することはなかった。

「35歳を過ぎると男性からのアプローチが格段に減ることは感じていました。同世代の友だちには婚活や妊活を頑張っている人もいます。でも、私は好きな相手としか結婚したくないという気持ちが強くて、子どもにしても特別養子縁組や里親という選択肢もあると思っていました。何歳までにこれを絶対にやらなくちゃ、という感覚はありません」

 世間体を整えるための無理はしないという点は、住む場所や働き方にも表れている。若い頃は海外に住んだこともあったが、今は親の近くに住むことが楽だと断言。仕事よりも、健太さんや親しい女友だちとの時間、旅行などにエネルギーを注ぎたいと思っている。

「友だちからは『自分自身を納得させるのがうまい人』と評されたことがあります。マイナスに思えるような出来事があっても、自分に必要な通過点だったと思うようにしているからかもしれません。他の人からはポジティブに見えるのでしょう」

 我が道を行く真紀さんが健太さんとの共同生活を想像できたのは「性的嗜好が一致」したからだけではない。会話の深さ、経済的価値観、部屋を散らかすレベルなどが自分と大きくズレていないと判断したからだ。

「健太は若いけれど考え方がしっかりしていて、人の内面などに関しても意見を交わせます。お互いに趣味などの好きなことにはお金を使うけれど、無駄遣いはしないしギャンブルもやりません。結婚する前、健太の一人暮らしの家に遊びに行き、掃除道具がちゃんとあるのも好印象でした。一緒に住んでも私だけが家事を頑張らずに済むな、と」

真紀さんに負けず劣らず「ポジティブ」な健太さん

 実際、結婚後の家事の大半は健太さんが担っている。大学院の学費免除や奨学金制度の活用を検討しているが、その先のことまでは心配したりはしない。真紀さんに負けず劣らず「ポジティブ」な性格なのだ。

 健太さんの両親はまだ50代。一人息子が20歳年上の女性と「授かり婚」をしたことにどんな反応を示したのだろうか。

「僕は高校時代に学年が1コ上の女性と付き合っていました。だから、結婚相手は年上だろうと親も思っていたみたいです。まさかここまで年上とは、と驚いていましたが反対はされていません」

 真紀さんには4歳年下の弟がいて、20代のうちに結婚して子育てをしている。そのため親からのプレッシャーはなかったという。

「私は結婚しないものだと父は思っていたそうです。結婚を報告したら、『相手はそれでいいのか?』と健太の家のことを心配していました(笑)」

 かなり個性的な2人だけに、周囲も「あれこれ言っても仕方ない。どうせ言うことは聞かないから」と見守ることに決めているのかもしれない。実際、この年の差カップルは今のところ仲良く生活している。

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「小さなことですり合わせが必要だったりはします。例えば、私が洗濯をしなかったことを健太に指摘されてカチンと来たり。身重でゴハンを作ったことを評価してほしいです。でも、私が長年好きな映画や音楽を健太も好きになってくれて共有できたりすると嬉しいですね」 

 昨年は、玉置浩二のコンサートに誘って2人で出かけたらしい。健太さんは「生歌、すごかったです。何なんすかね、あれは!」と感動を隠さない。その隣で真紀さんは楽しそうに笑っている。

 親子ほど年齢の離れた2人だが、しばらく話していると似た者夫婦のように見えてくるのが不思議だ。リラックスをして深い会話ができること、金銭感覚や衛生観念が離れすぎていないこと。人生のパートナーを選ぶ際、年齢よりも注視するべき条件があるのかもしれない。

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