世の中には「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」だけでなく、「ヤバい男=ヤバ男(ヤバダン)」も存在する。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、芸能人や有名人の言動を鋭くぶった斬るライターの仁科友里さんが、さまざまなタイプの「ヤバ男」を分析していきます。
2022年11月、『大病院占拠』ロケに挑んでいた櫻井翔

第26回 櫻井翔

 東山紀之など、報道番組に携わるジャニーズ事務所所属のタレントが、故・ジャニー喜多川氏の性加害に関する見解を述べ始めています。キャスターとして出演しているのなら、触れない訳にはいかなかったのでしょう。

 けれど、気の毒だなぁと思ってしまうのです。今回の件を、会社員に置き換えるとこんな感じではないでしょうか。一代でエンパイアを築いたカリスマ経営者がいて、業績から言えば神レベルの人だったけれど、ウラで悪いことをしていることは昔から囁かれていた。それが経営者の死後、明らかになり、それについてどう思うかを従業員に尋ねているー。

 従業員にしてみれば、自分がやったことでなくても、神妙にふるまわないといけないでしょう。だからといって、謝るのも変ですし、自分が勤めている会社を真っ向から批判したら、社内での居心地が悪くなるのは目に見えています。会社の社会的評判が落ちて、経営状態がヤバくなれば、自分も困ってしまいます。そうなると、あえて核心をそらしたり、奥歯にものをはさんだ言い方でうやむやにするしかない。こういう時に前に出て、全てを引き受けるべきなのは、やはり現社長ではないでしょうか。

「news zero」(日本テレビ系)のキャスターを務めている嵐・櫻井翔も6月5日にコメントを発表しました。上述したとおり、私は今回の件をタレントがコメントする義務はないと思っていますし、SNSがこれだけ発達した世の中だと、どれだけ注意深く選んでも、彼の言うことに納得しない人もいるでしょう。なので、タレントは損するだけの負け戦であることが予想されるのですが、彼のコメントを聞いて、タレントがキャスターを務めることで起きるヤバい事が浮き彫りになったように感じたのでした。

自分は被害者側に見られうる立場に置かれている

櫻井氏は、以下のように発言しています。
「今回の件ですが、私には2つの側面があると思います。ひとつは今、問題の責任が問われている事務所に所属しているということ。もうひとつは、自分は被害者側に見られうる立場に置かれていることです」
「私にとって、ふたつのコメントをすることはむずかしいと考えていました。今もまだどの立場で、どうお話できるのかむずかしいのですが、お伝えしたいことの一つは憶測で傷つく人たちがいるということです」
「発言すること自体がまた憶測を呼び、広げ、無関係な人々まで傷つけることにつながるのではないかと恐れています」

嵐・櫻井翔

 一般人となった元ジャニーズを気づかった発言だと思う方もいるのでしょうが、私は櫻井氏が“自分が被害者だと思われること”に我慢ならない、自分のイメージの下落を心配しているように感じられたのでした。仮にそうだとしても、彼がそう思うのは当然です。だって、彼はタレントなのですから。自分の好感度を上げるための振る舞いができないようでは、タレントとして失格でしょう。特に嵐のような国民的アイドルは、どこから見ても隙がなく、常にキラキラしている必要がありますから、そのイメージを覆しかねない火の粉は、全力で振り払いたいのだと思います。

 ですが、キャスターはそれではいけないと思うのです。報道の場に必要なのは、公正性、中立性、客観性ですから、自分にとって都合の悪さを見せないことが仕事のアイドルとは全く違う職業と言えるでしょう。

自分のイメージを損なう話題は扱いたくない

 櫻井氏に限らず、イメージ商売のタレントが報道に進出すると、自分のイメージを損なうような話題は扱いたくないと思うでしょうし、番組もタレントに気を使って「この話題はスルーしよう」と最初から切り捨ててしまうこともあるでしょう。人気タレントであればあるほど、CM出演をしている確率があがりますが、その企業の不祥事をはたしてタレントキャスターは追いかけられるでしょうか。そんなつもりはなくても、タレントを報道番組に出すことは、タレントやその所属事務所、CMのスポンサーにヤバい権力を与えてしまうことになるでしょう。

 こういうおかしな構造に大鉈をふるうのはテレビ局の仕事だと思いますが、おそらくそれは難しいのでしょう。テレビを見る人が少なくなっていると言われている今、テレビの製作者は喉から手がでるほど、視聴率が欲しいことでしょう。そのためには、最初から数字(視聴率)を持っていそうな人気者に出てもらいたいと願うのは当然のことですし、人気者に「出ていただく」場合、テレビ局はタレントの所属事務所の要求が多少ヤバくても、言うことを聞かざるをえないのかもしれません。「報道にはタレントを使わない」とか「ここから先は、所属事務所たりとも口を出してはいけない」など、決まりを作らないと、今後もこういうことが起こるでしょう。

ジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子社長

ジャニーズの闇はテレビ局も“共犯”

 ジャニーズ事務所のタレントがコメントするたびに、ジャニー氏が性加害を行っていたことをタレントは知っていたのか、そのタレントは被害にあっていたのかが話題にあがりますが、私はそのあたりについては、全く興味がありません。ジャニー氏の悪魔の所業を知っていたとしても、少年にそれを止めることができるとは到底思えませんし、被害にあった少年は何も悪くないのですから、問いただす意味はないでしょう。それよりも、テレビ局の罪は見逃せないと私は思っています。1999年に「週刊文春」(文藝春秋)に掲載された「ジャニーズの少年たちが『悪魔の館』(合宿所)で強いられる“行為”」を掲載し、ジャニー氏とジャニーズ事務所は、文藝春秋を名誉棄損で提訴しています。一審の東京地裁は名誉棄損があったとして、賠償を文春に命じていますが、双方が控訴。東京高裁では「セクハラがあった」と認定されています。しかし、私が知る限り、この事実にふれたテレビ番組はありません。テレビ局がジャニーズ事務所にとってのマイナス報道をすることで、自局の番組にジャニーズのタレントが出てもらえなくなったら困るという忖度だったと思われます。ジャニーズの闇は、ジャニー氏ひとりで作り上げたのではなく、“共犯”がいてはじめてなしえたのではないでしょうか。

 ガーシー氏の暴露系YouTubeが大人気だったように、今は一般人のような弱い人が人気芸能人のような社会的強者のプライベートをつるし上げることができる“強い者いじめ”の時代です。テレビも、もちろんそのターゲットになりうるでしょう。テレビ局の社長らは他人事みたいなコメントを出していますが「自分たちは大丈夫だ」なんて高をくくっていると、思わぬヤバい暴露が待っているかもしれません。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」


大野智が描いたジャニ―喜多川氏(週刊女性9月29日・10月6日合併号掲載)

 

ジャニー喜多川氏

 

TOKIOに今井翼、東山紀之に囲まれたメリー喜多川さん

 

ジャニーズ初詣にも参加していたジュリー藤島景子氏(2016年)

 

藤島ジュリー景子社長と、ジャニー喜多川さん