広末涼子に無断で単独記者会見を開いた、夫のキャンドル・ジュン氏

 広末涼子氏の夫でアーティストのキャンドル・ジュン氏が、18日に都内で記者会見を開きました。約1時間30分にわたる会見の中で、ジュン氏は、涼子氏の不倫騒動を受け、自身の社会的活動をまじえながら、出来事の推移と心境を語りました。

当記事は「東洋経済オンライン」(運営:東洋経済新報社)の提供記事です

 不倫に関わる心境を語る中で、なぜ自身の活動についても語ったのでしょうか。一見すると、この2つは関係のないことのように思われます。しかし、ジュン氏がそうしたのは、ジュン氏なりの意味、根底に共通する心理や行動規範があることが推測されます。ジュン氏の表情および語りの内容からその心理を推測します。

意図的に動かせない苦悩の表情

 まず、会見中のジュン氏の表情に注目します。時折、状況とそぐわない微表情が垣間見られることもありますが、基本的には、苦悩の表情です。眉の内側が引き上げられ、眉間に力が入れられる表情です。とくに眉の内側が引き上げられる動きは、意図的に動かすことが困難なため、この苦悩は真実であると考えられます(ジュン氏の発言内容が、現実に即して真実かどうかということではなく、語りに込められた苦悩が真実である可能性が高い、という意味です)。

 そこで、この苦悩がジュン氏の語りの中にどのように組み込まれているかに焦点を当てます。ジュン氏が、涼子氏の不倫の推移や心境を語りながらも、平和を願う自身の社会活動について想いを語ります。関係ない、あるいは、唐突に話題が変わる印象がありますが、話題が変わっても苦悩の表情が一貫しています。

 このことから、2つの話題は、ジュン氏の中では、同様の心理状態の中で語られるべき関連する話題である、との考えがあったものと推測されます。そして、他責と自責の所在の混乱が、苦悩の原因となっていると考えられます。

 具体的には、次の語りの場面です。ジュン氏が、原発反対運動の一環で福島の沿岸部に炊き出しをする活動中、地元の方に「知ってっか。あれはおめえたち、東京もんの電気作ってたんだぞ」と言われ、

「自分はどこかで、広島や長崎や沖縄を巡っていっても、このひどい悲しみは自分がやったことではない。自分のおじいちゃんたち世代がやったことだって、誰かのせいにしていました。自分ごとにしたいと思ってずっとやってきましたが、これまでの活動を結局は誰かのせいにしている自分がいました」

 と語っています。

 一方、涼子氏が、精神的に不安定になり、普段とは異なり、濃い化粧をして派手な格好をして、眠ることができず、常に何かを書いていなければ心が収まらず、誰かに連絡をし、豹変してしまう。そんなとき、事務所は「ひたすら今は我慢するときだ、隠さなければいけない」とし、家族も、涼子氏を黙って見守るしかできなかった、と説明します。

自身でも解決を試みようとしたが…

 また、涼子氏の母の苦労を代弁する文脈で、

「本来であれば、おかしなことをしたら叱るのが母だと思いますが、叱ることで彼女が遠ざかってしまう。そういった状況に立った彼女にものを言う人を、彼女は遠ざける、逃げてしまう。そういうこともあったので、彼女の母は、ずっと、どんなことがあっても耐えて、自分の子どもたちの面倒を見に来てくれていました。彼女の親戚たちもそうです。彼女の友人たちもそうです」

 と語っています。ここに、他責の心が読みとれます。

 一方で、ジュン氏は、涼子氏との結婚を機に、涼子氏の事務所や家族が望むことをかなえられるように、夫としての責任を努めてきたとも語っています。また、今回の不倫が世間に明らかになる前に動こうとしてきたこと、過去にも同様の出来事を自身で解決した経緯が語られます。

 また、子どもをかばう文脈で、「自分が被害者だということを言うつもりはありません」と言いつつも、

「今、自分や相手の子どもたちは、自分と自分の妻のせいで、妻の不倫相手のせいで、とんでもない被害者になっています。皆さんだけのせいとは思いません。自分がもっと早く彼女を止めていればよかった。もっと早く鳥羽氏の自宅に行っていればよかった。メディアよりも先に止めることができていれば、こんなことにはならなかった。自分にも責任があります」

 とも、言っています。

 ジュン氏は社会活動をする中で、「これまでの活動を結局は誰かのせいにしている自分がいました」と語るように、家族のことも、不倫のことも、自分の責任で事を運んでいこうと試みてきたものの、自責と他責の所在に混乱し、苦悩しているのではないかと考えられます。

亀裂が広がった要因とは?

 一方、より広くジュン氏の心境を推測するうえで、気になる言動が質疑応答時に垣間見られました。

「あなたが出ていってくれれば、私が子どもたちと一緒に寝られるから。あなたがいるから私が寝られないんだ」と涼子氏に言われ、「あなたが今、大変な状況なんだから、家にいないで一人になったほうがいいんじゃないか」とジュン氏が言った、というくだりがあります。

 この辺りは、涼子氏が不安定なときにジュン氏や家族、関係者間で具体的にどんなやり取りが行われたのかわからないため、勝手な解釈は慎まなくてはなりません。

 しかし、この会見を独断で行ったことや「大変な状況なんだから、家にいないで一人になったらいいんじゃないか」という言葉から、問題の解決法や心の捉え方にズレがあり、その亀裂が次第に大きくなっていったのではないかと思われます。

 なお、会見中、ジュン氏は、メディアによる切り取りを好ましく思っていない旨の発言をされています。そして、この記事もジュン氏の発言の切り取りです。

 また、ジュン氏の会見内容も、ジュン氏の想いの切り取りです。今回の件をある程度把握するには、ジュン氏の会見全体の映像を見るだけでなく、涼子氏の「声」も聞くことが重要だということを最後に追記しておきたいと思います。


清水 建二(しみず けんじ)kenji shimizu
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役
1982年、東京生まれ。防衛省研修講師。特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問。日本顔学会会員。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』イースト・プレス、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』フォレスト出版、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』飛鳥新社がある。