優香(42)撮影/齋藤周造

「コロナ禍で出産、子育てをしたこの3年間は、人に会うことも減って家庭と仕事とのバランスがうまく取れなくて気持ちがモヤモヤしていました」

土曜ドラマ『やさしい猫』主演で仕事復帰する優香

 こう語るのは、土曜ドラマ『やさしい猫』(6月24日スタート、NHK総合毎週土曜夜10時~)に主演する優香。

 1年の産休を経て仕事復帰。連続ドラマの主演は出産後初となる。

「(3年間で)私や家族も学ぶことができ、子どもも成長した今年に入ってからは気持ちに余裕ができて現場が楽しいと思えるようになりました。

 今回の作品は、出演者やスタッフがやさしく穏やかで“大丈夫?”“大変だね”と声もかけてくださいました。みなさんのやさしい心遣いと些細な言葉ひとつで気持ちが変わることを実感して、以前に比べると心が安定していると思います」

 撮影現場には子どもを初めて同伴する時もあった。

「朝早くからいないこともあって寂しい思いをさせちゃうんじゃないか、と気がかりでしたが“現場に連れてきていいですよ”というみなさんの厚意がうれしかったです。シリアスで大変なシーンは迷惑をかけるので連れていきませんでしたが、楽しいシーンの時には、みなさんに遊んでもらいながら遠目で仕事を見ていました。

 “ママ、カッコいい”と言っていたというのを聞いて、子どもにも少しはいい経験になったのかな。寂しい思いだけはさせたくないので、これからも家庭と仕事のバランスをうまく取れるようにしていきたいと思います」

味わったことがない不思議な感覚でした

優香(42)撮影/齋藤周造

 ドラマは直木賞作家、中島京子の原作を映像化。シングルマザーの保育士、ミユキ(優香)は震災ボランティアでスリランカ人のクマラ(オミラ・シャクティ)と出会い惹かれ合う。娘のマヤ(伊東蒼)とも打ち解け3人での生活が始まり婚姻届を提出した直後、クマラがオーバーステイ(超過滞在)で入管施設に収容されてしまう。

「原作を読んで素敵な家族の話だなと思いました。家族がお互いを思い合っているところが心に響いて一気に読みました。ミユキはまっすぐでとても温かい女性。外国人とか分け隔てなく誰にでも同じ態度。人に頼ることなく生きてきたので強いけれど、悩んだりしている部分もあって、応援したくなると思いながら読みました」

 入管の問題はニュースや新聞で度々報じられている。

「ニュースで聞いた程度で、詳しくは知りませんでした。原作を読んで知ることも多く、入管について知らなかったミユキと一緒です」

 クマラ役は約300人の応募者の中からオーディションによって選ばれた。

現場では“クマさん”と呼んでいましたが、オミラさんがいなければできなかったドラマだと思います。目が純粋で吸い込まれるような表情に感情がすごく揺り動かされて、オミラさんを目の前にすると芝居というのを忘れる瞬間がたくさんありました。

 1話のプロポーズのシーンでは、手に汗握ってずっと緊張していました。撮影というよりもプロポーズということに緊張していてリアルな雰囲気でした。

 オミラさん本人がクマさんの役柄同様に謙虚で礼儀正しい方で、境目がなくリンクすることが多かったです。オミラさんから湧き出るものに自然と動かされて常に新鮮な気持ちでいられたことは、これまで味わったことがなく不思議な感覚でした。

 出演を依頼された時は子どもを産んでから長期間のドラマ撮影は難しいと思っていましたが、家族がテーマの話やスリランカ出身の方と初めて芝居をしたことは自分にとって挑戦になったと思います。

 入管や在留資格について知らない人もいると思うので、いろいろな事情を抱えた人たちがいることをドラマを通して少しでも知ってもらえたらと思います」

優香のいちばん好きなシーンは

「1話はクマラさんとの楽しいシーンが多いけど、2話以降は悲しく重たいシーンが増えていきます」と優香。そのなかでいちばん好きなシーンは?「収容された時など切ないシーンが多いので、楽しかったプロポーズのシーンが思い出深いです」

 

優香(42)撮影/齋藤周造

 

優香(42)撮影/齋藤周造

 

土曜ドラマ『やさしい猫』(NHK)