嵐「今後の活動」に関する会見での相葉雅紀('19年11月)

「嵐」の相葉雅紀(40)がメインを務めるフジテレビ系のバラエティー番組『VS魂グラデーション』(木曜午後7時)が9月中に終了する。2008年に始まった前身番組『VS嵐』を含めると、約15年も続いた『VSシリーズ』が幕を閉じる。

 もっとも、相葉ファンは気落ちする必要がない。10月からはフジテレビ系の同じ時間帯で相葉がメインの新番組がスタートすることが決まっている。やはりバラエティーになる。

『VS魂グラデーション』9月終了も、10月から新たなバラエティー番組

 相葉は現在、日本テレビ系『嗚呼!!みんなの動物園』(土曜午後7時)のMCとテレビ朝日系『相葉マナブ』(日曜午後6時)のメインも務めている。両番組は10月以降も続く。ほかに前述のフジテレビ系の新番組があり、さらにテレビ朝日系『金曜ナイトドラマ』(金曜午後11時15分)の新作で主演を務めることも決まった。

 相葉は7月12日にはスペシャル番組『FNS歌謡祭 夏』の司会も務めた。所属するジャニーズ事務所はジャニー喜多川前社長(享年87)の性加害問題によって大逆風にさらされているものの、相葉はかすり傷ひとつ負っていない。

「嵐」の仲間である櫻井翔(41)はキャスターを務める『news zero』(日本テレビ)で性加害問題について当初は沈黙したことと、その後の発言によって猛批判を浴びた。それとは対象的だ。

 相葉はこう言われて来た。「『嵐』のメンバー5人の中では地味な存在で平凡」、「典型的なジャニーズ顔ではない」。だが、それが逆に良かった。ジャニーズ臭が薄く、人柄が平凡な部類に入るから、性加害問題の連帯責任を問う声が上がりにくかった。目立つ存在ほどジャニーズ事務所の顔として矢面に立たされる。

10月からはドラマの主演も!相葉らしい適役

 10月から相葉が主演するテレビ朝日系『金曜ナイトドラマ』の新作は人気青年漫画を原作とする『今日からヒットマン』。相葉が演じるのは人の善い普通のサラリーマンだ。ところが、ある日、敵からの襲撃を受けて虫の息のヒットマンとたまたま遭遇したことから、運命が変わる。

 ヒットマンは死の直前、相葉に対し「自分の代わりに敵を殺し、その敵にさらわれた自分の恋人の救出してほしい」などと頼む。これに失敗したら、相葉の家族を皆殺しにするとも告げられた。

 相葉への依頼はヒットマンが所属する犯罪組織も了承する。相葉がヒットマンの代わりを務められなかったら、組織が相葉の家族を殺す。家族を守るため、相葉はヒットマンになり、サラリーマンとの二重生活を始める──。

 相葉向きの役だろう。嫌々ながらヒットマンになる姿が目に浮かぶ。この作品は武田真治主演(50)で2009年に映画化され、2014年には要潤(42)主演でウェブドラマになっているが、主人公がもともと普通のサラリーマンなので、平凡を持ち味の1つとする相葉のほうが適役だろう。

ジャニーズ臭が少なく平凡を演じれるのが相葉雅紀の強み

 相葉の俳優としての強みは、目立たない人物役もハマるところ。櫻井翔や二宮和也(40)、松本潤(39)が地味なキャラクターを演じようとすると、きらびやかなジャニーズ臭が隠しきれず、どうしても無理が生じがちだ。

 相葉が2年前に同じ『金曜ナイトドラマ』で主演した『和田家の男たち』も平凡な持ち味が生きた。役柄はちょっと頼りないながらも心根の優しいネット記事ライターだった。特別な能力があるわけではないものの、誰もが共感できそうな男だった。

 今年4月には大御所・石井ふく子プロデュサー(96)に買われ、TBS系のスペシャルドラマ『ひとりぼっち 人と人をつなぐ愛の物語』に主演。脚本家の故・橋田寿賀子(享年95)に捧げる追悼作品だった。相葉は石井・橋田作品に出たことがなかったが、大抜擢された。

 相葉の役柄は15歳の時、両親と姉を津波で両親を失い、その悲しみから抜け出られない水道メーター検針員。やっぱり平凡な男だった。

 平凡キャラはバラエティーのメインやMCにも生きている。自分だけが目立つようにはせず、共演陣から見せ場を奪わない。それによって番組に調和が生まれている。マイクを離したがらない、みのもんた(78)ら平成型のMCとは大違いである。

 だから『みんなのどうぶつ園』は3年、『相葉マナブ』は10年も続いている。年1回のペースで放送されるスペシャル番組『はじめまして!一番遠い親戚さん』(日本テレビ系)を始め、スペシャル番組のMCを託されることも多い。

 出る杭は打たれる。また、目立つ人間は敵をつくりやすい。「嵐」で先頭集団にいると思われた櫻井は春ドラマ『大病院占拠』(日本テレビ系)の演技が「セリフが棒読み」などと酷評された。同じく松潤は主演しているNHK大河ドラマ『どうする家康』について「存在感が薄い」などと冷ややかな言葉を投げ掛けられている。一方、気が付くと、相葉を批判する声はほとんど聞かない。「芸能界は目立ってナンボ」とよく言われるが、必ずしもそうではない。

 相葉は2021年9月に1歳年上の一般女性と結婚。アイドルでありながら、ファンの間から失意や落胆の声はほとんど上がらなかった。ファンは平凡で好青年の相葉を応援してきたのであり、盲信的に憧れていたわけではなかったからではないか。結婚後の人気は独身時代と変わらないと言って良い。アイドルでありながら珍しい。

 おそらく人気は年を重ねても衰えないだろう。「嵐」の伏兵かも知れない。

取材・文/高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)放送コラムニスト、ジャーナリスト。1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立。

 

竹内結子、相葉雅紀、つんく♂らと共演した主演ドラマ『ムコ殿』('01年)。作品で演じた桜庭裕一郎として写真集が発売され、5日間で10万部を突破。劇中歌『ひとりぼっちのハブラシ』が収録されたシングルもオリコン1位に

 

2006年4月、ジャニーズチームで草野球を楽しむ相葉雅紀

 

相葉雅紀

 

映画の舞台挨拶では相葉雅紀が大野智の存在もアピール